コロナ渦の影響による売上げの低下や客足の鈍化により、経営が苦しいという経営者の方は多いと思います。中には、「いっそ廃業しようか?」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、安易・無計画な廃業は、負債の適切な整理ができないだけでなく、従業員を路頭に迷わせる結果となります。そんな方のお役に立つのが「中小企業活性化協議会」です。

本協議会は、企業の事業再生や事業承継に関する相談やサポートが受けられるため、これを活用することで、適切な事業や経営の改善をすることが可能となります。

本記事では、中小企業活性化協議会の概要や仕組み、費用、利用方法について解説いたします。

「中小企業活性化協議会」とは?

中小企業活性化協議会は、中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合してできた新たな組織であり、それまで別々に行っていた業務を一元的に行っています。

中小企業活性化協議会について

中小企業活性化協議会は、産業競争力強化法に基づき、47都道府県に設置されている公的機関であり、地域のハブとして金融機関、民間専門家、各種支援機関と連携し、以下3つのフェーズの業務を一元的に行っています。

・地域全体での収益力改善、経営改善

・事業再生

・再チャレンジの最大化

なお、これまで同様の組織として中小企業再生支援協議会がありましたが、2022年3月4日に経済産業省・金融庁・財務省により公表された「中小企業活性化パッケージ」の政策の一環として、中小企業再生支援協議会と経営改善センターが統合され、2022年4月1日に中小企業活性化協議会へ改組されました。

なお、東京都では東京商工会議所が事業を受託しています。

従来の中小企業再生支援協議会との違い

従来の「中小企業再生支援協議会」では、中小企業の資金繰り、経営相談、金融機関との調整、事業承継や廃業に関する支援を行い、令和2年度時点で約50,000社が利用するなど多くの企業に利用されてきました。

また、相談に対する対応は、一時対応と二次対応に分けられ、一次対応では窓口相談、二次対応では再生計画策定支援(事業計画書の策定支援、再生手法の提案等)を行ってきましたが、中小企業再生支援協議会が行うのは、主に財政の再生がメインであり、事業そのものの再生ではないため事業の見直しが必要なケースには十分な対応ができないという面がありました。

しかし、中小企業活性化協議会では、対応のフェーズを「収益力改善フェーズ」、「再生フェーズ」、「再チャレンジフェーズ」の3つに分け、相談内容にあったフェーズを適用することにより、経営改善だけでなく事業再生や再チャレンジに関する支援もできる体制となっています。

これまでの経営改善センターとの違い

「経営改善支援センター」は、中小企業者の経営改善に向けた取組みを支援するために、産業競争力強化法第134条にもとづき、各都道府県に設置された公的機関です。

自らでは経営改善計画の策定が困難な事業者が、外部専門家(認定支援機関)から経営改善計画策定の支援やモニタリングを受ける場合に、その費用の一部を補助するための事前相談・申込受理・支払いなどを行ってきました。

従来の経営改善センターでは、経営改善計画策定支援(405)事業に関する補助金の支給を行う際に、経営の深刻度が「軽い」企業と「重い」企業に分けた対応が行われていました。

しかし、特例リスケ(新型コロナを原因とする特別リスケジュール)を機会に深刻度が「軽い」企業も再生協議会を利用することになったことから、本来の405事業と統合した方が中小企業に寄り添ったシームレスな対応が可能になるとの観点から、今回統合されたものです。

「事業再生ガイドライン」との関係は?

「事業再生ガイドライン」とは、令和4年3月4日に中小企業の事業再生等に関する研究会が策定・公表した、中小企業版の私的整理手続に関する指針です。(令和 4年4月15日に適用開始)

本ガイドラインは,同日に経済産業省,金融庁及び財務省から発表された「中小企業活性化パッケージ」のうち,中小企業の事業再生等のためのガイドラインを定めるものです。

「本ガイドラインの目的等」、「中小企業の事業再生等に関する基本的な考え方」、「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」の3部から構成されており、とりわけ,第三部については,中小企業の事業再生等に焦点をあてた新たな準則型私的整理手続について定められています。

これまで事業再生に関する対応は中小企業再生支援協議会が行ってきましたが、今後、増え続ける過剰債務を抱える企業対対応や支援を民間でも行えるようにすることが大切であるという考えから策定されました。

