HOME > コラム > 個人事業主でも使いやすい日本政策金融公庫の融資はこれ!借りやすくするポイントも紹介。

コラム

個人事業主でも使いやすい日本政策金融公庫の融資はこれ!借りやすくするポイントも紹介。

現在、コロナや円安の影響で、資金繰りが厳しくなっている企業が増えていますが、その中でも個人事業主は法人より資金力や信用力が低いことが多いため、融資を受けるのも難しいといえます。しかし、そのような中でも、個人事業や小規模事業者だけが使える融資や、政策により配慮された融資があるため、これらを上手に活用すれば十分融資を受けることは可能です。

この記事では、個人事業主が利用しやすい融資制度や、融資を受けやすくするポイントについて解説いたします。

個人事業主と法人とでは、借りやすさに違いはある?

よく、個人事業主は法人よりも融資が借りにくいといわれますが、実は融資の判断ではこの両者について差はありません。しかし、このようにいわれることには、次のような理由が考えられます。

個人事業法人には資本金がない

法人には資本金があるが、「個人事業にはこれがないため財務面の評価で不利」といわれることがありますが、現在ではそのようなことはありません。

確かに商法の施行当時には、株式会社については1,000万円、有限会社については300万円という最低資本金制度があったため、これがその一つの根拠となっていました。

しかし、会社法の施行に伴いこの最低資本金制度は廃止され、実質1円からでも会社を設立できるようになりました。

そのため現在では、法人でも個人事業より出資金が少ない企業も多く設立されており、その意味でも個人事業主と法人とでは差はなくなっています。

ただし、対外的には個人事業の場合は、法人のように資本金を表示することができないため、その点では規模の大きい個人事業では損といえます。

個人事業主の信用力が低いため不利

個人事業主と法人を比較した場合、事業面では、「法人の方が見栄えがよい」、「顧客に安心感を与える」というメリットがあります。

しかし、これはあくまでも対外的な営業をする場合の話であり、融資の審査においては、「いくらの売上げがあるのか?」や「利益はどの程度出ているのか?」が重要なポイントであつて、企業の体裁や顧客の安心感などは評価の対象とはなりません。

もちろん、大規模な事業をする場合には法人化する必要がありますが、あまり事業の規模が大きくない場合には、個人事業主の信用力が低いため融資に不利となるということはありません。

個人事業では利用できない制度がある

以前は法人のみが利用できる融資制度があり、その点で個人事業の方が不利といえるケースがありました。しかし、現在では一部のローンを除き、個人事業だから利用できない融資というのはほぼなく、そのため、融資制度の点から見た場合でも、個人事業に不利ということはなくなっています。

ただし、現在でも、一部の信販系のローンやノンバンクの融資の中には、法人のみを対象としたものがある他、出資や社債を前提とした資金調達方法などは利用できません。

財務書類の信ぴょう性が低い

個人事業では法人のような正確な財務資料が作られていないから融資に不利になるという方もいますが、これも融資の判断ではあまり関係ありません。

たしかに、作成された財務資料の内容がいい加減な場合には問題となりますが、それは法人についても同じことがいえます。

個人事業については確定申告書、法人については決算書と、それぞれ作成する資料の種類は異なりますが、きちんと会計処理に従った記帳・処理をしていれば問題ありません。

以上のように現在においては個人事業であっても法人であっても、融資の受けやすさに違いはありません。

ただし、事業承継をした場合には、個人事業では許認可を引き継げないため、あらたに相続人の名義で事業をしなければならないことに注意が必要です。

個人事業が利用できる融資制度や資金調達方法

個人事業で利用できる融資制度や資金調達の方法には、次のようなものがあります。

日本政策金融公庫による融資

個人事業の方が、はじめに利用する金融機関の一つが、日本政策金融公庫の融資です。

公庫には、民間金融機関の資金調達をサポートするという目的があるため、民間の金融機関がしにくい創業者や個人事業主への融資を積極的に行っています。

日本政策金融公庫には国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業の3つの部門がありますが、個人事業や小規模企業向けの小口融資については国民生活事業が、中小企業向けの長期事業融資については中小企業事業がそれぞれ対応しています。

日本政策金融公庫の融資には、次のような特徴があります。

①低金利・長期の借入れが可能

日本政策金融公庫では、個人事業主や創業者に対しても、特別な優遇金利を適用して貸し出しを行っているため、これらの規模や信用力の低い方でも、低金利で融資を受けることができます。

