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コラム

赤字決算で納付する法人税がなくても確定申告をしたほうがいい理由

小規模な法人の場合、赤字になると無申告のままでいるケースがありますが、基本的には赤字・黒字に関わらず、申告は必要だと考えたほうがよいでしょう。特に『青色決算法人』の場合、赤字決算でも確定申告をするメリットがあります。

赤字の場合は無税になる税金と赤字でも払うべき税金がある

赤字の場合は無税になる税金と赤字でも払うべき税金がある

最初に、法人が納めるべき税金は国税と地方税の2種類があります。以下で確認しましょう。

【国税】

  • 法人税:所得に課せられ、赤字の場合は課税なし。
  • 地方法人:所得に課せられ、赤字の場合は課税なし。名称に『地方』とあるが国税。
  • 消費税(課税事業者のみ)商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課税され、消費者が負担し事業者が納付。

【地方税】

  • 法人住民税:『都道府県民税』『市町村住民税』の総称。東京23区のみ『都民税』として一本化。
    『法人税割+均等割』からなり、赤字では均等割のみ。
  • 法人事業税:所得に課せられ、赤字の場合は課税なし。ただし、資本金が1億円を超える法人、電気・ガス供給業などは赤字であっても納税する必要があります。
  • 地方消費税(課税事業者のみ)消費税と一緒に税務署へ納付。

青色申告法人ならば受けられる赤字の確定申告をするメリット

規模の大小に関わらず、法人の多くが『青色決算法人』の承認申請のもと申告を行っています。

その理由の一つに、赤字決算の場合に受けられる『欠損金の繰越控除』と『欠損金の繰戻し還付』があります。

欠損金の繰越控除とは、青色決算法人が赤字の確定申告書をした場合、翌年度以降10年間に渡って、赤字の金額がゼロになるまで黒字の金額から控除できる制度です。(2018年4月1日前に開始した事業年度の欠損金額の繰越期間は9年)

たとえば、2023年3月期決算が200万円の赤字であり、2024年3月期の決算が150万円の黒字だった場合、欠損金の繰越控除で150万円の利益は200万円の赤字と相殺され、2024年3月期の法人税はゼロ、2025年3月期には50万円の欠損金が繰越されます。

欠損金の繰戻し還付とは、青色決算法人が前期は黒字だったものの通期では赤字となった場合、前期に納税していた法人税の還付を受けることができる制度です。計算式は次の通りです。

前期法人税額×(当期欠損金額/前期所得金額)

この計算式により還付しきれなかった欠損金は、翌期以降、欠損金の繰越控除の適用を受けます。

たとえば、前期の黒字が200万円、通期では500万円の赤字だった場合、200万円は当期の繰戻し還付の対象となります。残りの欠損金300万円は繰越控除され10年に渡って所得から控除されます。

ただし、欠損金の繰戻し還付の対象は国税のみで地方税は還付されません。そのため、法人事業税・住民税の計算においては、欠損金を翌期以降に繰り越すための手続きが必要です。

このように青色申告法人にとって、赤字の確定申告は税制上のメリットがあります。手間はかかりますが、申告を検討してみてはいかがでしょうか。