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日本政策金融公庫の借入申込書の書き方と記載内容を詳細に解説

日本政策金融公庫で融資の申込みをするときには、必ず「借入申込書」の提出が必要となりますが、意外とその内容を十分に理解しないまま提出されている方が少なくありません。

借入申込書は、日本政策金融公庫が融資の判断をする際に、はじめに審査する書類であるだけでなく、その内容は審査結果や融資条件に大きくかかわってくるため、よく理解せずに記入してしまうと、思わぬ不利となってしまうこともあります。また、申込書の欄外や裏面に書かれた情報にも注意する必要があります。

この記事では、日本政策金融公庫の申込書の書き方や、記載内容の意味、記入時の注意点について解説いたします。

日本政策金融公庫の借入申込書の入手先

日本政策金融公庫では、独自の借入申込書を用意しており、融資の申込みはこの申込書を使って行います。また、申込書の基本的な書き方については記載例も用意されているので、融資の申込みをされる方で「借入申込証の書き方がわからない」という場合はこちらをご参照ください。

ただし、借入れ申込書はPDF形式で作成されているため、ワードで作った文書のように上書き記入ができません。そのため、印刷したものに直接、手書きする必要があります。

アクロバットリーダーを導入されていない方は、あらかじめこのソフトをインストールしておきましょう。

借入申込書フォーマット

https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/mousikomi190701_dl.pdf

借入申込書の書き方のポイント

日本政策金融公庫の借入申込書には、融資を申込む企業の属性情報や借入希望額などの基本的な項目や希望する条件を記載します。しかし、間違えやすい箇所や見落としやすい項目もあるため、よく注意書きを参照しながら記入する必要があります。下記では、借入申込書の各項目について詳細にご説明します。

※日本政策金融公庫の借入申込書には、以前は印鑑を押印する箇所がありましたが、現在は、個人事業・法人ともに押印は不要となっています。

記入項目について

①申込人名

申込人名の箇所には、

法人-法人名と代表者名、代表者の性別・生年月日

個人事業-商号(または屋号)と代表者の性別・生年月日を記載します。

法人名については、登記事項証明書に記載されたものと同じものを正確に記入します。なお、会社名のゴム印がある場合には、それを押印したものでも構いませんが、代表者の氏名欄についてはゴム印は使用できないため、必ず自筆で記入するよう注意してください。

②申込金額

今回の融資における「希望申込額」を記入します。既存の借入分の金額は含みません。

また、この金額は後の「資金の使い道」の箇所で説明する運転資金と設備資金の合計額となるため、それぞれの箇所で金額の違いが出ないようにしてください。

③借入希望日

ここでは、借入希望日を記入します。希望がない場合は無記入でも構いませんが、日付が記入されている場合はそれを考慮して審査をすすめてもらうことができるため、できるだけ記入しましょう。

ただし、あまりに期間が短い場合は、対応できないこともあるため、ある程度の余裕を持った日付とします。なお、日本政策金融公庫では、申込みから融資が出るまで、創業融資の場合には約1ヶ月〜1.5ヶ月程度、2回目以降の融資では2~3週間程度の時間がかかりますので、これを目安として希望日を設定するのがよいでしょう。

しかし、月末や年末、夏季休暇シーズンなどは、通常よりも長い時間が必要となります。

また、何らかの事情により、融資を急ぐ場合にはあらかじめその理由を説明しておくと、それにあわせて多少、審査を早めてもらえる場合があるので、急ぎの場合には相談してみましょう。

④希望する返済期間・元金据置の有無

希望返済期間の欄には、希望する融資の返済期間を記入します。

なお、融資には、申込みをする融資の種類ごとに、上限の返済期間が決められているため、これを超えた返済期間とすることはできません。したがって、長期の融資を希望するときには、返済期間が制度上の上限を超えていないかに注意する必要があります。

元金据置とは、元金の支払いをせずに利息だけを支払うことができる制度です。

元金据置ができる期間についても、融資の種類ごとに上限期間が決まっているため、その範囲内で申込むようにします。

なお、元金据置は、支払いが免除される制度ではありません。もし、元金据え置きをした場合には、その分それ以降の返済額が増えることとなります。そのため、この制度を利用する場合には、その後の返済額について注意する必要があります。(返済期間が5~7年の場合なら、据置期間は3〜6ヶ月程度までにした方がよいでしょう)

