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自社株評価の方法とは?流れや具体的な計算方法も解説

事業承継は企業経営者にとってなかなか結論が出せない大きな問題の1つです。

非上場会社の株式は通常、株式市場が無いので、客観的な評価額が分かりにくいからです。

実際に相続を行わなければならない時が来るまで自社株評価がなされず、相続税の納税額が多額になってしまうというケースはよくあります。

まずは自社株評価を行うところから始めましょう。

この記事では自社株評価について詳しく説明します。

自社株評価とは

自社株評価とは市場に出回っていない自社の株式の価値を算定することをいいます。

非上場株式は上場企業の株式のように客観的な評価額が示されていないため、国税庁が定める基準で、非上場会社の分類に合わせた評価法を用いて評価を行います。

自社株評価の方法を知っておく必要性

自社株評価の方法を知っておく必要性はどういったものなのでしょうか。

自社株評価の方法を知っておくと良いのは、事業承継の際、必要となる納税額を把握し、以下2点について理解できるからです。

  • 株価対策の必要性を把握する
  • どの部分にどのような対策を講じることで効果が出るのかを把握する

事業承継に必要な税金には下記3つのパターンがあります。

  • 自社株の相続により発生する税金(自社株式の評価額に対する相続税)
  • 自社株式の生前贈与により発生する税金(自社株式の評価額に対する贈与税)
  • 自社株式の売却により発生する税金(自社株式の譲渡益に対する所得税)

自社株評価の金額を知っているからこそ、後継者が自社株を買い取ることが出来るのかについてのしっかりとした議論が可能です。

自社株評価の方法とは

自社株評価の方法には原則的評価方式と特例的評価方式という2種類があります。

原則的評価方式には評価方法が3種類あります。

つまり合計で4種類です。

会社を支配できる一族は原則的評価方式を、会社を支配することのできない一族は特例的評価方式で自社株評価を行います。

会社を支配できる一族のことを同族株主グループと言います。

一方、同族株主グループではない株主のことは少数株主グループと呼ばれます。

少数株主グループに属する株主は、株式を持っていたとしても、例えば、会社を解散させること等はできません。

少数株主グループと同族株主グループとでは、同じ株主でも、会社への影響度が全く異なります。

このことから少数株主グループに属する人が株式を取得する場合には、特例的評価方法である配当還元方式という方法で株式を評価することが認められています。

配当還元方式とは、大雑把に言えば、今後10年間で貰える配当金の総額を自社株の評価額とする評価方式です。

株主の判定

自社株評価においては、まず株主の判定を行います。

同族株主と同族株主以外を判定するためです。

同族株主とは、一人の株主及びその同族関係者の議決権総数が30%以上の場合におけるその株主と同族関係者のことです。

ただしもし議決権総数が50%以上のグループがあれば、その株主と同族関係者のことを指します。

株主の判定

会社の規模の判定は以下の通りに行われます。

  1. 従業員数が70人以上の会社→大会社
  2. 従業員数 70人未満 → 下記基準①もしくは②によるいずれか上の区分

①取引高基準(売上高)

卸売業小売・サービス業
その他
会社規模区分
30億円以上
20億円以上
15億円以上
大会社
7億円~30億円
5億円~20億円
4億円~15億円
中会社
3.5億円~7億円
2.5億円~5億円
2億円~4億円
中会社の中
2億円~3.5億円
0.6億円~2.5億円
0.8億円~2億
中会社の小
2億円未満
0.6億円未満
0.8億円未満
小会社

②従業員数を加味した総資産基準

以下の総資産価額基準か従業員数基準のいずれか下の区分

会社の規模
総資産価額(帳簿価額)
従業員数

卸売業
小売・サービス業
その他の事業

大会社
20億円以上
15億円以上
15億円以上
35人超
中会社(大)
4億円以上
5億円以上
5億円以上
中会社(中)
2億円以上
2億5,000万円以上
2億5,000万円以上
20人超
中会社(小)
7,000万円以上
4,000万円以上
5,000万円以上
5人超
小会社
7,000万円未満
4,000万円未満
5,000万円未満
5人以下

・従業員の範囲

従業員とは自社で使用されている個人のことであり、賃金を支払われる全ての者のことです。

一般的には「従業員」というと、正社員のことを指すことが多いですが、自社株評価においては業務に従事する全ての者を含みます。

1週間の労働時間が30時間超の個人を一人の従業員としてカウントします。

アルバイトなどの非常勤者については、1年間の労働時間の合計値を1,800時間で除した数値を人数としてカウントします。

小数点以下の端数が生じた場合は、「3.1であれば3名超」「2.9ならば3名以下」のように処理します。

正社員とそれ以外でカウントの方法の違いがみられます。

ただしどちらも従業員として含まれます。

社長などの役員に関しては使用人に該当しないため、この従業員には含まれません。

特定会社の該当判定

特定会社とは、特定の資産のバランスが非常に高い会社や、業態が一般的な会社とは異なる会社のことです。

特定会社は一般的な会社とは事情が異なります。

そのため、計算が煩雑になることが多いです。

特定会社等に該当すれば、原則として、純資産価額方式で評価を行います。

  1. 株式等保有特定会社
    会社の有する総資産の内に占める株式等の合計額が50%以上の会社のことです。
    株式の資産に占める割合が大きすぎるために一般的な事業会社とは認められないケースです。

  2. 土地保有特定会社
    会社の有する総資産の内に占める土地等の合計額が一定の割合を超えている会社のことです。
    割合は会社の規模により70%又は90%に区分されます。

