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コラム

経営者のための退職金制度とは?小規模企業共済制度で節税を実現

経営者が会社経営から退く際は、自ら退職金を準備する必要があります。しかし業務に追われて、退職金の準備にまで手が回らないことも多いのではないでしょうか。そこで活用したいのが、小規模企業共済制度です。制度の内容と、利用方法について説明します。

掛け金は500円単位で調整でき課税対象所得からの全額控除も

小規模企業の経営者や役員のなかには「会社運営のために資金を残しておきたい」「適切な退職金の額や準備方法を知らない」といった理由から、自らの退職金を会社で準備していないケースが少なくありません。しかし、経営から退いた後の生活を考えると、従業員と同様に退職金を受け取っておく必要があります。従業員には会社の規定に沿った退職金が支払われますが、経営者は会社の資金状況を踏まえて自らが退職金の額を決め、積み立てていくことがあります。

退職金の積立にはさまざまな方法があります。そのなかでも経営者や役員自身が個人で積立をする『小規模企業共済』は高い節税効果があるため、全国で約153万人の経営者や役員、個人事業主が加入しています。

小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主に向けた退職金制度で、国の機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。廃業や退任した経営者らの生活の安定や事業の再建などを支援する目的で1965年に誕生しました。

この制度の大きな特徴は、高い節税効果です。小規模企業共済は確定申告の際に、掛け金の全額を課税対象所得から控除することができます。掛け金は500円単位で、最少額の千円から上限額の7万円まで自由に設定することが可能です。たとえば毎月最大額の7万円の掛け金を積み立てるように設定すれば、年間で84万円を課税対象所得から控除できることになります。

また、この掛け金は小規模企業共済への加入後も自由に増やしたり減らしたりできます。最初は少額の掛け金からスタートして、徐々に掛け金を増やしていったり、逆に、資金繰りが苦しければ、掛け金を減らしたりが可能です。大切なのは、負担にならない金額の掛け金を毎月コツコツ積み立てていくことです。

加入してから一定期間を超えると掛け金が増えて戻ってくる

積み立てた共済金に満額や満期などはなく、経営者や役員の退任時や、会社の廃業時等に受け取ることになります。共済金の受け取りは、一括か分割、もしくは一括と分割の併用を選ぶことができます。一括の場合は退職所得ですが、分割の場合は公的年金等の雑所得扱いとなるため、税金を抑えることができます。

さらに掛け金は運用されるため、一定年数を超えると共済金(一定の請求事由を除く)がこれまでの掛け金の合計を超え、掛金納付月数と共済事由に応じた共済金を受け取ることが出来ます。ただし、小規模企業共済は経営者や役員の退職に備えた共済制度なので、途中で解約してしまうと元本割れを起こして、掛け金の全額が戻ってこない場合があるため、注意が必要です。

また、加入していれば、いつでも低金利の貸付制度を利用できるのもメリットの一つです。新規事業展開時や事業承継時等、資金繰りが困難なときなど、必要に応じて掛け金の範囲内で、借り入れを行なうことができます。

税負担が軽くなり、貸付制度も利用できる小規模企業共済は、後ろ盾のない中小企業の経営者等や個人事業主にとって心強い制度です。経営者や役員で退職金の準備をしていないのであれば、加入を検討してみてはいかがでしょうか。