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事業承継の相談は誰にするべき?詳しく解説!

中小企業の経営者が引退する時の平均年齢は以前より高くなっています。

その理由のひとつは経営や事業承継について、相談相手がいない・どこに相談したらいいかわからないという経営者が多いことです。

このまま日本全体で事業承継が進まないと、今後10年以内に国内の中小企業の約半数が存続の危機に直面すると言われています。

事業承継の相談はどこでできるのでしょうか?

この記事では事業承継の相談相手について解説します。

事業承継の相談ができる機関

事業引継ぎ相談窓口、事業承継・引継ぎ支援センター

事業引継ぎ相談窓口と事業承継・引継ぎ支援センターは政府の事業承継に関するアドバイザリー機関です。

事業引継ぎ相談窓口は、全国47都道府県のそれぞれに設置されており、事業承継に関する情報提供やアドバイスを行っています。

一方事業承継・引継ぎ支援センターでは、より専門的な支援を行っています。

中小企業庁では、今後、準備が整い次第、拠点を拡大していく方針です。

事業引継ぎ相談窓口や事業承継・引継ぎ支援センターは、公的機関であるため、公平な立場でアドバイスがしてもらえることが大きなメリットです。

また、事業承継を検討する経営者にとっては、相談料が無料であることも大きなメリットと言えます。

ただし無料相談であっても、別途、登録機関や専門家によるサポートを受ける場合は、最終的に料金が発生するケースがあることには、注意して下さい。

商工会議所

商工会議所は事業承継に関することに限らず、経営者に対して様々な支援を行っています。

そのため、事業承継の相談に乗ってもらうこともできます。

商工会議所によっては、事業承継支援に特に力を入れており、経営指導員による出張相談会を開催したりしています。

また窓口によっては、事業承継に精通した中小企業診断士による事業承継相談が可能であり、他にも、税理士・行政書士・経営コンサルタント・社会保険労務士などの専門家に相談することもできます。

商工会議所に相談するメリットは、商工会議所の会員であれば、ほとんどのサービスを無料で受けられることです。

まだ会員でなくても、年会費を払い会員になれば、さまざまなサービスを利用することができます。

自分で事業継続の知識を強化したいという方は、商工会議所を訪ねてみてはいかがでしょうか。

しかし独学で勉強しても、結局は弁護士や税理士等の専門家の力を借りなければ事業承継を実行することは難しいのが通常です。

また商工会議所に相談したとしても、専門家によるサポートを受ける場合は専門家費用が発生します。

金融機関

長年付き合いのある金融機関は、事業承継の相談先としても利用できます。

金融機関によっては、事業承継に関するセミナーを開催しているところもあるので、それに出席してみても良いでしょう。

長年の付き合いがあるため、相談しやすいという利点があります。

また、事業承継を行う場合、最終的には取引のある金融機関の担当者に伝える必要があります。

そのためいっそのこと、最初から相談した方が楽かもしれません。

デメリットとしては、取引のある金融機関に相談したとしても結局、別の専門家を紹介されるため、二度手間になることです。

また、借入金の返済が早々に終わっている場合、金融機関との関係が希薄になってしまっているケースもあります。

このような場合、金融機関によるサポートが誠実に行われない可能性もないわけではありません。

事業承継について相談するかどうかを決めるにあたっては、金融機関との関係・担当者との関係などに注意し、事業承継の相談相手としてふさわしいかどうか検討することが大切です。

弁護士等

法律の専門家である弁護士等も事業承継の相談相手として候補に挙がります。

弁護士等は相続対策などについてのアドバイスを行えるという利点があります。

例えば、遺言書の作成等は弁護士等が特に得意とするところです。

デメリットは、場合によっては相談料が高額になることです。

また、弁護士等がM&Aの流れを全面的にサポートしてはくれないケースもあります。

どちらにせよM&Aには会計・税務の専門家である税理士等の存在が必要なので、弁護士以外の専門家の力を借りる必要があります。

M&A専門業者

M&A支援に特化した民間企業としては、M&A仲介業者やM&Aコンサルティング会社などがあります。

M&A仲介業者とM&Aコンサルティング会社との間に明確な区別はありませんが、M&A仲介業者はM&Aのみに特化しているところが多く、M&Aコンサルティング会社はM&Aに加え、他のコンサルティング業務も行っているケースが多いようです。

