最近では、だいぶコロナ感染症の影響が収まりつつありますが、飲食店や宿泊業では依然として客足は回復せず、さらに円安による物価高騰の影響もある中、企業の資金繰りは厳しいものとなっています。こんな時に利用したいのが、「コロナ特別貸付制度」です。
この融資は、コロナにより売り上げに影響を受けた企業を対象とした貸付制度です。
しかし、これは緊急対策として施行された時限立法であるため、いつまで利用できるのか不安に思っている方も多いと思います。
そこでこの記事では、コロナ特別貸付制度の概要や、いつまでこの制度が続くのかなどについて解説いたします。
「コロナ特別貸付制度」とは、正式名称を「新型コロナウイルス感染症特別貸付」といい、新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に、売上の減少など業況悪化をきたしている方が、有利な条件で利用できる融資制度です。
利用にあたっては一定の条件を満たす必要がありますが
・無担保無保証で利用できる。
・簡単な提出資料で申請ができる。
・一定の要件を満たす場合には、実質無利子で借入れができる。
・融資限度額が、国民生活事業では8,000万円、中小企業事業では6億円と大きい。
などの特徴があるため、非常に借りやすい融資となっています。
「コロナ特別貸付制度」は当初からコロナ対策のための時限立法とされていたため、本来は、2022.03をもって終了する予定でした。
しかし、景気回復が十分でなく、さらに資金需要に応える必要があるとの判断から2022.03に公表された「中小企業活性化パッケージ」により2022.06末まで延期されることとなりましたが、その後「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」が発表されたことにより、最終的には2022.09まで再延長されることとなりました。
つまり、当初の予定より6ヶ月間伸びたわけですが、コロナの蔓延が収束しつつある現在の状況からすると、これ以上の延期は難しいのではないかと思われます。
したがって、現時点でコロナに関係して資金繰りが厳しいという企業にとっては、この2~3ヶ月が有利な条件で借入れができる最後のチャンスとなるかもしれません。
そのため、これまでコロナ特別融資を利用していないという企業はもちろんのこと、すでに1回借りていて次の利用が2回目という企業も、今後、資金繰りが厳しくなる見込みがあるのであれば、ぜひ、早めに利用しておくことをおすすめします。
なお、前述の「中小企業活性化パッケージ」では、日本政策金融公庫の資本性劣後ローンについても2023年3月末まで継続されることとなりました。
この資本性劣後ローンとは、借入金を一定期間、金融検査における自己資金とみなすことができるというものです。つまり、借りた金額の分だけ自己資金を増すことができるため、資本金が少なくて評価が低いという企業の財務改善に役立つ他、債務超過に陥っている企業の資本を増やし正常化する効果があります。
また、「元金は最終期日一括払いのため、毎月の返済の必要がない」、「業績が悪い期間内は特別な低金利が適用される(但し、一定水準以上の業績となった場合には、高い金利が適用される)」という特徴があります。
この融資も使いかたによっては、企業の財務改善に大きく役立つため、利用をお考えの企業は期限内に申し込むことをおすすめします。
なお、その他として、[新型コロナ関連]マル経融資(小規模事業者経営改善資金)、[新型コロナ関連]生活衛生貸付及び[新型コロナ関連]農林漁業セーフティネット資金についても申込期限が2022.09末まで延長されました。
「セーフティネット保証4号」とは、自然災害等の突発的事由(噴火、地震、台風等コロナ被害を含む)により経営の安定に支障を生じている中小企業者について、災害救助法が適用された場合又は都道府県から要請があり国として指定する必要があると認める場合に、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の100%を保証する制度です。
通常、信用保証協会では貸付額の80%しか保証をしません(責任共有制度)が、この4号が適用される場合には100%の保証をうけられるため、融資が借りやすくなります。
具体的には、要件に該当する企業が住所地を管轄する市区町村長に対して申請を行い、認定を受け、認定書の有効期間内(認定の日から30日以内)に金融機関又は信用保証協会へセーフティネット保証の申込みをして利用します。
セーフティネット保証4号を利用することにより
・一般保証枠(2億8,000万円)とは別枠で、2億8,000万円の保証枠を増加できる(計5億6千万円)
・信用保証協会の100%保証(通常は80%)を受けられる
というメリットが得られます。
この制度についても本来は、指定期間が2022.06までとなっていましたが、すべての都道府県において2022.09まで延長されることとなりました。
現在、コロナ関連の融資制度には、いくつもの種類がありますが、ここでは代表的な「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付」について説明いたします。
◯利用できる方
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復が見込まれる方
◯資金使途
設備資金および運転資金
◯融資限度額
8,000万円(別枠)
◯利率(年)
基準利率1.21~1.90%(2022.06現在)
ただし、6,000万円を限度として融資後3年目までは「基準利率‐0.9%※」、4年目以降は通常の基準利率
◯返済期間
設備資金および運転資金ともにそれぞれ20年以内(うち据置期間5年以内)
◯担保・保証
無担保・無保証人
