045-313-3800
24時間受付中!メールでのお問い合わせはこちら

HOME > コラム完全支配関係の判定基準及び関係の有無が影響する主要論点を解説

コラム

完全支配関係の判定基準及び完全支配関係の有無が影響する主要論点を解説!

導入

法人税の世界において、「完全支配関係」は、グループ法人税制や組織再編税制など、税務上の取り扱いを大きく左右する重要な概念です。完全支配関係の有無に関する判定は、単に「100%親子会社」であればわかりやすいですが、個人株主が関わる場合や、複雑な資本関係にある場合は、正しく判定するためには専門的な知識が不可欠です。

本記事では、この税法上の完全支配関係の定義を詳しく解説し、具体的な判定ルールを複数のケーススタディを通して分かりやすくご紹介した上で、完全支配関係の有無が影響する主要な税務論点の概要を解説します。グループ経営を行う企業や、複雑な株主構成を持つ企業の担当者様は、ぜひ最後までご一読ください。

この記事の結論

法人税の「完全支配関係」は、単なる100%親子会社だけでなく、複雑な資本関係でも成立し、税務上の取り扱いを大きく左右します。この完全支配関係の有無は、譲渡損益調整資産(簿価1,000万円超)に係る譲渡損益の繰延べや、受取配当等の益金不算入(100%)などのグループ法人税制、組織再編税制の適格要件、さらには資本金・資本剰余金合計額2億円超の子会社が外形標準課税対象となるか否かの判定に直結します。

「完全支配関係」とは:税法上の定義と判定基準

完全支配関係の定義と具体例

「完全支配関係」は、法人税法で次のとおり定義されています(法人税法2条12号の7の6)。

一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係または一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいう

完全支配関係がある典型例は、親会社とその100%子会社との関係です。この場合、「一の者が法人の発行済株式等の全部を直接保有する関係」に該当するため、親会社とその100%子会社との間には完全支配関係が存在します。

「親会社と100%子会社」という関係以外にも、完全支配関係が成立するケースは多くあります。次のセクションでは、完全支配関係判定の細かいルールについて解説したあと、具体的なケースに当てはめて解説します。

判定ルールと具体例へのあてはめ

判定ルール

完全支配関係判定のルールとして、法人税法施行令の定めを概括します。まず、法人税法2条12号の7の6にいう「政令で定める関係」とは次のとおりです(法人税法施行令4条の2第2項)。

一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと法人税法施行令4条1項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係とする

完全支配関係判定の起点となる「一の者」が個人株主の場合は、当該個人株主と、法人税法施行令4条1項に規定する次の個人の合計株式数をもって完全支配関係の判定を行います。

  1. 株主等の親族
  2. 株主等と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  3. 個人株主の使用人
  4. ①~③の者と生計を一にする親族
  5. ①~③以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの

また、法人税法施行令4条の2第2項における「発行済株式等」は、発行済株式から自己が有する自己の株式(いわゆる「自己株式」)を除外した上で、除外後の発行済株式の総数に占める次の株式の合計数が5%に満たないか否かの判定を行い、満たない場合はこれらの株式数を除外します。

  • 従業員持株会が保有する株式(従業員持株会が民法上の組合に該当する場合)
  • 法令の決議によって当該法人の役員または使用人に付与された新株予約権の行使によって取得された株式(当該役員または使用人が保有するものに限る)

たとえば、B社の発行済株式の97%は親会社であるA社が、2%はB社の従業員持株会(民法上の組合に該当するもの)が、残りの1%は新株予約権の行使によってB社株式を取得したB社の取締役がそれぞれ保有している場合を考えてみます。この場合、A社とB社のみの関係を見ると100%の持株関係はありませんが、従業員持株会分(2%)と新株予約権分(1%)の合計(3%)が5%に満たないことから、法人税法施行令4条の2第2項の規定によって2%分と1%分は完全支配関係の判定から除外されます。よって、A社とB社との間には100%の持株関係があるとされ、よって完全支配関係があると判定します。

なお、従業員持株会が民法上の組合ではなく人格等のない社団に該当する場合は、上記の除外規定が適用されないことに注意が必要です。

参考:国税庁 完全支配関係における5%ルール
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/100810/pdf/03.pdf