そのため、今後、活性化協議会では「駆け込み寺」として多くの企業と接し、「案件の難易度が高いものは協議会」、「企業と金融機関との関係が良好な場合はガイドラインにもとづいて処理」というように、相談内容や事業者の希望を踏まえた上で対応することが予定されています。

中小企業活性化協議会の方向性と支援の構成

中小企業活性化協議会は、以下の方針と構成にもとづいた支援を行います。

中小企業活性化協議会の方向性

中小企業活性化協議会では、「地域全体での収益力改善、経営改善、事業再生、再チャレンジの最大化」を追求するため、

①「中小企業の駆け込み寺」として、幅広く中小企業者の相談に対応

②あらゆるフェーズの中小企業者への支援と民間の支援専門家の育成を実施(旧中小企業再生支援協議会による支援)

③各フェーズでの民間による支援を促進するため、民間の支援専門家の活用を普及啓発(旧経営改善支援センターによる支援)

するものとされています。

中小企業活性化協議会による支援の構成

中小企業活性化協議会では、上記方針を達成するため、支援の内容を3つのフェーズ分け、それぞれについて民間プレーヤーが行う支援と中小企業活性化協議会による支援を区別しています。

  • 収益力改善支援
    コロナウイルスの影響により倒産や廃業などの有事に移行する可能性の高い中小企業者を対象とする支援

  • 事業再生支援
    財務上の問題がある中小企業を対象に、再生計画の作成のサポートを行う支援

  • 再チャレンジ支援
    事業再生等が困難となっている中小企業や保証債務に悩む経営者等を対象に、円滑な廃業や経営者等の再スタートをする支援

なお、民間プレーヤーが行う支援については、中小企業の事業再生に関するガイドラインを拠り所とし、また、中小企業活性化協議会による支援については、中小企業活性化協議会実施基本要領にもとづいて行うものとされています。

中小企業活性化協議会

民間プレイヤーを活用した支援中小企業活性化協議会による支援
収益力改善フェーズ
<早期経営改善計画策定支援>
金融支援に至る前で、早期の経営改善を必要とする事業者が対象
<収益力改善支援>
有事に移行する恐れのある中小企業が対象

再生フェーズ
<経営改善計画策定支援>
リスケ、新規融資等の金融支援を必要とするものの自らの力では経営改善計画を策定できない事業者が対象
<プレ再生支援>
将来の本格的な再生計画策定を前提とした経営改善を支援
<再生支援>
収益性のある事業はあるものの、財務上の問題がある事業者が対象

再チャレンジフェーズ

<再チャレンジ支援>
事業継続が困難な中小企業や、保証債務に悩む経営者等が対象

中小企業活性化協議会による具体的支援内容

中小企業活性化協議会では、収益力改善、再生支援、再チャレンジ支援の3つの支援を行っています。

収益力改善支援

本支援では、新型コロナウイルス感染症の影響により売上の減少や借入れの増大による倒産や廃業、支払い不能といった有事に移行する可能性の高い中小企業者を対象に、収益力改善計画の作成を支援します。

この支援においては幅広い中小企業者を対象としており、金融機関に対しリスケジュール等の金融支援を要請しない中小企業者も支援の対象となっています。

具体的な支援としては、1年間から3年間の収益力改善計画(収益力改善計画遂行中の行動計画+簡易な収支・資金繰り計画)の作成支援となりますが、金融機関等に対してリスケジュール等の支援要請を行う場合には、1年間の収益力改善計画の作成となります。

収益力改善計画にかかる費用は、原則、無料です。

また、収益力改善計画の実施後、定期的なモニタリングを行う他、必要に応じて他の支援策にスムーズに移行するためのサポートなどを行います。

プレ再生支援・再生支援

本支援は、収益性のある事業はあるものの、財務上の問題がある中小企業を対象に、中立公正な第三者機関の立場から、助言を行い、再生計画の作成のサポートを行うもので、以前の中小企業再生支援協議会が2003年から実施している支援と同様のものとなります。