※一部の要件を満たす方については、基準利率-0.9%の部分に対して中小企業基盤整備機構から利子補給を受けることにより、当初3年間が実質無利子となります。
この融資制度は、中小企業だけでなく、創業者でも利用することができますが、それぞれで利用条件が異なるため注意が必要です。
なお、この融資では、通常より0.9%金利が優遇されますが、優遇分を差し引いた残りについても、一定の要件を満たす場合には補助を受けることができるため、金利0で利用することができます。
◯利用できる方
対象者新型コロナウイルス感染症の影響を受けた法人または個人企業の方であって、次のいずれかに該当する方
①J-Startupプログラムに選定された方または中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた方
②中小企業活性化協議会の支援を受けて事業の再生を行う方他
③上記①および②に該当しない方であって、事業計画書を策定し、民間金融機関等による支援を受けられる等の支援体制が構築されている方
〇融資限度額
7,200万円(別枠)
〇金利
融資後3年間は0.50%。融資後3年経過後は、毎年の業績に応じて決定
〇返済期間
5年1ヵ月、7年、10年、15年、20年のいずれか
〇返済方法
期限一括返済(利息は毎月払い)
〇担保・保証
原則、不要
この融資による借入金は、金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができます。
ただし、原則として、融資後5年間は期限前の返済をすることができません。
また、毎期の経営状況の報告等を含む特約を締結する必要があります。
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の申込みは、以下の方法で行います。
〇申込み
申込に必要な書類を準備し、最寄りの支店まで「持参」、「郵送」、「インターネットによる申込み」のいずれかの方法で申し込みます。
なお、直接申込みの場合には、多少、待たされることがあります。
※1 郵送の場合の支店の管轄 https://www.jfc.go.jp/n/branch/pdf/tenpo01.pdf
※2 インターネット申込み https://www.jfc.go.jp/n/service/apply.html
〇面談
はじめて公庫で融資の申込みをする方については、資金の使い道や事業の状況について、公庫の担当者による面談が行われます。
なお、コロナウイルスの感染状況によっては、電話で行われることもあります。
〇審査・融資の決定
提出書類や面談の結果にもとづき、審査が行われます。
審査の結果がOKの場合には、公庫と借入れの契約を締結した上で、資金が指定の口座へ振り込まれます。
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の申込では、以下の書類が必要となります。
①借入申込書(押印は不要)
※公庫ホームページよりダウンロード
②コロナウイルスの影響による売上減少の申告書
※公庫ホームページよりダウンロード
③最近2期分の確定申告書(一式)のコピー
※青色申告の場合は青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書を含む
④見積書(設備資金を申込みの場合)
現在まで公庫と取引がない場合には、以下の資料を追加
・事業の概要をまとめたもの
・運転免許証(両面)などの顔写真のわかる資料のコピー
・許認可証のコピー(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)
①借入申込書(押印は不要)
②コロナウイルスの影響による売上減少の申告書
③最近2期分の確定申告書・決算書のコピー(勘定科目明細書を含む)
④見積書(設備資金の申込みの場合)
現在まで公庫と取引がない場合には、以下の資料を追加
・法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本の原本
・事業の概要をまとめたもの
・運転免許証(両面)などの顔写真のわかる資料のコピー
・許認可証のコピー(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)
その他あった方が、審査がスムーズになる資料としては次のようなものがあります。
・事務所がテナントの場合は、賃貸借契約書のコピー
・会社の通帳の原本
・直近の月までの試算表
・企業のホームページがあるときは、その写し
・事業計画書
「特別利子補給制度」とは、コロナ特別貸付制度を利用し、以下の要件を満たせる方について申込人が負担する利子(基準金利-0.9%分)を、中小企業基盤整備機構が補給することで無利子とする制度です。
〇利用できる方
コロナ特別貸付を利用しておりい、次のいずれかの要件に該当する方
小規模企業者 ※ | 中小企業者 | |
個人 | 要件無し | 売上高▲20%以上 |
法人 | 売上高▲15%以上 | 売上高▲15%以上 |
※小規模企業者とは、卸・小売業、サービス業は「常時使用する従業員が5名以下の企業」、それ以外の業種は「同20名以下の企業」のことをいいます。
〇適用される範囲
融資限度額のうち、6,000万円以下の部分
〇適用期間
当初3年間
〇利子補給の方法
いったん利息も含め公庫へ返済した後、後日に利子相当額を中小企業基盤整備機構から補給する。
一定の要件を満たす創業者の方については、「コロナ特別貸付制度」と「新創業融資制度」のどちらも利用することが可能となります。
しかし、これら2つの制度を同時に申し込むことはできないため、利用する場合には、どちらか一方に絞って申込みをする必要があります。
その場合にどちらを利用した方が、有利となるのでしょうか?