また、返済期間や元金据置期間は、記入すれば必ずその通りになるというものではありません。借入人の状況や融資額、資金使途などを総合的に判断して決定されるため、希望よりも短い期間となることもあります。

⑤毎月希望返済日

毎月の融資の返済日について希望がある場合には、「5日、10日、15日、20日、25日、月末」の中から選んで〇をつけます。

もし、指定した日に残高が足りず、返済金の引き落しができない場合には、金融機関の信用を失い、それ以降の取引に影響する可能性があります。さらに、引き落しができない月が続くと信用情報登録機関へ登録されてしまうこともあるため、返済日は最も残高が多い月に設定しておくことをおすすめします。

⑥返済金の支払い方法

日本政策金融公庫では口座を作成することができないため、融資返済の引き落しをするための口座を記入します。この口座は借入人の口座であればどこのものでもよいのですが、引き落とし口座の金融機関で融資を受けている場合には、公庫融資の借入れ状況もその金融機関に補足されてしまうため、できれば融資等を受けていない口座の方がよいでしょう。

⑦資金の使い途・金額内訳

この箇所には、どのように融資を使うのかといった資金の使い道と金額を記入します。

資金の使い道については、運転資金・設備資金の額をそれぞれの欄に記入します。

運転資金・設備資金のそれぞれについて、使い道を(1)〜(5)の中から選びますが、使い道が複数ある場合には、複数箇所にチェックしても構いません。ただし、(5)その他を選んだ場合には、その具体的な内容を説明するか、事業計画書などに記入します。

なお、ここに記載する運転資金と設備資金の合計額は申込額と必ず一致させるようにします。

また、融資の種類ごとに資金の上限額や利用できる用途が決められているため、「この上限額を超えた申込額なっていないか?」や「運転資金または設備資金での申し込みができる融資なのか?」(融資制度によっては、運転資金のみや設備資金の申込みに限定されているものがあります。)を確認して申し込むようにします。

なお、運転資金か設備資金のどちらで申し込むかは、審査やその後の取り扱いにおいて重要な意味を持ちます。たとえば、設備資金の名目で借りた融資を運転資金で利用した場合などは重大な契約違反となり、ケースによっては融資の返還を求められることもあります。したがって、いい加減に記入するのではなく、しっかりと使う目的にあった選択をする必要があります。

⑧本店所在地・営業所所在地

この箇所には、「会社の本店(住所)・営業所在地・代表者の自宅住所・郵便番号・連絡先・所有かテナントかの別・メールアドレス」を記入します。会社の本店は登記事項証明書に記載されたものを正確に記載します。実質的な本店が別にある場合でも、そちらではなく登記事項証明書に記載されたものを記入してください。

なお、本店の移転や代表者の変更をしているにもかかわらず、登記をしていない場合には、移転登記等をした後でなければ受け付けてもらえないことがありますので、登記事項に変更が生じている場合には、変更手続きをした上で申し込んでください。

⑨創業年月

この欄には、すでに創業している場合には創業した年月日を、これから創業する場合には創業予定日を記入します。

創業年月日は、個人事業については開業届の提出日、法人の場合には登記簿に記載された設立年月日となります。実際に事業を開始した日や登記の申請をした日ではありません。また、個人で創業した後に法人となった場合(法人成り)は、法人となった日ではなく個人として開業した日を記入します。

⑩業種・従業員数・家族構成

業種名や従業員数を記入します。業種名は形式的なものでなく、実際に行っている事業の内容を記入します。記入例のように製造業と卸といった複数の事業を行っている場合には、両方を記載します。

