HOME コラム > 所得税が減税される!所得控除とは? ①人的控除

コラム

所得税が減税される!所得控除とは? ①人的控除

所得税の算出において、納税者自身や家族の状況に応じて、税額を少なくすることが出来る控除があります。

この控除の適用は、家族構成が例年変わらなければ、例年同じというものではなく、納税者自身や家族の収入、年齢等によって、適用の可否が異なるため、申告の都度確認をする必要があります。

今回は人的控除について、適用要件や控除額を詳しくご紹介致します。年末調整や確定申告に取り組む前に、しっかり把握をしておきましょう。

所得控除とは

所得控除とは、所得税の納税額の計算をする際に、各納税者の個人的な事情を加味するために、一定の額を合計所得金額から差し引くことが認められているものです。

所得控除は15種類に分類され、その15種類は人的控除と物的控除に大別をすることが出来ます。今回は人的控除についてご紹介致します。

人的控除とは

人的控除とは、納税者本人や家族の状況を加味するための控除です。人的控除には、下記に挙げるものがあります。

基礎控除

基礎控除は、令和元年分以前は、納税者本人の合計所得金額に関わらず、一律38万円である誰しもが受けられる基礎的な控除でしたが、令和元年分以後は納税者本人の合計所得金額に応じて控除金額が下記のように定められています。

・納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下…48万円

・納税者本人の合計所得金額が2,400万円超2,450万円以下…32万円

・納税者本人の合計所得金額が2,450万円超2,500万円以下…16万円

・納税者本人の合計所得金額が2,500万円超…0円

配偶者控除

配偶者控除は、所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に一定の金額の所得控除が受けられるものです。

控除対象配偶者とは

控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で、下記の要件の全てに当てはまる人であり、かつ控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下である人が、配偶者控除を受けることが出来ます。

・民法の規定による配偶者であること

・納税者と生計を一にしていること

・年間の合計所得金額が48万円以下であること

・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと

配偶者控除の控除額

控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額、及び控除対象配偶者の年齢により下記のように定められています。その年の12月31日時点で70歳以上の配偶者を、老人控除対象配偶者といいます。

①控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合

・一般の控除対象配偶者…38万円

・老人控除対象配偶者…48万円

②控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円超950万円以下の場合

・一般の控除対象配偶者…26万円

・老人控除対象配偶者…32万円

③控除を受ける納税者本人の合計所得金額が950万円超1,000万円以下の場合

・一般の控除対象配偶者…13万円

・老人控除対象配偶者…16万円

配偶者特別控除

配偶者特別控除は、所得税法上の控除対象配偶者がいる場合で、年間の合計所得金額が48万円を超えるために配偶者控除が受けられない場合に、配偶者の所得に応じて一定の金額の所得控除が受けられるものです。

配偶者控除と配偶者特別控除は重複して受けることが出来ません。また、配偶者特別控除が受けられる所得には制限があり、年間の配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下である必要があります。

配偶者特別控除の控除額

控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額、及び配偶者の所得により下記のように定められています。

①控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合

・配偶者の合計所得金額が48万円超95万円以下…38万円

・配偶者の合計所得金額が95万円超100万円以下…36万円

・配偶者の合計所得金額が100万円超105万円以下…31万円

・配偶者の合計所得金額が105万円超110万円以下…26万円

・配偶者の合計所得金額が110万円超115万円以下…21万円

・配偶者の合計所得金額が115万円超120万円以下…16万円

・配偶者の合計所得金額が120万円超125万円以下…11万円

・配偶者の合計所得金額が125万円超130万円以下…6万円

・配偶者の合計所得金額が130万円超133万円以下…3万円

②控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円超950万円以下の場合

・配偶者の合計所得金額が48万円超95万円以下…26万円

・配偶者の合計所得金額が95万円超100万円以下…24万円

・配偶者の合計所得金額が100万円超105万円以下…21万円

・配偶者の合計所得金額が105万円超110万円以下…18万円

・配偶者の合計所得金額が110万円超115万円以下…14万円

・配偶者の合計所得金額が115万円超120万円以下…11万円

・配偶者の合計所得金額が120万円超125万円以下…8万円

・配偶者の合計所得金額が125万円超130万円以下…4万円

・配偶者の合計所得金額が130万円超133万円以下…2万円

③控除を受ける納税者本人の合計所得金額が950万円超1,000万円以下の場合

・配偶者の合計所得金額が48万円超95万円以下…13万円

・配偶者の合計所得金額が95万円超100万円以下…12万円

・配偶者の合計所得金額が100万円超105万円以下…11万円

・配偶者の合計所得金額が105万円超110万円以下…9万円

・配偶者の合計所得金額が110万円超115万円以下…7万円

・配偶者の合計所得金額が115万円超120万円以下…6万円

・配偶者の合計所得金額が120万円超125万円以下…4万円

・配偶者の合計所得金額が125万円超130万円以下…2万円

・配偶者の合計所得金額が130万円超133万円以下…1万円

扶養控除

扶養控除は、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられるものです。

控除対象扶養親族とは

扶養親族とは、その年の12月31日時点で、下記の要件の全てに当てはまる人であり、このうち控除対象扶養親族とは、その年12月31日時点の年齢が16歳以上の人をいいます。

