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グループ通算制度とは?メリット・デメリット

グループ通算制度とは?メリット・デメリット

写真:電卓

令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されているグループ通算制度。この制度についてしっかり把握をしておかないと、思わぬ法人税額の納付をしなくてはならない事態となるかもしれません。

今回は、グループ通算制度について、メリット・デメリットと共にご紹介を致します。

グループ通算制度とは

写真:ビル

グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行い、その中で、損益通算等の調整を行う制度です。

これまでの連結納税制度の見直しという位置づけで導入され、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。

適用法人

グループ通算制度を適用することの出来る親法人、子法人についてご紹介致します。

親法人

この制度において、通算親法人となることが出来る法人は、内国法人である普通法人又は協同組合等に限りますが、下記の法人は通算親法人となることが出来ません。

①清算中の法人

➁普通法人又は協同組合等との間にその普通法人又は協同組合等による完全支配関係がある法人

③通算制度の取りやめの承認を受けた法人でその承認を受けた日の属する事業年度終了の日の翌日から同日以後5年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していない法人

④青色申告の承認の取消しの通知を受けた法人でその通知を受けた日から同日以後5年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していない法人

⑤青色申告の取りやめの届出書を提出した法人でその届出書を提出した日から同日以後1年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していない法人

⑥投資法人

⑦特定目的会社

⑧受託法人

子法人

この制度において、通算子法人となることが出来る法人は、通算親法人となる法人又は通算親法人による完全支配関係がある内国法人です。

適用方法

グループ通算制度の適用のためには、申請を行い、承認を受ける必要があります

①申請

親法人及び子法人が、通算承認を受けようとする場合には、原則として、その親法人のグループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の3ヶ月前の日までに、その親法人及び子法人の全ての連名で、承認申請書をその親法人の納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出する必要があります。

通算承認とは、グループ通算制度の適用に係る国税庁長官の承認をいいます。

既に連結納税制度の承認を受けている法人については、原則として、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度の開始の日において、通算承認があったものとみなされ、同日からその効力が生じます。また、その法人が青色申告の承認を受けていない場合には、同日において青色申告の承認があったものとみなされます。

連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までにグループ通算制度へ移行しない旨の届出書を税務署長に提出した場合には、その連結親法人及び当該前日においてその連結親法人との間に連結完全支配関係がある連結子法人について、通算制度を適用しない法人となります。

②承認

上記のグループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の前日までにその申請についての通算承認又は却下の処分がなかった場合は、その親法人及び子法人の全てについて、その開始の日においてその通算承認があったものとみなされ、同日からその効力が生じます。

③申請の却下

国税庁長官は、承認申請書の提出があった場合において、下記のいずれかに該当する事実がある場合は、その申請を却下することが出来ます。

  • 通算予定法人のいずれかがその申請を行っていないこと。通算予定法人とは、グループ通算制度の適用を受けようとする親法人又は子法人をいいます。
  • その申請を行っている法人に通算予定法人以外の法人が含まれていること。
  • その申請を行っている通算予定法人について、その備え付ける帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記載し、又は記録していることその他不実の記載又は記録があると認められる相当の理由があること等の一定の事実のいずれかに該当すること。

④グループ通算制度への加入

原則として、子法人が通算親法人との間にその通算親法人による完全支配関係を有することとなった場合には、その子法人については、その完全支配関係を有することとなった日において通算承認があったものとみなされ、同日からその効力が生じます。

加入時期の特例の適用を受ける場合には、加入日の前日の属する特例決算期間の末日の翌日において通算承認があったものとみなされ、同日からその効力が生じます。

⑤グループ通算制度の取りやめ

通算法人は、やむを得ない事情がある場合は、国税庁長官の承認を受けてグループ通算制度の適用を受けることをやめることが出来ます。

この取りやめの承認を受けた場合には、その承認を受けた日の属する事業年度終了の日の翌日から、通算承認の効力は失われます。

また、通算親法人の解散等の一定の事実が生じた場合のほか、青色申告の承認の取消しの通知を受けた場合においても、通算承認の効力は失われます。

なお、通算法人は、自ら青色申告を取りやめることは出来ません。

グループ通算制度における確定申告

グループ通算制度においては、その適用を受ける通算グループ内の各通算法人を納税単位として、その各通算法人が個別に法人税額の計算及び申告を行います。

申告期限は、通算制度を適用しない法人と同様、原則として各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に、確定申告書を提出する必要があります。

