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連結納税に加入した場合の資産の時価評価と税効果

連結納税の加入においては、連結納税制度特有の会計処理が必要となります。その特有な処理のひとつである、子会社の資産の時価評価において、どのような資産が時価評価の対象なのか、税効果会計はどのような適用となるのか等について、今回は詳しくご紹介を致します。

連結納税グループに加入をした場合には資産の時価評価が必要

連結納税の開始又は加入に当たっては、連結子法人となる法人の有する一定の資産については時価評価をすることとされています。

時価評価の対象の資産

時価評価の対象となる資産は固定資産、棚卸資産たる土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産です。

固定資産のうち、建物は1棟ごと、機械装置や生産設備は1台ごと、通常の取引単位があるものはその取引単位ごとに時価評価を行います。

土地は、一筆ごとに区分し、一体として事業の用に供されている一団の土地等についてはその一団ごとに時価評価を行います。

有価証券は銘柄ごと、金銭債権は債務者ごと、繰延資産は通常の取引単位ごと、とそれぞれに時価評価を行う単位が定められています。

時価評価の対象外となる資産

上記のように、時価評価の対象の資産は定められていますが下記の資産を除くこととされています。

①子法人が親法人による完全支配関係を有することとなった日以後最初に開始する連結親法人事業年度開始の日の5年前の日以後に終了する各事業年度又は各連結事業年度において、国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入などの規定の適用を受けた減価償却資産

②売買目的有価証券及び償還有価証券

③その資産の時価と帳簿価額との差額が、子法人の資本金等の額の1/2に相当する金額又は1,000万円のいずれか少ない金額に満たないもの

④子法人との間に完全支配関係がある内国法人の株式又は出資で、その時価がその帳簿価額に満たないもの

⑤最初連結親法人事業年度開始の日に子法人が自己を被合併法人とする合併により合併法人に移転する資産及びその合併によりその親法人又はその子法人にその発行済株式又は出資を直接又は間接に保有されている他の子法人がその親会社との間に完全支配関係を有しなくなる場合の孫会社等の保有する資産

⑥最初連結親法人事業年度の開始の日に子法人が自己を合併法人とする合併によりその親法人との間に完全支配関係を有しなくなる場合のその子法人の保有する資産及びその合併により孫会社等がその親会社との間に完全支配関係を有しなくなる場合の孫会社等の保有する資産

⑦子法人が、親法人との間に完全支配関係を有することとなった日以後2ヶ月以内に、その子法人の株式が連結グループ外の法人に譲渡されたことなど一定の事由によりその完全支配関係を有しなくなる場合のその子法人の保有する資産

時価評価の方法

時価評価の対象となる資産の時価評価の方法はその資産の区分ごとに下記のように定められています。

建物などの減価償却資産

法人税法施行令の第13条第1号から第7号までの有形減価償却資産に掲げる減価償却資産については、減価償却資産の時価に定める方法により計算される未償却残額に相当する金額をもって当該減価償却資産の価額とする方法により評価を行います。

同条第8号無形減価償却資産及び第9号生物に掲げる減価償却資産については、当該減価償却資産の取得価額を基礎としてその取得の時から法人税法の第61条の11第1項に規定する連結開始直前事業年度又は法人税法の第61条の12第1項に規定する連結加入直前事業年度終了の時まで旧定額法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額をもって当該減価償却資産の価額とする方法により評価を行います。

土地

当該土地につきその近傍類地の売買実例を基礎として合理的に算定した価額又は当該土地につきその近傍類地の公示価格等から合理的に算定した価額をもって当該土地の価額とする方法により評価を行います。

有価証券

法人税基本通達の9-1-8、9-1-13、9-1-14又は9-1-15の有価証券の価額に定める方法に準じた方法によって算定した価額をもって当該有価証券の価額とする方法により評価を行います。

金銭債権

その一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権については、該金銭債権の額から当該金銭債権につき法人税法の第52条第1項の貸倒引当金の規定を適用した場合に同項の規定により計算される個別貸倒引当金繰入限度額に相当する金額を控除した金額をもって当該金銭債権の価額とする方法により評価を行います。

損失が見込まれない金銭債権については当該金銭債権の帳簿価額をもって当該金銭債権の価額とする方法により評価を行います。

繰延資産

法人税法施行令の第14条第1項第1号から第5号までの繰延資産の範囲に掲げる繰延資産については、当該繰延資産の帳簿価額をもって当該繰延資産の価額とする方法により評価を行います。

同項第6号に掲げる繰延資産については、当該繰延資産の額を基礎としてその支出の時から連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度終了の時まで、法人税法施行令の第64条第1項第2号の繰延資産の償却限度額の規定により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額をもって当該繰延資産の価額とする方法により評価を行います。

時価評価が加入時に必要のない法人

原則として連結納税の加入にあたっては、連結子法人となる法人の有する一定の資産については、時価評価をする必要がありますが、連結納税の加入にあたり、連結子法人となる下記に該当する法人は、法人の事務負担や課税上の弊害が生じにくい点を考慮して時価評価資産の時価評価を要しないこととされています。

①連結親法人又は連結子法人が設立したこれらの法人による完全支配関係を有する法人

②適格株式交換により連結親法人又は連結子法人が発行済株式の全部を有することとなった法人

③適格合併又は適格株式交換により連結親法人による完全支配関係を有することとなった法人のうち、その適格合併等の日の5年前の日(からその適格合併等の日の前日まで継続してその適格合併等に係る被合併法人又は株式交換完全子法人による完全支配関係があったもの

④単元未満株式の連結親法人等による買取り等により連結親法人による完全支配関係を有することとなった法人のうち、その買取り等に係る株式等が発行されていなかったとするならばその買取り等の日の5年前の日からその完全支配関係を有することとなった日までその連結親法人による完全支配関係が継続しているもの

