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コラム

税金はすべて損金不算入?損金算入できる税金もあります

導入

法人が支払う税金は、会計上は費用として扱われますが、法人税法の規定により一部は損金不算入とされています。この記事では、損金不算入となる税金と損金算入できる税金の違い、税額控除との適用関係、損金算入の時期、外国で課された税金の取り扱いについて詳しく解説します。

この記事の結論

法人が支払う税金は、例外なく損金不算入のもの、損金不算入となる場合と損金算入できる場合があるもの、原則として損金算入できるものの3つに分類することができます。

このうち、「例外なく損金不算入のもの」には法人税及び地方法人税、都道府県民税及び市町村民税、延滞税、加算税等が、「損金不算入となる場合と損金算入できる場合があるもの」には外国子会社から受ける配当等に係る外国源泉税等、所得税額、外国税額が、「原則として損金算入できるもの」には印紙税、事業税、固定資産税、事業所税、利子税などが該当します。

損金算入時期は税金の種類によって異なり、例えば申告納税方式では申告書提出日、賦課課税方式では賦課決定日が基準です。外国税額の取り扱いは複雑で、税額控除の適用有無によって損金算入可否が異なるため注意が必要です。

税金の損金不算入

制度の概要

法人が負担する税金は企業会計上費用の額に計上されますが、法人税法においてはそのうち一定のものを損金不算入としています。以下、損金不算入となる税金と損金算入できる税金について解説します。

損金不算入となる税金

法人税法の規定により、次の税金は損金不算入とされています(以下、法人税法を「法」と略します)。

  • 法人税及び地方法人税(法38条1項)
  • 都道府県民税及び市町村民税(法38条2項2号)
  • 外国子会社から受ける配当等に係る外国源泉税等(法39条の2)
  • 法人税額から控除する所得税額(法40条)
  • 法人税額から控除する外国税額(法41条)
  • 延滞税、加算税等(法38条)

所得税額と外国税額が損金不算入となるのは、それぞれ所得税額控除(もしくは還付)または外国税額控除の規定の適用を受ける場合のみですので、これらの規定の適用を受けない場合は損金算入することができます。所得税額は納付すべき法人税額がなくても還付を受けることができるため、所得税額を損金算入するケースは実務上ほぼありませんが、外国税額は納付すべき税額がなければ控除額は0円であるため、外国税額を損金算入するケースは実務上よく見られます。外国税額の取り扱い(外国税額控除の規定を受けるか、損金算入するか)は事業年度ごとに選択できます。直近数年間で損金算入方式を選択していた法人が、税額控除方式を選択するときは、外国税額を損金不算入することを忘れないようにしましょう。

損金算入できる税金の例

次のような税金は法人税法の損金不算入の対象から除外されているか、損金不算入とする規定がないため、損金算入することができます。

  • 印紙税
  • 酒税その他の個別間接税(ゴルフ場利用税、入湯税、宿泊税など)
  • 利子税
  • 事業税
  • 固定資産税その他の地方税(事業所税など)
  • 納期限延長の場合の延滞金

このうち「利子税」とは、確定申告書提出期限の延長の規定の適用を受ける法人が支払う当該延長期間に係る利息の性質を持つものであり、延滞税や加算税といった罰課金的な性質とは異なるため、損金算入が認められています。

また、「延滞金」とは、地方税の納付が納期限後に行われた場合に課せられるもので、このうち利子税と同じく確定申告書提出期限の延長の規定の適用によるものは損金算入することができます。

なお、事業税については外形標準課税部分(付加価値割、資本割)のみではなく、所得割部分も損金算入することができます。所得割と付加価値割及び資本割は、会計上の計上科目は異なりますが(所得割は法人税、住民税及び事業税、付加価値割及び資本割は原則として販売費及び一般管理費にそれぞれ計上します)、法人税法における扱いは同一である点にご留意ください。

損金算入の時期

損金算入できる税金の損金算入の時期は、税金の区分に応じて次のとおり定められています(法人税基本通達9-5-1)。

区分損金算入の時期
申告納税方式原則として申告書を提出した日の属する事業年度
賦課課税方式原則として賦課決定のあった日の属する事業年度
特別徴収方式原則として納入申告の日の属する事業年度
利子税・延滞金原則として納付の日の属する事業年度

たとえば、申告納税方式である事業所税は、事業年度末(会計年度末)において概算計上額を当該事業年度の費用に計上した上で、事業年度末から2ヶ月以内に申告納付を行うことが一般的ですが、損金の額に算入できるのは申告書の提出をした事業年度ですから、概算計上した事業年度においてはこれを損金の額に算入しない調整(税務調整)が必要となります。

なお、事業税については申告書の提出がなくても損金算入できるという特例があります(法人税基本通達9-5-2)。この特例は、当該事業年度の直前の事業年度分の事業税及び特別法人事業税の額は、当該事業年度終了の日までにその全部または一部につき申告等がされていない場合であっても、当該事業年度の損金の額に算入することができるという特例です。各事業年度において期限までに申告納付を行っている場合は使うことのない特例であるため、原則は申告書を提出した日の属する事業年度に損金算入できる、と覚えておくのがよいでしょう。

外国で課された税金の取り扱い

法人が外国で課された税金はそれぞれ次のとおり扱われます。

税金原則例外
外国法人税損金算入できる外国税額控除の規定の適用を受ける場合は損金算入できない
配当に係る外国源泉税損金算入できる外国子会社配当益金不算入の規定の適用を受ける場合は損金算入できない

外国法人税の取り扱いについては「損金不算入となる税金」のセクションで解説したとおりです。外国税額控除の適用を受けない場合は損金算入できますが、外国税額控除の適用を受ける場合は損金算入することはできません。

また、日本法人から外国法人からの配当を受ける際に外国において課された源泉税は、原則として損金算入することが可能ですが、外国子会社配当益金不算入(法23条の2)制度の規定の適用を受けるものについては損金算入することができません(法39条の2)。また、当該外国源泉税は外国税額控除の対象にもなりません(法人税法施行令142条の2第7項第5号)。益金算入された配当等の額に係る外国源泉税の外国税額控除の適用については、国税庁のQ&Aもご参照ください。

参照:国税庁ホームページ 外国子会社配当益金不算入制度に関するQ&A
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/8400-15/01.pdf

まとめ

以上、法人が納付する税金の法人税法における取り扱いについて解説しました。

損金不算入と損金算入の税金を正しく分類することは、法人税の計算において重要な要素です。特に外国税額や事業税の取り扱いは誤りやすいため注意が必要です。実務においては、税額控除との関係や適用要件を正しく理解し、適切な処理を行うことが重要です。少しでも処理に不安がある場合は、顧問税理士にご相談されることをおすすめします。