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コラム

基準や傾向が存在する?しない?税務調査の対象に選ばれやすい法人とは

税務調査とは、税務署などが納税者の申告内容を確認し、誤りがあれば是正を求める調査のことです。事業に関する主な調査対象としては法人および個人事業主ですが、毎年税務調査が行われる法人もあれば、一度も調査されない法人もあります。今回は、調査対象になる法人の特徴を説明します。

コロナの影響で調査件数は減少も追徴税額は前年比で2.5倍に

国税庁が2021年11月に発表した『法人税等の調査事績』によれば、2020年の事務年度における税務調査の実地件数は、約2万5,000件でした。新型コロナウイルス感染症の影響により、約7万6,000件の調査があった2019年からマイナス32.7%と大幅に減少しています。しかし、調査1件あたりの追徴税額は前年比で約2.5倍に増加しており、悪質な不正計算が想定される法人や大口の法人など、調査必要度の高い法人に絞って税務調査が行われたことが伺えます。

また、申告内容に誤りが想定される納税者に対して行われる『簡易な接触』は、約6万8,000件と、前年比で約1.5倍に増えています。簡易な接触とは、書面や電話、来署依頼による面接などを指します。税務署は、この簡易な接触により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請します。

緊急事態宣言の発令下では、直接の対応が必要となる税務調査は目に見えて減少しましたが、税務調査が行われなかったわけではありません。そのため、今後コロナが終息するにしたがって税務調査の実施件数も増えていくことが予想されます。

国税庁は、税務調査の選定対象について明確な基準を公表していませんが、普通法人でおおよそ4~5年に一度は税務調査が行われるといわれています。しかし、過去に一度も調査が入っていない法人もあります。では、調査対象になる基準はどこにあるのでしょうか。

一般的に、前年に比べて売上が急激に増加している会社は税務調査の対象に選ばれる傾向があります。売上が伸びれば、納めるべき税金もそれだけ増えることになるため、税務署も実態を把握しておかなければなりません。そこで、申告書の内容だけではわからない実態を知るために調査に入ることになります。

税務署が特に目を光らせる勘定科目の変動や過去の申告漏れ

赤字の会社は税務調査の対象にならないと考えている経営者は少なくありませんが、赤字でも税務調査が入る場合があります。本来は黒字であるにも関わらず、所得を操作して赤字にしている悪質な会社もあるため、本当に適正に申告が行われているのかを確認する必要があるからです。そもそも申告を行っている法人の7割は赤字なので、赤字だからといって、税務調査を免れることができるわけではありません。

また前年と比べて、勘定科目に大きな変動がある会社も、経費計上が正しく行われていない可能性があるため、税務調査の対象になることがあります。逆に、外部の税理士などが税務会計に携わっている会社は、適正に会計処理が行われているとみなされ、対象から外されるケースもあります。

一方、前年と比べて売上や勘定科目に大きな変化がなくても、不動産売却や相続関連で個人の収入が増えている場合は、個人に対する調査と同時に、法人にも調査に入ることがあります。

さらに、過去に申告漏れを指摘された会社などは、調査を受けやすく、中には毎年のように調査が行われる会社もあります。税務署は諸問題が解決されているのかどうかを確認するために調査を行うので、前年に調査が入ったからといって、調査が行われないわけではありません。

このように、調査の対象になりやすい条件はさまざまです。また、これらの条件に該当しない場合でも、税務調査が行われる可能性は十分にあります。

税務調査は事業を営んでいるすべての法人と個人が対象になるため、いつ調査に入られてもよいように、適正な申告を行った上で、税理士に相談するなどの事前対策を講じておきましょう。