ただし、確定申告書の提出期限の延長の特例を受ける場合には、全ての通算法人につきその期限が原則として2ヶ月間延長されます。

また、通算法人は、他の通算法人の納付すべき法人税につき、連帯納付の責任を負います。

グループ通算制度のメリット

写真:会議のイメージ

グループ通算制度を適用することでどのようなメリットが生じるのかについてご紹介致します。

①グループ間の損益通算等による節税

グループ通算制度を適用した場合、損益通算及び欠損金の繰越の適用が、グループ間で行えるため、グループ内の利益の生じている会社が単体で申告を行うことよりも、納めるべき法人税を減額することが出来、グループ通算制度を適用する最大のメリットであるといえます。

損益通算

損益通算とは、法人税が課税される所得の黒字と赤字を相殺させることをいいます。

所得事業年度の損益通算による損金算入

通算法人の所得事業年度終了の日である基準日において、その通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人の基準日に終了する事業年度において通算前欠損金額が生ずる場合には、その通算法人の所得事業年度の通算対象欠損金額は、その所得事業年度の損金の額に算入されます。

通算グループ内の欠損法人の欠損金額の合計額が、所得法人の所得の金額の比で配分され、その配分された通算対象欠損金額が所得法人の損金の額に算入されます。

欠損事業年度の損益通算による益金算入

通算法人の欠損事業年度終了の日である基準日において、その通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人の基準日に終了する事業年度において通算前所得金額が生ずる場合には、その通算法人の欠損事業年度の通算対象所得金額は、その欠損事業年度の益金の額に算入されます。

上記と同様に、損金算入された金額の合計額と同額の所得の金額が、欠損法人の欠損金額の比で配分され、その配分された通算対象所得金額が欠損法人の益金の額に算入されます。

損益通算の遮断措置

上記の場合において、通算事業年度の通算前所得金額又は通算前欠損金額が当初申告額と異なる場合は、それぞれの当初申告額がその通算事業年度の通算前所得金額又は通算前欠損金額とみなされます。

通算グループ内の一法人に修更正事由が生じた場合には、損益通算に用いる通算前所得金額及び通算前欠損金額を当初申告額に固定することにより、原則として、その修更正事由が生じた通算法人以外の他の通算法人への影響を遮断し、その修更正事由が生じた通算法人の申告のみが是正されます。

欠損金の繰越

欠損金の繰越しとは、過年度の事業年度における赤字を、黒字が生じた年度の所得と相殺させることをいいます。グループ通算制度においては、下記の一定の調整を行う必要があります。

欠損金の繰越控除額の計算

通算法人の適用事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額は、特定欠損金額と非特定欠損金額の合計額とされます。

非特定欠損金額は、通算グループ全体の非特定欠損金額の合計額が、過年度において損金算入された欠損金額及び特定欠損金額を控除した後の損金算入限度額の比で配分されます。

各通算法人の欠損金額の損金算入限度額等の計算は、特定欠損金額は各通算法人の損金算入限度額の合計額を各通算法人の特定欠損金額のうち欠損控除前所得金額に達するまでの金額の比で配分した金額、非特定欠損金額は各通算法人の特定欠損金額の繰越控除後の損金算入限度額の合計額を各通算法人の配分後の非特定欠損金額の比で配分した金額が限度となります。

欠損金の通算の遮断措置

各通算法人の十年内事業年度の欠損金額の配分を行った場合において、通算法人の適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度の損金算入限度額又は過年度の欠損金額等が当初申告額と異なる場合は、それらの当初申告額が当該他の事業年度の損金算入限度額又は過年度の欠損金額等とみなされます。