具体例へのあてはめ

ここまで解説してきた完全支配関係の判定ルールをいくつかの具体例に当てはめてみましょう。

ケース1:法人による間接保有の場合

まずは、A社がB社およびC社の発行済株式数のそれぞれ80%保有しており、B社の発行済株式数の20%をC社が、C社の発行済株式数の20%をB社が保有しているケースを考えます。

ケース1:法人による間接保有の場合

このケースにおいては、A社はB社およびC社の発行済株式の80%を保有するのみであり、100%保有でないため、A社とB社、A社とC社の間に完全支配関係があるといえるのか疑義が生じます。

この点、国税庁の解説によると、「完全支配関係とは、基本的な考え方として、法人の発行済株式のすべてがグループ内のいずれかの法人によって保有され、その資本関係がグループ内で完結している関係、換言すればグループ内法人以外の者によってその発行済株式が保有されていない関係をいうものと解され」ることから、グループ内法人以外の者によってその発行済株式が保有されていないA社とB社、A社とC社、また兄弟会社であるB社とC社との間に、それぞれ完全支配関係があるとされています。

出典:国税庁 質疑応答事例
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/01.htm

ケース2:「一の者」が個人株主の場合

次に、個人甲が発行済株式をすべて保有しているD社、個人乙が発行済株式をすべて保有しているE社、個人丙が発行済株式をすべて保有しているF社の3社があり、甲と乙は夫婦で、丙は甲の孫(丙は独立生計を営んでいる)であるケースを考えます。

こういったケースにおいては、D社、E社、F社はお互いの株式をまったく保有していないため完全支配関係の論点は見落とされがちですが、甲を起点に考えると、乙は甲の配偶者、丙は甲の孫であることから、いずれも甲の親族に該当します。完全支配関係の判定においては、完全支配関係判定の起点となる「一の者」が個人株主の場合は、当該個人株主とその親族等が保有する合計株式数をもって完全支配関係の判定を行うことから、D社、E社、F社はそれぞれ完全支配関係があることになります。なお、「親族」とは、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族をいいます(民法725条)。

参考:国税庁 質疑応答事例
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/42.htm

ケース3:資本関係が個人株主を含むグループ内で完結している場合

最後に、A社がB社およびC社の発行済株式数のそれぞれ30%を、B社とC社がお互いに40%を、残りの30%をA社の発行済株式数の100%を保有する甲一族が保有しているケースを考えます。

ケース3:資本関係が個人株主を含むグループ内で完結している場合

このケースにおいては、ケース1とは異なり、A社はB社およびC社の発行済株式の30%を保有し、B社とC社との間で相互に保有する割合も40%であることから、ケース1における「法人の発行済株式のすべてがグループ内のいずれかの法人によって保有され」の要件は満たさないため、A社とB社、A社とC社の間に完全支配関係があるといえるのか疑義が生じます。

この点、国税庁の解説によると、「個人株主及びその親族等が含まれていたとしても、資本関係が個人及びその親族等並びにこれらと資本関係のあるグループ内法人で完結している関係、すなわち、その個人及びその親族等並びにこれらと資本関係のあるグループ内法人以外の者によってその発行済株式が保有されていない関係であれば、完全支配関係があるものとして取り扱うことが適当」であるとされているため、ケース3においてもA社とB社、A社とC社の間に完全支配関係があると判断されます。

出典:国税庁 質疑応答事例
https://www.nta.go.jp/about/organization/osaka/bunshokaito/hojin/221208/index.htm

以上、完全支配関係の判定についていくつかのケースを元に解説しました。完全支配関係の判定は、グループ内の資本関係が複雑だったり、個人株主が関与したりすると難易度が高くなるため、確実な判定を行うためにも税理士に相談することをおすすめします。

完全支配関係の有無が影響を及ぼす主要な税制

完全支配関係は、グループ法人税制の適用や、欠損金の繰戻還付制度における制限など、法人税の様々な「別段の定め」の適用基盤となるだけではなく、事業税の外形標準課税対象法人か否かの判定にも影響を及ぼします。次のセクションでは、完全支配関係の有無によって取り扱いが変わる主な税務論点をいくつか紹介します。

完全支配関係が関わる主要な税務論点

グループ法人税制

完全支配関係にある内国法人のグループ間取引には、「グループ法人税制」という制度が適用されます。似たような名前の「グループ通算制度(旧:連結納税制度)」が申請に基づく選択制であるのに対し、グループ法人税制は資本金の額や法人規模にかかわらず強制適用されます。以下、グループ法人税制の主な制度を3つ解説します。その他の制度については、国税庁ホームページの質疑応答事例をご参照ください。