また、返済期間についても、通常の金融機関では1〜5年(設備資金については7年程度まで)というのが一般的ですが、日本政策金融公庫では、設備資金については20年、運転資金については7年(特別な制度については20年)までの期間に対応しています。

②個人事業主や創業者の融資に熱心である

日本政策金融公庫では、規模の小さな個人事業主や実績のない創業者に対しても、一定要件を満たせる場合には無担保・無保証で融資を行っています。

また、融資限度額も創業融資の場合で3,000万円まで(運転資金については1,500万円まで)と、他の金融機関にはない大きな額の申込みが可能です。

また、コロナの影響により売り上げが低下している方については、最大8,000万円の貸し出し(新型コロナウイルス感染症特別貸付)を無担保・無保証で行っています。

③融資姿勢や審査が柔軟

日本政策金融公庫では、できるだけ多くの創業者・中小企業へ融資をするため、融資審査においても一般の金融機関より柔軟な対応をしています。

そのため、財務内容が悪く通常であれば融資が難しい企業に対しても、今後の事業計画の内容や返済の見込み等から問題がないと判断できる場合に、貸し出しをすることが少なくありません。

信用保証協会の保証のついた「制度融資」

日本政策金融公庫と同じく、個人事業主が利用しやすいのが「制度融資」です。

「制度融資」とは、公的融資の一種で、都道府県や市町村などの自治体と金融機関、公的機関である信用保証協会の3者が協調して行っている融資の制度です。

それぞれの役割としては、行政が制度の設計をし、金融機関は融資を行い、信用保証協会は公的な保証人となります。

制度融資も創業者や小規模事業者への融資の促進を目的としているため、日本政策金融公庫と同程度の金利、返済期間で利用できる他、自治体によっては利子の補給や融資限度額の拡大、信用保証料の補助などの優遇をしているところもあります。

ただし、制度融資は自治体ごとに運用されているため、それぞれの自治体で制度の中身や条件が異なります。そのため制度融資を利用するときには、自分が利用しようとしている制度融資の内容を十分に確認して申し込む必要があります。

銀行・信用金庫等の市中の金融機関の融資

「銀行」は、銀行法により設立された金融機関で、その規模により都銀と地銀にわけられます。都銀が全国を対象とした営業を行っているのに対し、地銀では都道府県単位での比較的狭いエリアを営業範囲としているところに主な違いがあります。

銀行融資では、低い金利で借り入れをすることができます。具体的な金利は、借入れをする企業の信用力や実績により異なり、通常は2~4%程度、優良な企業についてはさらに低い金利で融資をすることもあります。

また、大きな金額の融資にも対応しており、企業の信用力や担保の有無、貸出条件によっては数億円以上の融資が可能です。ただし、民間の金融機関は営利企業のため、公庫などの公的金融機関よりも借入れの難易度が高く、必要書類なども多くなります。

これに対して、「信用金庫」は、信用金庫法により設立された地域金融機関です。

「相互扶助を目的とした協同組織である」、「地域内における中小・零細企業を対象としている」、「融資は原則として組合員に対して行われる」といった特徴があります。

信用金庫は創業融資や小規模融資に力を入れているところが多いため、個人事業主の融資先としておすすめできますが、銀行よりも規模や資金力が小さいため、多額の融資がしにくい、金利が高めとなるといった特徴があります。

なお、信用保証協会の保証をつけない融資をプロパー融資といいますが、銀行・信用金庫のいずれについても、借入れ企業にある程度以上の実績や信頼がないと利用するのは難しいといえます。

個人事業主が利用しやすい融資とは?

以下のご紹介する融資は、政策的に小規模事業者に配慮した融資のため、個人事業主でも利用しやすいといえます。

日本政策金融公庫の融資

①新型コロナウイルス感染症特別貸付

新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に業況悪化を来している方を対象とした融資です。

利用できる方新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方
1.最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が前4年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している方
2.業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少している方
(1)過去3ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高
(2)令和元年12月の売上高
(3)令和元年10月から12月の平均売上高
資金使途新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする設備資金および運転資金
融資限度額8,000万円(別枠)
利率(年)基準利率
ただし、6,000万円を限度として融資後3年目までは基準利率-0.9%、4年目以降は基準利率
返済期間設備資金 20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金 20年以内(うち据置期間5年以内)
担保無担保