通算グループ内の他の通算法人に修更正事由が生じた場合には、欠損金の通算に用いる金額を当初申告額に固定することにより、その通算法人への影響が遮断されます。

また、通算法人の適用事業年度の損金算入限度額又は過年度の欠損金額等が当初申告額と異なる場合は、欠損金額及び損金算入限度額で当初の期限内申告において通算グループ内の他の通算法人との間で配分し又は配分された金額を固定する調整等をした上で、その通算法人のみで欠損金額の損金算入額等が再計算されます。

②税額控除額の限度額の増加

税額控除額の限度額は、法人税額に対して一定の割合を限度として適用を認めているものがあります。グループ通算制度を適用した場合、グループ全体の法人税額に対しての一定の割合となるため、グループ内の会社が単体で申告を行うことよりも税額控除額を多く算出することが出来ます。税額控除額を多く算出することが出来ることも、節税としてグループ通算制度を適用するメリットとなります。

例えば、一般試験研究費の額に係る税額控除の計算は、通算グループを一体として計算した税額控除限度額と控除上限額とのうちいずれか少ない金額を、通算法人の調整前法人税額の比で按分をすることにより行います。

グループ通算制度のデメリット

写真:電卓

グループ通算制度を適用することで損益通算等を行うことで節税が出来る一方で、グループ加入前と比較をするとデメリットも存在します。どのようなデメリットが生じるのかについてご紹介致します。

①親会社の欠損金の上限

グループ通算制度を適用することで損益通算が行えるとご紹介致しましたが、グループ加入前の繰越欠損金は、自己の所得を限度にしか使用することが出来ません。

グループ通算制度の前身となる連結納税制度では、親会社の連結開始前の繰越欠損金は、連結納税適用事業年度以後に納税連結子法人の課税所得を含めた連結所得と相殺することが出来ており、親会社の繰越欠損金を利用した節税が連結納税制度を採用する動機となっている法人も多く存在しました。

しかし、グループ通算制度ではその方法による節税が見込めないことが、グループ通算制度のデメリットのひとつであるといえます。

②中小法人が適用することが出来る特例が利用することが出来ない

中小法人には、中小法人のみが適用することが出来る、法人税の軽減税率、交際費等の損金不算入制度に関する特例等があります。

グループ通算制度においては、通算グループ内のいずれかの法人が中小法人、中小企業者等に該当しない場合には、通算グループ内のすべての法人が中小法人等の優遇措置は適用されません。

よって、グループ内の会社が単体で申告を行っていた場合には適用することが出来る優遇措置が、グループに加入をしたことでその措置を受けることが出来なくなる場合があり、デメリットとなります。

③事務手続きの負担の増加

グループ通算制度の適用においては、ご紹介致しました通り、申請を行い、承認を受ける必要があります。従前と変わらず単体の法人が確定申告を行うことよりも、適用のためには事前準備としての事務手続きが必要です。

また、通算法人は、事業年度開始の時における資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるか否かにかかわらず、e-Taxを使用する方法により納税申告書を提出する必要があります。

これに際し、通算親法人が、通算子法人の法人税の申告に関する事項の処理として、その通算親法人の電子署名をしてe-Taxにより提供した場合には、その通算子法人がe-Taxによる申告の規定により提出したものとみなされます。

まとめ

グループ通算制度は、連結納税制度を前身として令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。

グループ通算制度では連結納税制度のように、法人が単体で申告を行うことよりもメリットがある点もありますが、デメリットも上記でご紹介致しました通り存在します。

既に連結納税制度を適用している会社においては、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までにグループ通算制度へ移行しない旨の届出書を税務署長に提出を行わないと、原則として、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度の開始の日において、通算承認があったものとみなされますので、早急な判断が必要となります。

連結納税制度との比較はをご確認ください。

また、新たにグループに加入をしようと考える法人についても、単体で申告を行うこととグループ通算制度を利用することについて、十分な比較検討が必要となります。

グループ通算制度の仕組みや、納税額の試算等、ご不明な点がございましたら、弊社までお気軽にご相談くださいませ。