収入が給与所得に該当すると、所得税の課税対象となります。会社に勤める人が会社から支給される金銭や利益の多くは、所得税の課税対象となり税金を納める必要がありますが、一定の支給される金銭や利益については、非課税として取り扱うことが認められています。
不必要な税金を納めることが無いように、給与所得に該当するもの、しないものを正しく把握することはとても重要な事です。
所得は、その発生形態等に応じて10種類に分類され、そのうちのひとつである給与所得とは、勤務先から受ける給料、賃金、賞与等の所得をいいます。
国税庁が発表をした民間給与実態統計では、令和3年12月31日時点の給与所得者数は、5,931万人であり、国内の多くの人が給与所得により生計を立てているといえます。
給与所得の金額は、収入金額から給与所得控除を差し引いて算出をした金額のことをいいます。この給与所得に対して所得税率を乗じることで、その人が納めるべき所得税が算出されます。
給与所得の金額が低い程、納めるべき所得税が少なくなり、同じ収入を得る場合には、その収入が非課税の所得で構成されている方が、課税の所得で構成されていることよりも、手取りの金額が大きくなり、給与所得者にとって得であるといえます。
給与所得に該当すると、所得税の課税対象となります。給与所得に該当をするものは、直接的な労働対価だけではありません。
例えば契約した時給金額に労働時間を乗じて算出されるような、労働対価であることが明確である給与については、給与所得に該当をすることが明白ですが、労働時間で増減のしない手当等も給与所得に該当をします。
役員や従業員が支給を受ける手当は、原則として給与所得となり、下記のような手当が該当します。
給与は、金銭で支給されることが一般的ですが、食事の現物支給や商品の値引き販売等のように下記のような物または権利その他の経済的利益等を得た場合には、それを現物給与といい、原則として給与所得となります。
上記のように、多くの勤務先から受ける金銭や利益が給与所得に該当をしますが、職務の性質上欠くことのできないもので主として勤務先側の業務遂行上の必要から支給されるものや、換金性に欠けるもの等については、給与所得に該当をせず、所得税の課税対象となりません。
役員や従業員等の給与所得者に通常の給与に加算して支給する通勤手当や通勤定期券等は一定の限度額まで非課税となっています。
電車やバス等の公共交通機関での通勤の場合の非課税となる限度額は、通勤のための運賃、時間、距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券等の1ヶ月あたり15万円以下の金額です。
例えば電車通勤で自宅の最寄り駅から会社の最寄り駅の区間の通勤定期券を購入し、同額の金銭の支給を受けた場合には、非課税となりますが、その区間を超えて、業務に関係の無い習い事を受ける場所の最寄り駅や休日に行く繁華街の最寄り駅までの定期券代の支給を受けると、超えた部分の金銭は課税となります。
新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が最も経済的かつ合理的な経路および方法に該当する場合には非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため含まれません。
マイカーや自転車等のみで通勤の場合の非課税となる限度額は、片道の通勤距離によって定められています。この片道の通勤距離とは、地図上の自宅と会社を結んだ直線の長さではなく、通勤経路に沿った長さをいいます。
各通勤距離に対する1ヶ月あたりの非課税限度額は、下記のように定められています。
電車やバス等の公共交通機関とマイカーや自転車等との組み合わせでの通勤の場合の非課税となる限度額は、電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1ヶ月間の通勤定期券等の金額と、マイカーや自転車などを使って通勤する片道の距離で決まっている1か月当たりの非課税となる限度額の合計額のうち15万円以下の金額です。
転勤や出張等のための旅費のうち、通常必要と認められるものは非課税となっています。これには業務に必要と認められる交通費、宿泊費等の実費が領収書等で確認できるものの他、社内の出張旅費規定によって定められた日当も非課税に該当をします。
宿直や日直の手当のうち、その支給の基因となった勤務1回につき支給される金額が4,000円以下のものは非課税となっています。なお、宿直または日直の勤務をすることにより支給される食事がある場合には、4,000円からその食事の価額を控除した残額が非課税となります。
しかし、下記のような宿直、日直手当は非課税の対象とはなりません。
役員や従業員に支給する食事は、残業または宿日直を行う場合に支給する食事、又は一定の要件の全てを満たしている場合、非課税となっています。
