新型コロナウイルス蔓延防止のためにマスクや消毒液を購入したり、罹患し薬を購入したり治療を受けたり、体調管理に係る支出が多くなっている方は多いのではないでしょうか。
この体調管理に係る支出の一部は、所得税を減額する効果のある医療費控除の対象となります。
今回は、医療費控除の概要や医療費控除の対象となる医療費についてご紹介致します。
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に所得税の納税者または納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることが出来るものです。
医療費控除の適用対象となる医療費とは、下記の2点の要件を満たすものです。
①所得税の納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。
②その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること。
医療費控除の対象となる金額は、支払った医療費の全額ではなく、下記の算式によって計算された、最高200万円までの金額です。
(実際に支払った医療費の合計額△保険金等で補填される金額)△10万円
この算式における保険金等で補填される金額には、生命保険契約等で支給される入院費給付金や健康保険等で支給される高額療養費や家族療養費や出産育児一時金等が該当をします。その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます。
また、差し引かれる10万円については、所得税の納税者のその年の総所得金額等が200万円未満の人である場合、総所得金額等の5%の金額が、10万円の代わりに差し引かれます。
医療費控除の特例として、セルフメディケーション税制があります。セルフメディケーション税制の適用は、上記の医療費控除と選択適用となり、重複して受けることは出来ません。
セルフメディケーション税制とは、所得税の納税者または納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医薬品等購入費を支払った場合において、自己がその年中に健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の健康診査や予防接種などを行っているときは、その購入費の一部について所得控除を受けることが出来るものです。
医療費控除の対象となる金額は、下記の算式によって計算された、最高88,000円までの金額です。
(実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額の合計額△保険金等で補填される金額)△12,000円
医療費控除の対象となる医療費は下記に該当をするものであり、その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額です。
①医師または歯科医師による診療または治療の対価
②治療または療養に必要な医薬品の購入の対価
③病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
④あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価
⑤保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価
⑥助産師による分べんの介助の対価
⑦介護福祉士等による一定の喀痰吸引および経管栄養の対価
⑧介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
⑨松葉杖や義手、コルセット等の費用で、医師等による診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なもの
⑩骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
⑪日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
⑫高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金
上記に該当をする費用が医療費控除の対象となる医療費ですが、高額な支払いとなることが多い場合について、まずは出産に関して支払う医療費は、どのようなものが医療費控除の対象となるかご紹介を致します。
医療費控除の対象に該当するかの判断は、その費用が出産及び妊娠期間の疾病の治療に対して直接必要である費用かどうかに基づいて行います。具体的には下記の費用等が医療費控除の対象となります。
①妊娠と診断されてからの定期検診や検査代
②不妊治療、人工授精の治療代
③分娩費用、入院費用代
④優生保護法により医師が行った場合の妊娠中絶費用
⑤入院時に病院が提供をする食事代