参考:国税庁 平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制関係)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/100810/index.htm

譲渡損益調整資産に係る譲渡損益の繰延べ

グループ法人税制の主要な制度の1つ目は、譲渡損益調整資産にかかる譲渡損益の繰延べです(法人税法61条の11)。この制度により、完全支配関係がある内国法人間で譲渡損益調整資産を譲渡した場合、譲渡法人は譲渡益相当額が損金の額に、譲渡損失相当額が益金の額に算入されるため、譲渡を行った年度における課税所得がプラスマイナスゼロになります(同条1項)。

なお、「譲渡損益調整資産」とは、固定資産、土地、有価証券(譲渡法人または譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券は除きます)、金銭債権、繰延資産のうち、その譲渡直前の帳簿価額が1,000万円以上である資産をいいます(法人税法61条の11第1項、法人税法施行令122条の12第1項)。

寄附金及び受贈益の損金不算入および益金不算入

内国法人が、完全支配関係がある他の内国法人へ支出した寄附金は全額が損金不算入となります(法人税法37条2項)。一般寄附金の損金算入限度額内での寄附だとしても、限度額にかかわらず全額が損金不算入です。一方、内国法人が、完全支配関係にある他の内国法人から受けた受贈益は、その受贈益の額について益金の額に算入されません(法人税法25条の2)。

受取配当等の益金不算入制度

配当を受け取る側の二重課税を排除するための制度である受取配当等の益金不算入制度については、株式の保有割合に応じて内国法人から受ける配当等に関する益金不算入割合が変わります(法人税法23条)。このうち、完全子法人株式等(配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係があった他の内国法人等。法人税法23条5項)については、その配当金の額の100%が益金不算入となるため、配当を受ける際に税務コストがかからないというメリットがあります。

グループ通算制度

グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算および申告を行い、その中で、損益通算等の調整を行う制度のことをいいます。この制度は、従来の連結納税制度に代わり、令和4年(2022年)4月1日以降に開始する事業年度から適用されています。

グループ通算制度は完全支配関係が前提となるため(法人税法64条の9)、この完全支配関係が崩れると、グループ通算制度の適用法人から離脱することになります。

組織再編税制

企業グループにおける組織再編(合併、会社分割、現物出資、株式交換・移転など)を行う際、税務上の優遇措置を受けるためには「税制適格要件」を満たす必要があります。この税制適格要件の判定において、完全支配関係の有無は最も重要な要素の一つとなります。

完全支配関係グループ内の再編の場合、つまり再編当事者間に完全支配関係がある場合は、税制適格要件は非常に緩和されます。例えば、合併であれば金銭等の不交付要件を満たすだけで原則として税制適格となります(法人税法2条12号の8イ)。これは、経済実態が変わらず、形式的な変更とみなされるためです。

外形標準課税対象法人の見直し

次の要件をすべて満たす法人は、事業年度末日における資本金の額が1億円以下であっても、2026年4月1日以降に開始する事業年度から外形標準課税対象法人となります。

  • 資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人の100%子会社、または100%グループ内の複数の特定法人に発行済株式等の全部を保有されている会社に該当する
  • 事業年度末日における資本金と資本剰余金の合計額が2億円超である

子会社が意図せず外形対象法人になって税負担が増えることのないよう、完全支配関係のあるグループ企業がある場合は、子会社が上記の要件を満たすか確認することをおすすめします。

まとめ

本記事では、完全支配関係の税法上の定義と、個人株主の関与や間接保有といった複雑なケースにおける判定ルールを具体的に解説しました。

完全支配関係は、単なるグループ内の資本関係を示すだけでなく、グループ法人税制や組織再編税制、外形標準課税の適用など、企業の税務戦略に直結する極めて重要な概念です。特に、複数法人を経営されている場合や、株主構成が複雑な場合は、意図せず税務上の優遇措置を受けられなくなったり、予期せぬ税負担が発生したりするリスクがあります。

完全支配関係の判定は、税法上の細かな規定に基づき、専門的な判断が求められます。企業の成長戦略を税務面から万全にサポートするためにも、完全支配関係の有無や、それに伴う税務上の影響について不安がある場合は、お近くの税理士にご相談ください。