例えば、急遽残業の要請を会社が行い、その残業となった従業員の夕食を全額会社負担で弁当を購入した場合は、その支給された食事代について従業員に所得税は課税されません。
一方で、通常の昼休みにとる食事について、全額会社負担で弁当を購入し無償で支給した場合には、その支給された食事代について従業員に所得税が課税されます。
下記の2つの要件を全て満たすことが必要です。
①役員や従業員が食事の価額の半分以上を負担していること
②食事の価額から役員や従業員が負担している金額を差し引いている金額が1ヶ月当たり3,500円以下であること
食事の価額とは、具体的には下記の価額のこと等をいいます。
従業員に支給する制服は、会社側の都合で業務上必要と判断される代替性の無い衣服のため、非課税となっています。
創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品等は、一定の要件を満たす場合に非課税となっています。
要件を満たさずに、記念品の支給や旅行や観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券等を支給する場合や、自由に記念品を選択できる場合は所得税が課税されます。
下記の3つの要件を全て満たすことが必要です。
①支給する記念品が社会一般的にみて記念品としてふさわしいものであること
②記念品の処分見込価額による評価額が10,000円以下であること
③創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給をするものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること
下記の3つの要件を全て満たすことが必要です。
①その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること
②勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること
③同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること
会社が従業員に対して社宅や寮等を貸与する際、従業員から1ヶ月当たり一定額の家賃以上を受け取る場合においては非課税となっています。
無償で貸与する場合は、賃貸料相当額が給与所得として課税がされます。また、現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃負担金も、貸与に該当をしないため、課税がされます。
賃貸料相当額とは、下記の合計をいいます。
有償で貸与する場合は、賃貸料相当額の50%以上の金額を従業員から支払いを受けることで、非課税となります。
有償で貸与をしても、賃貸料相当額の50%未満の金額を従業員から支払いを受ける場合には、賃貸料相当額と従業員から受ける金額との差額に対して所得税が課税されます。
役員や従業員に、仕事に関係のある技術や知識を習得させるための費用を支給する場合、一定のものについては非課税となります。
一定のものとは、役員または従業員としての職務に直接必要な技術や知識を習得させ、または免許や資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用または大学等の聴講費用に充てるための費用として適正なものであることをいいます。
従業員レクリエーション旅行や研修旅行を行った場合、一定の要件を満たす場合に、会社が負担した費用は非課税となります。
従業員レクリエーション旅行の場合は、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が下記のいずれの要件も満たすものである場合は、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与所得に該当をせず、非課税となります。
一方で、これらの要件を満たさない、役員だけで行う旅行や実質的に私的旅行と認められる旅行、金銭との選択が可能な旅行について会社が旅行の費用を支出した場合には、その旅行に参加した人の給与所得に該当をし、課税されます。
研修旅行が会社の業務を行うために直接必要な場合には、その費用は非課税となりますが、研修旅行の費用に会社の業務を行うために直接必要な部分と直接必要でない部分がある場合には、直接必要でない部分の費用は、参加した人の給与所得として課税されます。
下記に該当をする研修旅行は、原則として、会社の業務を行うために直接必要なものと認められません。
このように、会社が従業員に支給する金銭や利益には、給与所得に該当をするものとしないもの、つまり所得税を納めるべきものと納める必要の無いものがあります。
これらを正しく把握し、納める必要の無い所得税まで納付してしまわぬように、またこれらの仕組みを利用し、上手く節税することが出来るようにしましょう。
ご不明な点がございましたら、弊社までお気軽にご相談ください。