※中小企業基盤整備機構が行う特別利子補給制度(一部の対象者について、基準利率-0.9%の部分に対して当初3年間の利子補給を実施するもの(実質無利子化))は、令和4年9月30日(金)の借入申込受付分をもって取扱いを終了しました。

②マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者の商工業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる融資です。

利用できる方商工会議所会頭、商工会会長等の推薦を受けた方
資金使途設備資金および運転資金
融資限度額2,000万円
利率(年)1.15%(2022.11.25現在)
返済期間運転資金 7年以内(据置期間うち1年以内)
設備資金 10年以内(崇夫危機感うち2年以内)
担保不要

※新型コロナウイルス感染症特別貸付を利用できる方については、コロナ貸付+別枠1,000万円の利用が可能となります。

③生活衛生改善貸付

生活衛生改善貸付は、生活衛生同業組合などの経営指導を受けている生活衛生関係の事業を営む小規模事業者の方が経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる融資です。

利用できる方・生活衛生関係の事業を営む小規模事業者であって生活衛生同業組合等の長の推薦を受けた次の方
・常時使用する従業員数が5人(旅館業及び興行場営業を営む方は20人)以下の会社または個人
資金使途設備資金および運転資金
融資限度額2,000万円
利率(年)1.15%(2022.11.25現在)
返済期間運転資金 7年以内(据置期間うち1年以内)
設備資金 10年以内(崇夫危機感うち2年以内)
担保不要

④経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)

セーフティネット貸付は、社会的、経済的環境の変化などにより、一時的に業況の悪化を来している方を他対象に経営基盤の強化を図るための融資です。

利用できる方社会的、経済的環境の変化等外的要因により、一時的に売上の減少等業況悪化をきたしているが、中長期的にはその業況が回復し発展することが見込まれる方で、次のいずれかに該当する方
1.最近の決算期における売上高が前期または前々期に比し5%以上減少している方
2.最近3ヵ月の売上高が前年同期または前々年同期に比し5%以上減少しており、かつ、今後も売上減少が見込まれる方
3.最近の決算期における純利益額または売上高経常利益率が前期または前々期に比し悪化している方 他
資金使途設備資金および運転資金
融資限度額4,800万円
利率(年)基準金利(2.00~3.05% 2022.11.25現在)
ただし、一定の要件に該当する場合は、特別金利を適用
返済期間運転資金 15年以内(据置期間うち3年以内)
設備資金 8年以内(崇夫危機感うち3年以内)
担保要相談。ただし、担保を不要とする融資との併用可能。

⑤担保を不要とする融資

担保を不要とする融資は、他の融資制度とあわせて利用することで、原則として、法人については無担保・代表者の方のみの保証、個人については無担保・無保証人で融資をすることができる制融資です。

利用できる方・税務申告を2期以上行っている方
・原則として、所得税等を原則として完納している方
資金使途4,800万円
融資限度額各融資制度に定めるご返済期間以内
利率(年)基準金利(2.00~3.05% 2022.11.25現在)
担保担保:無担保
保証人:法人営業の方・・・代表者の方のみ
個人営業の方・・・不要

制度融資(東京都)

①創業融資

東京都創業融資は、創業前または創業した日から5年未満の方を対象とした無担保無保証の融資です。

利用できる方次のいずれかに該当すること。
①事業を営んでいない個人で、東京都内で創業しようとする具体的計画を有する方
②創業した日から5年未満である中小企業者又は組合
③東京都内で分社化しようとする会社又は分社化により設立された日から5年未満の会社
資金使途設備資金および運転資金
融資限度額3,500万円以内
利率(年)1.9%~2.5%%以内 又は変動利率(令和4年4月22日時点)
返済期間運転資金 7年以内 設備資金10年以内(いずれも、据置期間は1年以内)
担保原則、不要(但し、代表者については、連帯保証が必要)
保証料の2分の1を補助

②小口フリーランス(全国共通)

小口フリーランスは、信用保証協会の保証残高が2,000万円までの一定規模以下の企業が利用できる融資制度です。

利用できる方この融資を含め、全国の信用保証協会の保証付融資の合計残高が2,000万円以下の小規模企業者
資金使途設備資金および運転資金
融資限度額2,000万円以内
利率(年)1.9%~2.5%%以内 又は変動利率(令和4年4月22日時点)
返済期間運転資金 7年以内 設備資金10年以内(いずれも、据置期間は1年以内)
担保原則、不要(但し、代表者については、連帯保証が必要)
保証料の2分の1を補助