この2つの融資制度では、それぞれ以下のような特徴があります。
コロナ特別貸付制度 | 新創業融資制度 | |
利用できる方 | 創業後3か月以上 | 開業前から税務申告を2期過ぎるまでの方 |
利用の条件 | 5%以上の売上の減少が必要 | 1/10以上の自己資金が必要 |
融資限度額 | 8,000万円 | 3.000万円 |
金利 | 6,000万円までは基準金利-0.9% | 基準金利 |
利息の補助 | あり | なし |
担保保証 | 無担保無保証 | 無担保無保証 但し、法人については代表者の連帯保証を不要とできる |
審査の難易度 | 比較的、容易 | 普通 |
以上を比較すると、融資限度額は、コロナ特別貸付制度の方が優れており、利息についても特別な優遇や補助があります。
一方、新創業融資制度では、開業前から利用できるということの他、法人が利用する場合には代表者の連帯保証を不要にできるというメリットがあります。
しかし、審査における難易度については、コロナ特別貸付制度が緊急対策として行われていることもあって、要件を満たす場合にはほぼ融資が出ている印象なのに対して、新創業融資制度ではとくにこのようなことはありません。
したがって、創業者の方については、融資の確保を第一に考えるのであれば、まずはコロナ特別貸付制度を優先して利用し、その利用が難しい場合には新創業融資制度を検討することをおすすめします。
ただし、法人の方であって金額や難易度よりも代表者の連帯保証をつけたくないという場合には、はじめから新創業融資制度の利用を検討しましょう。
コロナ特別貸付の利用に関しては、以下のQAをご参照ください。
Q 日本政策金融公庫の既存融資を借換えるためだけに、コロナ特別貸付を利用することは可能か?
A 借換えをする日までの利息は必要となりますが、基本的には可能です。
ただし、原則として、借り換えができるのは既存の公庫融資のみとなります。
一定の要件を満たす「つなぎ融資」を除き、民間金融機関から融資された借入金を公庫融
資で借換えることはできません。
また、既存融資の一部について、借り換えをすることはできません。
Q 半年前にコロナ特別貸付の融資を受けたばかりだが、最近、更に資金繰りが悪化したので、再度、融資の申込みをすることはできるか?
A 直近でコロナ特別貸付を利用している場合でも、さらにコロナの影響により資金繰りが悪化したような場合には、融資の申込みをすることができます。
Q 創業して1ヵ月の場合、コロナ特別貸付を利用することができるか?
A コロナ特別貸付を利用することができるのは、創業後3カ月以上経過した方となります。しかし、この期間未満の方であっても、一定の要件を満たす場合には、新創業融資制度を利用して、無担保無保証での借入れをすることができます。
Q コロナ特別貸付を利用できるのは「最近1か月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が前4年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している方」とされていますが、コロナウイルスの影響により直近2週間の売上げは急減しているものの、今月の売上高としては前4年のいずれかの年の同期と比較すると増加しているような場合は、コロナ特別貸付は利用できないのか?
A 「最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高」は、単純な前4年のいずれかの年の同期の売上高との比較だけでなく、売上高の確認日を基準として、①確認日の前月の売上高または②確認日の前日や直近の売上集計日から遡って1ヵ月の売上高等について確認がされます。
たとえば、確認日が令和2年7月18日の場合、最近1ヵ月の売上高は、①令和2年6月の売上高または②令和2年6月18日から令和2年7月17日までの合計売上高などで確認することとなります。
なお、その際には帳簿等を確認することがあります。
Q コロナによる影響を受けているが、最近、店舗を増加した結果、前4年のいずれかの年の同期と単純に比較すると売上が増加しているが、このような場合にコロナ特別貸付は利用できないのか?
A 店舗の増加、合併、業種の転換などを行った場合や、短期間に売上増加に直結する設備投資や雇用の拡大を行っている場合など、前4年のいずれかの年の同期と比較するのがなじまないときは、業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合に準じ、売上げの比較できる場合があります。
Q 融資を受ける際には、面談が必要となるのか?
A はじめて公庫を利用する方については、原則、来店のうえ面談をする必要がありますが、2回目以降の利用の場合には、電話による資金の使い道や事業の状況についての確認が行われます。
コロナ特別貸付は、コロナの影響による一定の減収がある場合に、簡単な資料を提出するだけで、長期、低利、無担保無保証で借入れをすることのできる融資制度です。
通常の中小企業だけでなく、開業後3ヶ月を経過している創業者も利用でき、さらに、特定の要件を満たす方は利子補給により実質無利息で利用することができます。
なお、この制度は今回の改正により2022.09末まで期限が延長されましたが、これ以上の延期はされない可能性が高いと思われます。
したがって、まだ、この制度をご利用になっていない方で今後、資金繰りが厳しくなることが見込まれる方は、早めにご利用されることをおすすめします。