時価評価が開始時に必要のない法人

時価評価が連結納税グループの加入時に必要のない法人は上記の通りですが、開始時にも時価評価が必要のない法人があります。

連結納税の適用開始に当たっては、単体納税制度の下で時価評価資産に係る評価損益を計上した後に連結納税制度の適用を受けることを基本としていますが、連結納税の適用開始にあたり、下記に該当する法人は、法人の事務負担や課税上の弊害が生じにくい点を考慮して時価評価資産の時価評価を要しないこととされています。

①連結親法人となる法人

②連結子法人となる法人のうち下記のもの

・親法人がその親法人の最初の連結事業年度開始の日から開始日までの間に株式移転により設立された法人であり、その株式移転に係る株式移転完全子法人となった法人のうち、その株式移転の日から開始日までその親法人による完全支配関係が継続しているもの

・5年前の日から開始日までの間、親法人による完全支配関係が継続しているもの

・5年前の日から開始日までの間に親法人又は親法人による完全支配関係がある法人によって設立された法人で、その設立の日から開始日までその親法人による完全支配関係が継続しているもの

・5年前の日から開始日までの間に行った親法人又は親法人による完全支配関係がある法人を株式交換完全親法人とする適格株式交換によりその親法人による完全支配関係を有することとなった株式交換完全子法人で、その適格株式交換の日から開始日までその親法人による完全支配関係が継続しているもの

・5年前の日から開始日までの間に適格合併、適格株式交換又は適格株式移転により親法人による完全支配関係を有することとなった法人のうち、その適格合併等に係る被合併法人、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人により5年前の日からその適格合併の日の前日、その適格株式交換の日又はその適格株式移転の日まで継続して被合併法人等による完全支配関係があり、かつ、その適格合併等の日から開始日までその親法人による完全支配関係が継続しているもの

・5年前の日から開始日までの間に単元未満株式の親法人等による買取り等により親法人による完全支配関係を有することとなった法人のうち、その買取り等に係る株式等が発行されていなかったとするならば5年前の日からその買取り等の日までその親法人による完全支配関係が継続しており、かつ、その完全支配関係を有することとなった日から開始日までその親法人による完全支配関係が継続しているもの

時価評価損益

資産を親会社が獲得する際に子会社の資産の時価評価を行うということは、子会社の帳簿価格と相違した金額をもって親会社に獲得されることになるため、その相違した金額が親会社によって時価評価損益として認識がされます。

例えば、親会社が支配を獲得した日の子会社の土地が簿価66,000千円、時価が78,000千円であった場合には、差額である12,000千円について、借方は土地12,000千円、貸方は評価差額12,000円といった会計処理が必要となります。

この時価評価損益の認識と同時に、下記のように税効果会計が適用をされ、上記の場合は評価差額の収益に対する繰延税金負債を認識する必要があります。

加入時の税効果会計

連結制度加入の手続上生じた一時差異は、法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債並びに法人税等調整額を計算する必要があります。

繰延税金資産、繰延税金負債の取り扱い

繰延税金資産、繰延税金負債は、連結納税主体及び連結納税会社の個別財務諸表において下記のように取り扱います。

連結納税主体における税効果会計の適用

まず、連結納税会社ごとに、財務諸表上の一時差異等に対して繰延税金資産及び繰延税金負債を計算します。

次に、上記の各連結納税会社の繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を合計するとともに、連結納税主体に係る連結財務諸表固有の一時差異に対して、当該差異が発生した連結納税会社ごとに税効果を認識し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計算します。

そして、繰延税金資産のうち、法人税及び地方法人税に係る部分については連結納税主体を一体として回収可能性を判断し、住民税又は事業税に係る部分については連結納税会社ごとに回収可能性を判断した上で各社分を合計します。

回収が見込まれない税金の額については、連結財務諸表上、繰延税金資産から控除します。

連結納税会社の個別財務諸表における税効果会計の適用

まず、連結納税会社ごとに、財務諸表上の一時差異等に対して繰延税金資産及び繰延税金負債を計算します。

次に、上記の財務諸表上の一時差異等に対して、繰延税金資産及び繰延税金負債を計算します。

そして、法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産については、法人税、地方法人税を合わせて回収可能性を判断します。住民税又は事業税に係る繰延税金資産については、それぞれ区分して回収可能性を判断します。

いずれにおいても、回収が見込まれない税金の額については、個別財務諸表上、繰延税金資産から控除します。

繰延税金資産の回収可能性

財務諸表を作成するにあたり、繰延税金資産の回収可能性についての判断が必要となります。連結納税会社の個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断は、将来の課税所得の見積額等に基づいて行われることとなりますが、下記①から③の点に注意が必要です。

①法人税及び地方法人税については両税合わせて行い、住民税又は事業税はそれぞれ区分して行う必要があります。

②法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断は、個別所得見積額だけでなく、当該連結納税会社の属する連結納税主体の他の連結納税会社の個別所得見積額も考慮する必要があります。

③法人税及び地方法人税の連結欠損金個別帰属額に係る繰延税金資産の回収可能性の判断については、連結納税の計算に従って、連結納税主体の連結欠損金に特定連結欠損金が含まれていない場合は、連結所得見積額を考慮する必要があり、連結納税主体の連結欠損金に特定連結欠損金が含まれている場合は、連結所得見積額及び各連結納税会社の個別所得見積額の両方を考慮する必要があります。

まとめ

連結納税に加入をすると、子会社の資産のうち一定のものについては時価評価が適用されます。時価評価による損益には税効果会計が適用され、その取り扱いには注意が必要です。

連結納税についてご不明な点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。