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持株会を退会した場合に確定申告は必要?

持株会を退会すると確定申告が必要?申告の判断や具体的な申告手続きについて徹底解説!

持株会を退会した後、個人の証券口座に振り替えられた株式の売却益が生じた場合は確定申告が必要となるケースもありますが、特定の条件に該当する場合は確定申告が不要になります。また、場合によっては確定申告が不要でもおこなったほうが有利になります。

株式を個人が取得する場合、持株会において取得する方法は珍しくありません。しかし、取得する場合は税務上の手続きはありませんが、持株会を退会して株式を売却する場合は確定申告が必要であるかどうかを確認する必要があります。

今回は持株会を退会する場合の確定申告を中心に解説していきます。確定申告の適切な知識を身につけて最善の手続きがおこなえるようにしましょう。

そもそも持株会ってなに?

持株会は民法に基づいて設立される組合で、株式を取得することを目的とする人同士で構成された組織のことをいいます。持株会の類似事例としては建設業者が建設業者同士で組織を構成し、大きな工事などをおこなう「共同企業体(JV)」が挙げられます。そのほかにも学校の同窓会やイベント実行委員会なども同じ目的をもつ人どうしで構成される組織という意味では同様の組織であるといえます。

また、持株会にはいくつかの種類があり次のようなものがあります。

  • 従業員持株会
  • 役員持株会
  • 取引先持株会

このように、多くの場合が同じ境遇である人同士で持株会を構成するケースとなっています。

確定申告とは

確定申告とは1月1日から12月31日までの1年間に発生した所得金額を計算し、所得金額に応じた税金を計算および申告することをいいます。すべての人が確定申告をおこなう必要はなく、一定の要件を満たす人のみが確定申告をおこないます。

確定申告では、それぞれの所得の種類に応じて税金の計算方法が異なるため注意が必要です。

会社の持株会を退会すると確定申告が必要?

退職などの理由により持株会を退会すると、それまでの拠出額に応じた株式が個人の証券口座に振り替えられます。この株式を売却して売却益が生じた場合には確定申告が必要となるケースもありますが、次のケースでは所得税の確定申告が不要となります(所得税の確定申告は不要でも、住民税の確定申告が別途必要となるケースもあります)。

  • 株式の売却で損失が発生している場合
  • 「源泉徴収ありの特定口座」にある株式を売却している場合
  • 株式の売却で得た利益金額が所得控除額より少ない場合
  • 次の要件をすべて満たす場合

 年末調整対象者
② 株式の売却で得た利益金額が20万円以下
③ 給与所得や退職所得以外の所得が株式の売却で得た利益金額も含めて20万円以下

確定申告が不要でも申告した方が良い場合がある?

上記では確定申告が不要になる条件を解説しましたが、確定申告が不要である場合でも確定申告をおこなうことで得をするケースもあります。

譲渡損失を繰り越す場合

年間を通じた株式の売却損失が発生している場合は確定申告をおこなう必要はありませんが、確定申告をおこなうことで損失金額を翌年以降3年間繰り越すことができます。

また、繰り越された損失金額は翌年以降の株式売却時の所得金額と相殺することができるため、翌年において株式の売却益が発生した場合、発生する税金を安く抑えることができます。

ただし、損失金額を繰り越すためには確定申告をおこなうことが条件となっているため、譲渡損失を繰り越したい場合は忘れずに確定申告をおこなうようにしましょう。

損益通算をおこなう場合

株式の売却損益を損益通算するにあたり、同一の証券口座内のものであれば確定申告は不要ですが、複数の証券口座に預け入れていた株式の売却損益や、特定口座と一般口座の取引を損益通算したい場合は、確定申告をおこなう必要があります。株式の損益通算とは株式の売却で得た利益と損失を通算することをいい、たとえば次のような場合における最終的な所得金額は10万円となります。

  • A社株式:+100万円の利益
  • B社株式:△90万円の利益

そのため、持株会を退会した後、個人口座に振り替えられた株式を売却して売却益が発生していた場合、当該証券口座とは異なる口座で保有していた株式の売却に伴う金額がマイナスであるときには、確定申告をおこなうことで有利になることがあります。

持株会の退会時における確定申告のやり方

持株会を退会したあと、個人口座に振り替えられた株式を売却した場合における確定申告については、給与や事業収入における確定申告の方法とは少し異なる部分があります。これは確定申告では所得の種類に応じて計算方法などが定められているためです。ここでは持株会を退会した場合における確定申告の方法について紹介していきます。

株式の売却は「譲渡所得」で申告する

持株会を退会した後に行う株式の売却に係る確定申告は「譲渡所得」という所得区分でおこないます。

株式の譲渡所得では次の算式で所得税額を計算します。
「 譲渡所得金額 = 譲渡価額(売却金額) − 取得価額(取得費) − 譲渡費用 」

「取得費」を算出しよう

取得価額は株式を購入する際に発生した購入代金のことをいいます。また、株式を購入する際に第三者へ委託した場合の手数料なども取得費に含まれます。また、購入時にいくら支払ったのかわからない場合などは譲渡価額の5%相当額を「概算取得費」として計上することができます。持株会の場合、持株会退会にあたって交付される「退会精算書」「引出精算書」に「簿価単価」が記載されている場合は、その簿価単価を基に取得費を計算することができます。

参考:国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問
https://www.keisan.nta.go.jp/h29yokuaru/cat2/cat21/cat219/seidogaiyo/jugyoinmochikabukai.html

「譲渡費用」を算出しよう

譲渡費用は株式を売却する際に発生した費用のことをいい、具体的には株式の売却のために要した委託手数料などがあげられます。

参考:国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問
https://www.keisan.nta.go.jp/r1yokuaru/cat2/cat21/cat219/yogosetsumei/kabushikijotohiyo.html

「所得税額」を算出しよう

株式の譲渡所得については給与所得や事業所得などと別口で税金を計算する「分離課税」が適用されるため、単独で税金計算をおこなうことになります。そのため、上記の算式で計算した譲渡所得金額に税率を乗じて税額を計算することになります。

株式の譲渡所得金額における税金は、

  • 所得税:15.315%
  • 住民税:  5.000%

となっているため、合計で20.315%の税率となります。

まとめ

持株会を退会するだけでは確定申告は必要ありませんが、退会によって取得した株式を売却する場合は確定申告が必要となるケースもあります。確定申告が必要であるかどうかについては、様々な観点から判定をおこなう必要があります。場合によっては多額の税金が発生してしまうケースや、反対に多額の税金分を得することがあるため、慎重に判断するようにしましょう。確定申告が必要であるかどうかの判断について、少しでも不安や疑問がある場合は税務の専門家である税理士に相談することをおすすめします。