③補助金・助成金つなぎ

補助金・助成金つなぎは、東京都の関連団体が行う補助金や助成金の交付決定を受けた方が、補助等事業の執行に必要となる資金の融資を受けられる制度です。

利用できる方東京都産業労働局、公益財団法人東京都中小企業振興公社、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター、公益財団法人東京観光財団、公益財団法人東京しごと財団又は中小企業庁所管の補助金・助成金の交付決定を受けた事業を行う中小企業者又は組合
資金使途補助金等事業執行のための設備資金および運転資金
融資限度額1億円 ただし、補助金・助成金の交付決定額の3分の2以内
利率(年)固定1.7%以内~2.2%以内又は変動
返済期間10年以内
ただし、補助金・助成金の交付決定から助成対象期間終了日の属する月の6か月後の月末までの期間とする。
担保原則、不要(但し、代表者については、連帯保証が必要)

融資を受けやすくする5つのポイント

個人事業主は以上のような融資を利用することができますが、誰でも無地要件で融資を利用できるわけではありません。金融機関から希望額の融資を受けるためには、以下の点に注意する必要があります。

資金使途が明確となっていること

融資を受ける際には、「融資を何に使うのか?」という、資金使途が重要となります。

資金使途には、「設備資金」と「運転資金」の2つがありますが、金融機関ではこの資金使途から「何のために融資を受けるのか?」、「使い道は妥当か?」、「返済に問題はないか?」等を判断して融資をするかどうかを決定します。

そのため、資金使途が「赤字資金の穴埋め」や「生活資金の補充」のような後ろ向きなものであったり、事業に関係ないものである場合には融資は行いません。

また、その内容が事業の規模や内容から過大・不必要と判断される場合にも、融資の対象とはならないため、十分な融資を受けるためには、その必要性や妥当性を見積書や事業計画書などにより納得してもらう必要があります。

返済が見込める計画となっていること

融資の審査では、「融資の返済が見込めるのか?」ということが結果に大きく影響します。

返済に必要な利益を返済キャッシュフローといいますが、これは次の式で算定されます。

返済キャッシュフロー 「営業利益+減価償却費」

そのため、この営業キャッシュフローが獲得できない計画となっている場合や、計画の内容に実現性が低いと判断される場合には、希望額の融資を獲得することはできません。

したがって、その計画が実現可能性なものであり、数字や理屈的にも根拠のあるものとなっている必要があります。

税金、家賃、ローン等の滞納がないこと

政府系・民間を問わず、申込人に税金などの滞納がある場合は、金融機関からの融資は難しくなります。

また、税金だけでなく、家賃・光熱費・各種ローン(住宅ローン含む)について、過去6ヶ月~1年の間に支払いの遅れがある場合も同様となります。

なお、税金の未納については納税証明書の記載で判明しますが、それ以外の家賃や公共料金等の支払い状況については、家賃の支払帳や引き落し口座の履歴、支払い済みの領収書などにより確認が行われます。

ただし、支払いに遅れがあってもその日数が短い場合や、税務署と分割納税の協議ができている場合などは、問題とならないこともあります。

事業計画を作成・提出すること

通常、創業融資以外の融資については、借入れは融資申込書を提出して行いますが、もし、融資の可能性を高めたいのであれば、借入れや事業の内容を事業計画書としてまとめて提出することをおすすめします。

借入申込証は、借入れの内容を記載したものですが、A4用紙1枚のため、「なぜ借入れが必要となったのか?」や「具体的にどのように返済するのか?」などを書くスペースがありません。そのため、融資の際の審査も最近の財務内容を中心とした、表面的なものとなりがちとなります。

しかし、金融機関が確認したいと考えていることや、今後の計画を事業計画書にまとめて説明すれば、さらに細かな内容が伝わるため、融資が出る確率が大きくなります。

たとえば、創業2年目で売上げがほとんど立っておらず債務超過の会社でも、事業計画書によりその後の売上げ見込みや販売方法などを丁寧に説明し、満額の融資を獲得したというケースもあります。

なお、事業計画書には、以下のような項目をまとめておくとよいでしょう。

・現在の財務状況(過去3年間分の決算書の数字をまとめたもの)

・最近の業況や現在に至るまでの経緯

・具体的な使い道

 ※例えば、運転資金であれば、次の入金までの〇ヶ月分の仕入代〇円、人件費〇円、家賃〇円、その他経費〇円など

・返済利益が獲得できる根拠や販売の戦略

また、計画の内容については「絵に描いた餅」と思われないように、できるだけ客観的に見て「なるほど」と納得してもらえるものとする必要があります。

代表者や役員の信用情報に問題かないこと

融資の審査では代表者の個人情報に問題がないかの確認がされますが、もし、ローンの延滞などにより信用情報機関に事故情報が登録されている場合には、融資は難しくなります。