金融支援策が必要な場合には、リスケジュール等の弁済条件変更や債権放棄等の抜本的な支援策を金融機関と調整しながら策定します。

プレ再生支援・再生支援では、原則、以下の基準を満たした再生計画の作成を支援します。

<中小企業>

①対象企業が、実質的に債務超過である場合には、再生計画成立後最初に到来する事業年度

開始の日から「5年以内」をめどに実質的な債務超過を解消する。

②対象企業の経常利益が赤字である場合は、再生計画成立後最初に到来する事業年度開始

の日から「概ね3年以内」をめどに黒字に転換する。

③再生計画の終了年度(原則として実質的な債務超過を解消する年度)における有利子負債の対キャッシュフロー比率を概ね10倍以下とする。

<小規模な事業者>

①再生計画成立後2事業年度目(再生計画成立年度を含まない)から、3事業年度継続して営業キャッシュフローがプラスになること。

②相談企業による事業継続がその企業の経営者等の生活の確保において有益なものであること。

再生計画策定にかかる費用については、その一部を活性化協議会が負担します。

なお、上記の基準を満たさない計画であっても、将来、要件を満たす本格的な再生計画の策定を予定した計画(プレ再生計画)の作成支援も行っています。

また、収益力改善計画の実施後、定期的なモニタリングを行う他、必要に応じて他の支援策にスムーズに移行するためのサポートなどを行います。

再チャレンジ支援

本支援は、

・収益力の改善や事業再生等が極めて困難となっている中小企業

・保証債務に悩む経営者等

を対象に、弁護士等の外部専門家の紹介や、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」等を活用した円滑な廃業に向けてのサポート、「経営者保証に関するガイドライン」等を活用した経営者等の再スタートのための支援を行うものです。

再チャレンジ支援を活用することで、以下のようなメリットが得られるため、「円滑な廃業」や「経営者等の再スタート」の可能性が高まります。

・破産手続によるよりも、中小企業の従業員等が円滑に転職できる機会が確保されやすい

・破産手続によるよりも、経営者等にとって再度事業を行う等の再スタートが容易となりやすい。

・破産手続によるよりも、当該中小企業の取引先の連鎖倒産を回避しやすい。

また、中小企業が法的整理に至った場合でも、円滑な廃業を目指したことにより、法的整理手続を活用しながら事業譲渡等をすることで事業及び雇用を維持しやすくなります。

民間プレイヤーによる具体的支援内容

民間プレイヤーは、中小企業活性化協議会と協力して、収益力改善、再生支援、再チャレンジ支援について支援を行いますが、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に準拠した支援が中心となります。

早期経営改善計画策定支援

早期経営改善計画策定支援は、資金繰りの管理や自社の経営状況の把握などの基本的な経営改善に取り組む中小企業者等が、認定経営革新等支援機関の支援を受けて資金繰り計画やビジネスモデル俯瞰図、アクションプランなどの経営改善計画を策定する場合に、その費用の2/3を補助するものです。

内容は、法改正に伴って一部見直しが行われた結果、以下の通りとなりました。

ポスコロ事業補助対象経費
補助率
備考
通常枠
①計画策定支援費用
②伴走支援費用(期中)
③伴走支援費用(決算期)
① 2/3(上限15万円)
② 2/3(上限5万円)
③ 2/3(上限5万円)

コロナ、ウクライナ情勢又は原油価格の高騰等に起因した影響を受けている事業者は過去にプレ405及びポスコロ事業並びに405事業を利用していても、2回まで利用可能になりました。
経営者保証
解除枠

①計画策定支援費用
②伴走支援費用(期中)
③伴走支援費用(決算期)
④金融機関交渉費用
① 2/3(上限15万円)
② 2/3(上限5万円)
③ 2/3(上限5万円)
④ 2/3(上限10万円)


経営改善計画策定支援

本事業は、本格的な経営改善の取組みが必要な中小企業・小規模事業者を対象として、認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援し、経営改善の取組みを促すものです。

中小企業・小規模事業者が認定経営革新等支援機関に対し負担する経営改善計画策定支援に必要となる費用の2/3(上限額は以下参照)を中小企業活性化協議会が負担します。

405事業補助対象経費
補助率
備考
通常枠
①DD・計画策定支援費用
②伴走支援費用(モニタリング費用)
③金融機関交渉費用
① 2/3(上限200万円)
② 2/3(上限100万円)
③ 2/3(上限10万円)

経営者保証解除を目指した計画を作成し、金融機関交渉を実施する場合に対象となる。
中小版GL枠
①DD費用等
②計画策定支援費用
③伴走支援費用
① 2/3(上限300万円)
② 2/3(上限300万円)
② 2/3(上限100万円)