従業員数には、正社員の他、家族従業員やパートの人数も記入しますが、その場合には役員・従業員・パートの区別もあわせて記入しましょう。

⑪担保・保証の条件選択

希望する融資の種類に応じて、

A.新型コロナウイルス感染症特別貸付

B.新型コロナウイルス感染症特別貸付以外の融資

・新たに事業を始める方、税務申告を2期終えていない方-新創業融資制度

・税務申告を2期以上行っている方-担保を不要とする融資

C.不動産等の担保の提供する場合

D.法人代表者の方の連帯保証を不要とする制度(「経営者保証免除特例制度」等)

のいずれか該当するものにチェックをします。

なお、「新創業融資制度」は、新たに事業を始める方、税務申告を2期終えていない方しか利用できないため、創業者であってもこの要件に該当しない場合には、その他の制度を利用することとなります。

また、日本政策金融公庫では、一定の条件を満たす方を対象として、法人代表者が連帯保証人とならない「経営者保証免除特例制度」を設けていますが、この制度の利用を希望する場合にはD欄にチェックします。

借入れ申込書に関するその他の注意点

日本政策金融公庫の借入申込書に記入する項目は以上となりますが、申込書の裏面には申込みに関する重要な事項が記載されているため、以下の点についても理解しておきましょう。

個人信用情報機関の利用について

申込書の裏面では、申込人の個人情報の利用や取り扱いについて、以下のように記載されています。

〇申込人の情報の利用目的

『この借入申込書および提出書類によりご提出いただきましたお申込人(法人の場合には代表者を含みます)、そのご家族(法人の場合は代表者の方のご家族)および予定連帯保証人の方の情報の利用目的は次のとおりといたします。

なお、予定連帯保証人ご本人さまに利用目的についてのご同意をご確認ください。ご契約時には、連帯保証人ご本人さまに利用目的についてのご同意を書面にて確認させていただきます。

①お客さまのご本人の確認(融資制度等をご利用いただく要件等の確認を含む。)

②ご融資のお申込の受付、ご融資の判断およびご融資後・お取引終了後の管理

③ご契約の締結、法律等に基づく権利の行使や義務の履行 他』

公庫に融資を申し込んだときには、申込人だけでなく、法人代表者やその家族、連帯保証人の個人情報が、融資時の本人確認や融資判断、その後の管理のために利用されます。

なお、③の「法律等に基づく権利の行使や義務の履行」とは、申込人による債務の返済が滞った場合の督促や強制執行手続き等を意味します。

〇個人信用情報機関の利用・個人信用情報機関への登録等

『公庫が必要と認めた場合、公庫が加盟し利用・登録する個人信用情報機関※1および同機関と提携する個人信用情報機関※2に、お申込人(法人の場合は代表者の方)の個人情報(各機関の加盟会員によって登録される契約内容、返済状況等の情報)が登録されている場合には、それを与信取引上の判断(返済能力の調査または転居先の調査をいう。ただし、返済能力に関する情報については返済能力の調査の目的に限る。以下同じ。)のために利用させていただきます。』

※1公庫が加盟し利用・登録する個人信用情報機関

 ・株式会社 シー・アイ・シー

※2前1の機関と提携する個人信用情報機関

 ・全国銀行個人信用情報センター

 ・株式会社 日本信用情報機構(JICC)

公庫は必要に応じて、申込人等の個人情報をCIC及び提携機関(全国銀行個人信用情報センター・㈱日本信用情報機構)に確認し、その情報を融資審査に利用することができます。

そのため、公庫やCICに事故や延滞情報が登録されていない場合でも、JICCなどに登録がされている場合には、その情報が共有されることとなります。

『公庫が、このお申込に関して公庫が加盟し利用・登録する個人信用情報機関を利用した場合には、その利用した日および本申込の内容等が同機関に6ヵ月間登録され、同機関の加盟会員によって自己の与信取引上の判断のために利用されます。』

公庫が申込人の信用情報の確認をした場合には、その情報が6ヶ月間、信用情報登録機関に登録されます。この情報は他の加盟会員もこれを確認できるようになります。

『このお申込により公庫から借入する場合、借入金額、契約締結日および返済状況等の当該借入に関する個人情報が、公庫が加盟し利用・登録する個人信用情報機関に登録され、同機関の加盟会員および同機関と提携する個人信用情報機関の加盟会員によって、自己の与信取引上の判断のために利用されます。』