また、信用情報のチェックは、代表者だけでなく、他に取締役や監査役がいる場合には、これらの方についても行われます。そのため、代表者に問題がなくとも、他の役員等に個人情報上の問題がないかどうかについても事前に確認しておく必要があります。

個人事業でもさらに融資額を増やせるテクニック

個人事業主の方の中には、「融資に失敗したらどうしよう?」や「申込額を減額されるのでは?」など、不安に思われる方もいるかと思います。たしかに、融資の申込みは、一度失敗してしまうとその後しばらく融資が受けにくくなってしまうため、資金繰りが厳しいときほど確実に行うことが必要となります。

そのような場合に、試していただきたいのが「日本政策金融公庫と制度融資(信用保証協会付融資)を同時に申し込む」という方法です。

日本政策金融公庫と制度融資では、いずれも事業融資を取り扱っていますが、これらの金融機関は別物であるため、それぞれについて融資を申し込むことができます。

この方法を活用することで、次のようなメリットを得ることができます。

・一方の金融機関の融資に失敗した場合でも、もう一方の融資で成功できる可能性がある。また融資が減額されて希望額に不足する場合でも、不足分をカバーすることができる。

・両方の金融機関から融資が出た場合には、総額で当初の希望額以上の借入れをすることが可能となる。

ただし、日本政策金融公庫と制度融資の併用をする場合には、次の点に注意する必要があります。

①融資の申込みは同時に行う

融資の併用をする際には、「2つの融資の申込みは同時に行う」ということがポイントとなります。

なぜなら、先にどちらかの融資を申し込んで結果を見てから他方に申し込んだのでは、すべての結果が出るまで時間がかかりすぎるからです。

通常の融資の場合には、申込みから結果が出るまで約2~3週間の時間がかかります。しかしこれが創業融資では約1ヶ月の時間がかかるため、トータルではかなりの時間がかかってしまいます。

また、仮に、日本政策金融公庫から融資が出た後に、制度融資を申し込んだ場合、信用保証協会側ではすでに日本政策金融公庫から借入れをしている企業として評価します。

そのため、本来、単独で制度融資に申し込んだならば満額の融資が出たとしても、この場合には借入れがある会社というマイナス評価となるため、満額の融資が出る可能性は低くなってしまいます。

けれど、双方の金融機関へ同時に申込んだ場合には、融資の結果もほぼ同時に出ることから、両方から満額の融資が出る可能性が高くなります。

②設備資金の申込みは、どちらか一方の金融機関だけにする

通常、融資の申込みでは、設備資金と運転資金の両方を申し込むケースが少なくありませんが、このような場合には設備資金の申込みはどちらか一方の金融機関に対して行うことをおすすめします。

なぜなら、一つの設備に対して2ヶ所から融資が出るというのは、金融機関に対する虚偽申請となりかねないからです。運転資金については、内容が家賃や人件費など形に残らないものがほとんどですが、設備資金については見積もりなどで設備を指定して申し込む必要があります。

しかし、一つの設備の購入のために2つの金融機関から融資を受けたのでは、資金が二重となってしまいます。また、金融機関によっては、設備資金の融資をすぐに業者へ振り込んでしまうこともあるため、その場合には、最悪、同じ設備の代金が重複して業者に振り込まれてしまうこととなります。

したがって、融資の併用をする場合には、一方の金融機関への申込みについては、設備資金と運転資金の両方を申し込むにしても、他方の金融機関については運転資金のみを申し込むといった対応をする必要があります。

まとめ

個人事業主であっても、法人と同じように融資を受けることは可能ですが、希望額の融資を受けるためには、正しい資金計画を立て、金融機関に正しくその内容を伝えるということが必要となります。

そのためには、「妥当な資金使途で申し込む」、「返済原資を明確にする」などが重要となりますが、とくに事業計画書の提出は効果が高いといえます。

また、融資額や融資の可能性に不安がある場合には、日本政策金融公庫と制度融資の両方に申し込むとより大きな額の融資を受けやすくなりますが、その際には「同時のタイミングで申込む」、「設備資金については一方だけに申し込む」といったことにも注意する必要があります。