中小企業の事業再生等のための私的整理手続にもとづいた取組みであることが交付要件

経営改善計画の作成について

民間プレイヤーによる「早期経営改善計画策定支援」や「経営改善計画策定支援」を利用するためには、経営改善計画の作成が必要となります。

これら計画のフォーマット等は中小企業活性化協議会のホームページからダウンロードすることができますが、それぞれで内容が異なるため、用途にあった様式を利用する必要があります。

早期経営改善計画用の計画

早期経営改善計画用については、以下の様式を使用します。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/download/04/02_souki_s.pdf

この計画書は、

・ビジネスモデル俯瞰図

・アクションプラン

・ポストコロナ持続的発展計画(業績及び資金計画表)

の3部から構成されており、それぞれのパートごとについて詳細な内容を埋めていく形式となっています。

フォーマットの数は5枚と少ないですが、かなり詰め込まれた項目について記入する必要があり、とくに、持続的発展計画については毎月の資金繰りの実績と見通しを記入しなければならないため、作成にはかなりの時間と労力が必要となります。

したがって、ムリに自分だけで行うのではなく、支援機関のサポートをうけながら作成することをおすすめします。

経営改善計画用の計画

経営改善計画用については、以下の様式を使用します。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/download/05/02_sample_a.pdf

この計画書では、

・これまでの事業の概要と申請に至るまでの経緯

・債務者概要表

・企業集団の状況やビジネスモデル俯瞰図

・資金実績表と計数数値や具体的な施策

・実施計画と計数計画

などを記入していきます。

内容は経営者が作成する箇所と認定支援機関作成支援が作成する箇所に分かれますが、両者については整合性が取れている必要があるため、経営者と認定支援機関が共同で作成する必要があります。

フォーマットの数は7枚と早期経営改善計画用よりも多くなり、記入する内容もさらに詳細なものとなります。

今後の経営の見通しができていないと作成できない箇所が多いため、十分に支援機関と計画の内容を確認しながら作成する必要があります。

中小企業の事業再生等のための私的整理手続の活用

民間プレイヤーによる支援は、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に準拠して行われるため、このガイドラインで規定されている事業再生等のための私的整理手続のポイントについて理解しておくと、スムーズに支援を受けることができます。

私的整理手続きのポイントは、以下の通りとなります。


ガイドラインにおける手続き
元本等返済の一時停止のタイミング
事業再生計画案の策定前(債権放棄案件であっても再生の基本方針で可)
実質債務超過解消までの年数
5年以内を目処 ※小規模事業者の債務猶予案件は更に緩和
経営者責任
感染症等の影響に配慮しつつ、経営者責任を明確化

なお、私的整理については、本ガイドラインとは別に2001年に策定された「私的整理に関するガイドライン」がありますが、本ガイドラインとは内容が異なります。

また、各種支援は「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に沿って行われるものであるため、間違いがないよう注意してください。

中小企業活性化協議会への相談について

中小企業活性化協議会では、面談や提出された資料の分析を通して経営上の問題点や具体的な課題を抽出し、課題の解決に向けて適切なアドバイスを行います。(第1次対応)

※第1次対応は無料です。

相談の際には、以下の資料を用意してください。

・会社の登記事項全部証明書

・直近3期分の決算書(別表等すべての資料を含むもの)

・会社概要が分かる資料(パンフレットやホームページのコピー)

・その他必要と思われる資料(通帳や資金繰り表、試算表など)

協議会では、収益力改善、再生計画策定支援または廃業・再チャレンジ等の支援が妥当であると判断した場合、それぞれの第2次対応に進みます。

第2次対応では、協議会が外部の専門家等に支援を依頼する場合には、企業が専門家等の活動費等の一部を負担する必要がありますが、一定の要件を満たす場合は費用が補助されます。

まとめ

中小企業活性化協議会は、「中小企業活性化パッケージ」の政策の一環として、中小企業再生支援協議会と経営改善センターを統合し、2022年4月1日に中小企業活性化協議会へ改組された組織です。

本協議会は、主に収益力改善、事業再生、再チャレンジに関するサポートを行いますが、前2者については状況に応じて民間によるサポートもあわせて行うという特徴があります。

本協議会等のサポートを利用することで、適切な経営改善や事業再生をすることが可能となるだけでなく、支援に必要となる費用についても補助を受けることができるため、経営難や借入金の整理でお悩みの経営者の方は、ぜひ、一度相談をご検討ください。