公庫の融資を利用した場合には、借入額、契約日、その他一定の事項がCICにも登録され、その後はCICだけでなく、提携する全国銀行個人信用情報センターやJICCが与信取引をする際の判断資料とされます。

連帯保証について

日本政策金融公庫が法人に対して融資をする際には、新創業融資制度などの一部の融資を除き、原則、その代表者またはこれに準ずる方が連帯保証人となる必要があります。

なお、公庫の融資では、無担保無保証制度というものがありますが、この場合の「無保証」とは、第三者による保証が不要ということを意味します。

現在、公庫では民法の連帯保証人に関する規定が改正されたため、個人事業主については原則として、第三者の保証を取らない対応となっています。

しかし、法人については、一部の融資を除き、代表者等については連帯保証人となる必要があります。

そのため公庫では、連帯保証人を求める際には、申込書の裏面で以下の4点について定めています。

①連帯保証人の責務

借主が約定どおりの返済ができない場合には、借主の方に代わり連帯保証人に返済を求める旨

②連帯保証人の特徴

連帯保証人は、次の事由がある場合でも、これを理由として公庫からの返済の請求を拒むことができないこと

ア.公庫が借主へご返済の請求を十分に行っていないこと

イ.借主が資産を所有していること

③連帯保証人の責任の範囲

複数の連帯保証人の方がいる場合でも、連帯保証人のそれぞれが借入金、利息および損害

金ならびに借入金等から生じる一切の債務の全額について責任を負担すること

④連帯保証契約前の承諾事項

借主は契約締結時までに、連帯保証人に借主の財産および収支の状況等の内容について情報提供することが法律(民法第465条の10)で定められていること

また、連帯保証人は借主から、借主の財産および収支の状況等の内容について確認するために必要な資料の提供を受け、承諾を得たうえで、連帯保証をすべきこと

借入申込書の添付書類について

借入申込書の裏面の最後には、添付書類の案内が記載されています。

個人や法人だけでなく、申し込む融資によっても必要となるものが異なりますので、見落としがないよう確認し準備しましょう。

はじめて利用する方
・企業概要書
・運転免許証(両面)またはパスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)
・法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人営業の方)

個人営業の方
・最近2期分の申告決算書
法人営業の方
・最近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含む)
・最近の試算表(決算後6ヵ月以上経過している場合または事業を始めたばかりで決算を終えていない方)

生活衛生貸付を申込む方
上記の他、都道府県知事の「推せん書」(申込金額が500万円以下の場合は不要)または「振興事業に係る資金証明書」
その他
・これから創業する方や創業直後で決算がお済みでない方については、創業計画書が必要
・設備資金の場合は見積書、担保を希望する場合は不動産の全部事項証明書が必要
・飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方については許認可証が必要

借入申込書に間違いがあったときの対処法は?

日本政策金融公庫で融資を申し込むときに、記載内容に漏れや間違いがあった場合でも、それらがすぐに訂正できるものである場合には、申込みに影響はありません。しかし、申込人が間違えて金額やその他の条件を記入したとしても、通常、公庫の側ではそれが間違いなのかどうかに気付けないため、そのままで審査がされてしまうことになります。

そのため、融資額を間違えて申込んでしまった場合や、元本の据置を希望せずに提出してしまった場合には、その条件で融資がされてしまう可能性があります。

とくに、運転資金については設備資金のように見積書で内容が正しいかどうかを確認することができないため、記入にあたってはとくに気をつける必要があります。

まとめ

日本政策金融公庫の融資を利用する場合には、借入申込書の提出が必須となりますが、その際に記入する情報は正確な資料にもとづいて記入するようにしましょう。

また、借入申込書は融資の審査でもっともはじめに確認される資料であるだけでなく、その内容は融資の条件として審査されるため、間違ってもやり直しができません。

とくに、元金据置制度の利用の有無などは見落としやすいので、注意してください。

その他にも、運転資金や設備資金の金額、使い道等については、審査に与える影響も大きため、これらの点で判断に迷ったときは、公庫や専門家に相談して記入することをおすすめします。