M&A専門業者にはM&Aの経験やノウハウが豊富にあるという強みがあります。

最新のM&A事例やスキームに精通し、売り手候補を熱心に探しているところもあります。

弁護士や税理士などの専門家と連携しているため、担当者を通じていつでも専門家に連絡できるのも良い点です。

デメリットは、公的サービスを利用する場合と比較して手数料が発生すること、M&A手数料は企業規模に応じて設定されており、場合によっては費用が高くなることです。

そもそもM&Aには専門家の力を借りる必要があるのが通常です。

独学だけでM&Aを行うことは事実上不可能です。

買い手候補との条件交渉、従業員やサプライヤーへの説明など、法律や税金以外の手続きも慎重に行う必要があります。

標準的な契約書を使い、形式的な手続きだけを一通り踏んだとしても、後々法的な問題に発展するケースも少なくありません。

そのため失敗事例を聞くことで、自分の事業承継で起こりうるリスクに対して事前に備えることができます。

M&A仲介業者に支払う手数料は決して安くないので、お金をかけたくないと思うかもしれませんが、事業承継はそれだけ経営にとって重要なことなのです。

今後何十年も不安を抱えたまま生活しなければならなくなるリスクを考えると、専門家に相談するコストは必要なものと割り切る心がけが必要と言えるでしょう。

税理士・公認会計士

長年顧問を勤めている税理士・公認会計士がいる会社では、その人が最も相談を受けやすいという調査結果が出ています。

税理士・公認会計士は、多くの中小企業をサポートしているため、他の経営者からM&Aの悩みを聞くことも多いようです。

「他の経営者はどうしているのか」といった質問に対して、正直な答えを得られる可能性が高いことが大きなメリットです。

具体的な事例を聞くことで、事業承継が具体的にイメージしやすくなります。

他の経営者はどこに事業承継の相談をしているのか?

中小企業白書によると、実際に経営者が事業承継について相談する相手を調査した結果、以下の回答が寄せられました。

調査結果によると、事業承継の相談先のトップ3は以下の通りです。

1.税理士・公認会計士

2.親族・友人・知人

3.金融機関

最も多い相談先は税理士・公認会計士等の専門家です。

企業の業績を理解し、継続的な関係を築いているからです。

また事業譲渡のタイミングや将来のライフプランなどについては、2位の近親者に相談することが多いようです。

3位は取引先金融機関です。

大手金融機関では、いざというときの事業承継について、きめ細かな対応をしてくれる担当者がいることが想定されます。

事業承継セミナーのチラシをもとに相談されることが多いようです。

事業承継では、金融機関から新たな資金を借りることになるケースが多いです。

事業承継の実績が豊富な金融機関は、相談先として有力な候補と言えます。

事業承継の相談先を選ぶ際のポイント

事業承継やM&Aの経験を確認する。

事業承継を実行する際には、さまざまな不測の事態が発生する可能性があります。

そんなときに臨機応変に対応できるかどうかは、これまでの実績によるところが大きいでしょう。

経営者にとって最後の大きなチャレンジと言われる事業承継を成功させるためには、実績のある相談相手を選ぶことが望ましいと思います。

企業のサポート実績については、事例を質問したり、数値データを確認すること等で判断することができます。

専門家との連携状況の確認

事業承継には多くの法的・税務的リスクが伴うため、専門家の存在は欠かせません。

必要に応じて専門家に相談できる体制があるか、専門家による契約書等のチェック体制があるか、専門家がどの程度デューデリジェンスに関与しているかを相談を通じて確認することが重要です。

担当者との相性

また、担当者との相性もM&Aの成否を左右する大きな要因です。

意思決定者が売り手のビジネスをよく理解してくれれば、自社に合った買い手候補を見つけられる可能性が高くなります。

責任者の経験や人柄は、よく確認すべきポイントです。

コミュニケーション能力・誠実さなど、「この人になら任せられる」と思える担当者を根気よく探すことが大切です。

事業承継後のガバナンス体制について

全社を率いてきた前任者の退任は、会社の経営に大きな影響を与えます。

後継者が承継を行った以降も会社が成長し続けるためには、次のような点に配慮する必要があります。

  • 経営理念の伝承
  • 後継者が経営判断を下せる組織体制(業績管理体制、権限・責任系統)への移行
  • 後継者の社内ブレーンとして、同世代の管理職を登用すること
  • 新体制でのスタッフ評価制度(既存制度に問題はないか?)
  • 前任者の退任後の役割(前任者の認識と後任者の認識が一致しているか)

まとめ

M&Aの検討を始めたばかりで、まずは情報を得たいという方には、地域の支援組織である事業引継ぎ相談窓口や商工会議所が相談相手に適していると言えるでしょう。

ネットやセミナーでの情報収集も有効です。

長い付き合いがあるのであれば、早い段階で金融機関や税理士等に相談することも選択肢の一つです。

特に親族内承継が既に決まっている場合は、税理士に相談するのが一番でしょう。

親族内承継の場合は、相続税の対策を考慮する必要があるからです。

今回の記事が皆様の事業承継に関する理解の一助となれば幸いです。