  3. その他
    開業後3年未満の会社、直前期末の3要素(利益・配当・純資産)が0の会社、開業前または休業中の会社、清算中の会社

評価方法の決定

類似業種比準価額方式

類似業種比準価額方式とは、一言でいうと、自社と同業種で上場している会社を比較して、株式の評価額を計算するアプローチです。

上場している会社には、一般に公開されている株価があります。

一方、上場していない会社には、明確な株価は存在しません。

類似業種比準価額方式の計算式:

1株あたりの株価=似た業種の株価×(利益比準+配当比準+純資産額比準)÷3×斟酌率

利益比準=評価会社の利益/類似会社の利益

配当比準=評価会社の配当/類似会社の配当

純資産額比準=評価会社の純資産/類似会社の純資産

※斟酌率は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5

純資産価額方式

純資産価額方式とは、自社を解散させた場合、株主に返ってくる金額を株価として算定する考え方です。

この評価方法で計算した結果は、貸借対照表の純資産の部の金額とある程度近いものになります。

実際に会社を解散させるにあたっては、例えば土地の現在の評価額が株主に返還されることになりますので、現在の時価と貸借対照表に記載されている金額にズレが生じている場合には、株価もその分の調整が必要になります。

大雑把にいうと、会社の時価純資産で評価するということです。

純資産価額方式による非上場株式の自社株評価の算式は以下の通りです。

1株に対する純資産額=((資産の相続税評価額)-(負債の相続税評価額)-評価額に掛かる法人税)÷発行済株式の数(自己株式を除く)

折衷

自社の規模がどの分類になるかを確認し、算出した値に分類ごとに決められた料率を掛けることで、自社株評価額が決まります。

大会社・・・類似業種比準のみ

中会社(大)・・・類似業種比準×0.9+純資産価額×0.1

中会社(中)・・・類似業種比準×0.75+純資産価額×0.25

中会社(小)・・・類似業種比準×0.6+純資産価額×0.4

小会社・・・純資産価額または類似業種比準×0.5+純資産価額×0.5

配当還元方式

会社を支配することのできない一族の非上場株式の場合は、自己株評価に配当還元方式を用いることになります。

  • 配当還元方式が適用できる株式
    ア)同族株主がいる会社において同族株主以外の株主が取得した株式
    イ)同族株主がいる会社の同族株主グループに含まれるけれど、会社支配力の少ない株主(一定の役員を除く)として取得した株式
    ウ)同族株主がいない会社において議決権割合が15%以上の株主グループがいる場合で、かつ、株式を取得した株主らが15%以上の株主グループに含まれない株主として取得した株式
    エ)同族株主のいない会社において、議決権割合が15%以上の株主グループがいて、かつ、その15%グループの中に中心的な株主がいるけれど、判定する本人がその中心的な株主ではなく、かつ、一定の役員ではない場合の株主として取得した株式

  • 配当還元方式の計算式
    年間の配当額=(一番近い期末前の2年間の配当額/2)÷(直前の期末の資本金等の額/50円)
    配当還元方式の評価額=(年間の配当額/10%)×(1株あたりの資本金等の額/50円)
    なお「一番近い期末前の2年間の配当額/2」は、課税時期の期末から2年遡った期間に関する配当額を平均した数値です。

自社株(非上場株式)評価を下げる方法

自社株評価を下げたい場合、以下のような方法等で引き下げることが可能です。

  1. 配当・利益・純資産額を低下させる
    まずは配当・利益・純資産額を盛り込んだ類似業種比準を用いる方法についてです。
    算式を見ていただければ分かる通り、配当・利益・純資産額の数値を下げれば、自社株評価額も下がります。
    例えば、退職金の支払い等を実施するなどして利益を減らせば、非上場株式の自社株評価の金額を引き下げることができます。
    配当額を減らしたい場合は、配当の金額を下げたり、配当自体を取りやめたりすることで、非上場株式の自己株評価の金額を引き下げることができます。
    類似業種比準は決まった時期に行う配当だけを計算に利用するので、多額の配当を行いたいときは特別配当などを選ぶようにすると良いでしょう。
    純資産を下げる際は、例えば含み損が出ている資産を売って損失を計上することで下がります。

  2. 純資産株価の低下
    相続税の評価後の純資産額を減らすか、発行する株式の数が大きければ、株価を下げることが可能です。
    相続税の評価後の純資産額を減らすには、例えば新たな資産を保有して負債を増やす方法があります。
    発行株式数を増やすには、既存株主に新株式等を買い取ってもらうことが有効です。
    非上場会社は新株式発行について株主総会の特別決議が必要になります。
    また特定の第三者に株式を割当する第三者割当増資において、株式を発行する価格が安すぎると有利発行と判断されかねないので、念入りな準備が必要です。

  3. 会社の規模を変える
    会社の規模を変えることによって、一般に低い値が出る純資産価額方式による評価割合を高め、自社株評価を引き下げることも可能です。
    会社の規模が大きくなれば類似業種比準方式での評価割合が高く、会社の規模が小さくなれば純資産価額の評価割合が低くなります。

  4. 後継者への事業承継
    後継者となる人物に新会社を設立させて、その会社に評価額の財産や自社株を譲渡すれば、自社株評価額を下げることができます。

まとめ

自社株評価は、原則的に類似業種比準方式か純資産価額方式またはその折衷で算出します。

自社株評価の算出は非常に複雑です。

会社の規模により自社株評価の方法も変わります。

また原則的な自社株評価方法が適用できないケースもあります。

事業承継を見越し、自社株評価額を引き下げておきたい場合などは、どういった方法で自社株評価かを行うことになるのかを確認しておく必要があります。

【自社株評価の原則的な方法】

類似業種比準方式

純資産価額方式

併用

【自社株評価を下げる方法】

類似業種株価の下落

純資産株価の下落

会社の規模を変える

後継者への事業承継