・配偶者以外の親族または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること

・納税者と生計を一にしていること

・年間の合計所得金額が48万円以下であること

・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと

扶養控除の控除額

控除対象扶養親族は、更にその年12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満の人を特定扶養親族、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人を老人扶養親族、老人扶養親族のうち、納税者や配偶者の直系尊属で、納税者や配偶者との同居を常としている人を同居老親等に区分がされ、それぞれ控除額が下記のように定められています。

・一般の控除対象扶養親族…38万円

・特定扶養親族…63万円

・老人扶養親族のうち同居老親等以外…48万円

・老人扶養親族のうち同居老親等…58万円

障害者控除

障害者控除は、納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の所得控除が受けられるものです。

所得税法上の障害者とは

障害者控除の対象となるのは、下記のいずれかに当てはまる人であり、その内容により障害者と特別障害者に区分されます。

・精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人…特別障害者に該当

・児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人…障害者に該当、このうち重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者に該当

・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人…障害者に該当、このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者に該当

・身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人…障害者に該当、このうち障害の程度が1級または2級と記載されている人は、特別障害者に該当

・精神または身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度を障害者として市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人…障害者に該当、このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長、特別区区長や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者に該当

・戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人…障害者に該当、このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は、特別障害者に該当

・原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人…特別障害者に該当

・その年の12月31日の時点で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人…特別障害者に該当

障害者控除の控除額

障害者控除の控除額は、障害者、特別障害者、同居特別障害者の区分によって下記のように定められています。同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族で、納税者自身、配偶者、その納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている人です。

・障害者…27万円

・特別障害者…40万円

・同居特別障害者…75万円

寡婦(寡夫)控除

寡婦(寡夫)控除は、納税者自身が寡婦である場合に、一定の金額の所得控除を受けられるものです。

寡婦控除は納税者自身が女性の場合、寡夫控除は納税者自身が男性の場合をいいますが、寡夫控除は令和2年分よりひとり親控除となり、現在において寡夫控除はありません。

寡婦とは

寡婦とは、原則としてその年の12月31日時点で、ひとり親に該当せず、下記のいずれかに当てはまる人です。納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象となりません。

・夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人

・夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

寡婦控除の控除額

寡婦控除は一律27万円です。令和元年以前には特別の寡婦の区分により35万円の控除がありましたが、令和2年分以後は、特別の寡婦の区分はありません。

勤労学生控除

勤労学生控除は、納税者自身が勤労学生である場合に、一定の金額の所得控除を受けられるものです。

勤労学生とは

勤労学生とは、その年の12月31日の現況で、下記の要件の全てに当てはまる人です。

・給与所得等の勤労による所得があること

・合計所得金額が75万円以下で、かつ上記の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること

・特定の学校の学生、生徒であること

特定の学校とは

特定の学校とは、下記のいずれかのことをいいます。

・学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校等

・国、地方公共団体、私立学校法の第3条に規定する学校法人、同法第64条第4項に規定する法人、これらに準ずる一定の者により設置された専修学校または各種学校のうち一定の課程を履修させるもの

・職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの

一定の者により設置された学校とは

特定の学校の要件に、一定の者により設置された学校が含まれますが、この一定の者とは、下記のいずれかの者をいいます。

・独立行政法人国立病院機構、独立行政法人労働者健康安全機構、日本赤十字社、商工会議所、健康保険組合、健康保険組合連合会、国民健康保険団体連合会、国家公務員共済組合連合会、社会福祉法人、宗教法人、一般社団法人および一般財団法人ならびに農業協同組合法第10条第1項第11号に掲げる事業を行う農業協同組合連合会および医療法人

・学校教育法第124条に規定する専修学校または同法第134条第1項に規定する各種学校のうち、教育水準を維持するための教員の数その他の文部科学大臣が定める基準を満たすものを設置する者

一定の課程を履修させるもの

特定の学校の要件に、一定の過程を履修させるものが含まれますが、この一定の過程とは、下記のいずれかの内容をいいます。

・専修学校の高等課程および専門課程においては、職業に必要な技術の教授をし、その修業期間が一年以上、その年間の授業時間数が800時間以上であり、その授業が年2回を超えない一定の時期に開始され、かつ、その終期が明確に定められていること

・上記以外の課程においては、職業に必要な技術の教授をし、その修業期間が2年以上であり、その年間の授業時間数が680時間以上であり、その授業が年2回を超えない一定の時期に開始され、かつ、その終期が明確に定められていること

ひとり親控除

ひとり親控除は、納税者がひとり親である場合に、一定の金額の所得控除を受けることが出来るものです。

ひとり親とは

ひとり親とは、原則としてその年の12月31日時点で、婚姻をしていないことまたは配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、下記の要件に全てに当てはまる人です。

・その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと

・生計を一にする子がいること

・合計所得金額が500万円以下であること

ひとり親控除の控除額

ひとり親控除の控除額は、一律35万円です。ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用されています。

まとめ

このように、人的控除には様々な種類のものがあり、それぞれの要件に納税者自身や扶養親族が該当するほど、控除が適用され納めるべき所得税が少なくなります。

年末調整や確定申告では、これらの人的控除の適用の確認が必須となりますので、しっかりと毎年確認をしましょう。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。