⑥医師が用意したシーツやまくらカバー等のクリーニング代
⑦医師の指示による差額ベッド代
⑧医師の指示による医療器具の購入代
⑨入退院時の電車代、バス代
⑩自力で歩行困難な場合におけるタクシー代
下記の費用等は、医療費控除の制度上で出産及び妊娠期間の疾病に対して直接必要である費用には該当をしません。
①妊娠検査薬の購入代
②乳幼児のおむつ等の育児用品の購入代
③里帰り出産時の電車代、バス代、タクシー代
④手術時等における医師や看護師へのお礼代
⑤入院時に病院が提供をする食事以外の、売店等で購入した食事代
⑥入院時に必要なパジャマ等の衣類、洗面具等の用品代
⑦パジャマ等のクリーニング代
⑧入院時の散髪代
⑨入院時のテレビや冷蔵庫等の使用代
⑩付添人のベッド、食事代
⑪医師の指示以外の、自己都合による差額ベッド代
⑫医師の指示以外の、医療器具の購入代
⑬入退院時の自家用車のガソリン代、駐車場代、高速道路代
⑭自力で歩行可能な場合におけるタクシー代
⑮見舞に来た人のための電車代、バス代、タクシー代
⑯医師や助産師等に対する謝礼金
次に、入院に関して支払う医療費は、どのようなものが医療費控除の対象となるかご紹介を致します。
医療費控除の対象に該当するかの判断は、その費用が入院及び入院の原因となった疾病の治療に対して直接必要である費用かどうかに基づいて行います。具体的には下記の費用等が医療費控除の対象となります。
①治療代
②手術代
③入院代
④入院時に病院が提供をする食事代
⑤医師が用意したシーツやまくらカバー等のクリーニング代
⑥医師の指示による差額ベッド代
⑦医師の指示による医療器具の購入代
⑧入退院時の電車代、バス代
⑨自力で歩行困難な場合におけるタクシー代
下記の費用等は、医療費控除の制度上で入院及び入院の原因となった疾病の治療に対して直接必要である費用には該当をしません。
①手術時等における医師や看護師へのお礼代
②入院時に病院が提供をする食事以外の、売店等で購入した食事代
③入院時に必要なパジャマ等の衣類、洗面具等の用品代
④パジャマ等のクリーニング代
⑤入院時の散髪代
⑥入院時のテレビや冷蔵庫等の使用代
⑦付添人のベッド、食事代
⑧医師の指示以外の、自己都合による差額ベッド代
⑨医師の指示以外の、医療器具の購入代
⑩入退院時の自家用車のガソリン代、駐車場代、高速道路代
⑪自力で歩行可能な場合におけるタクシー代
⑫見舞に来た人のための電車代、バス代、タクシー代
⑬医師等に対する謝礼金
最後に、歯の治療に関して支払う医療費は、どのようなものが医療費控除の対象となるかご紹介を致します。
医療費控除の対象に該当するかの判断は、その費用が歯に係る費用治療が治療に対して直接必要である費用かどうかに基づいて行います。具体的には下記の費用等が医療費控除の対象となります。
①虫歯の治療費
②親知らずの抜歯代
③発育段階にある子供の歯列矯正費
④かみ合わせの改善を目的とした歯列矯正費
⑤歯の欠陥を補填する入れ歯代
⑥インプラント治療費
⑦デンタルローンで支払う治療費
⑧通院、入院時の入退院時の電車代、バス代
⑨自力で歩行困難な場合におけるタクシー代
下記の費用等は、医療費控除の制度上で歯の治療に対して直接必要である費用には該当をしません。
①審美目的のホワイトニング代
②審美目的の歯列矯正費
③虫歯予防のためのクリーニング代
④歯ブラシや歯磨き粉などのデンタルケアグッズの購入費
⑤デンタルローンで支払う治療費に係る金利や手数料
⑥通院時に自家用車を使用した場合の駐車場代やガソリン代
⑦自力で歩行可能な場合におけるタクシー代
⑧歯科医師等に対する謝礼金
上記に挙げるような医療費を年間で10万円を超えて、若しくは所得税の納税者のその年の総所得金額等が200万円未満の人である場合は総所得金額等の5%の金額を超えて支払う年度においては、医療費控除の適用を行い、納税すべき所得税額を減額することが出来ます。
この医療費控除の適用には確定申告が必要です。
給与所得者は勤務先から受ける年末調整にて所得税の精算を行うことが出来ますが、医療費控除は年末調整に含まれる所得控除には該当せず、年末調整を受けた後に改めて確定申告が必要となることに注意が必要です。
医療費控除を受けるためには、確定申告書に医療費控除の明細書を添付する必要があります。医療費を支払った際に受け取る領収書は添付をする必要がありませんが、この明細書を作成するために必要です。
また、その記入内容の確認のために税務署が提示や提出を求める場合があるため、領収書は確定申告期限の翌日から起算して5年を経過する日までの間、保存をする必要があります。
病院から発行される領収書の他、下記の費用を医療費控除として申告をする場合には、別途の書類が必要となります。
①寝たきりの人のおむつ代…医師が発行したおむつ使用証明書
②温泉利用型健康増進施設の利用料金…温泉療養証明書
③指定運動療法施設の利用料金…運動療法実施証明書
④ストマ用装具の購入費用…ストマ用装具使用証明書
⑤B型肝炎患者の介護にあたる同居親族が受ける同ワクチンの接種費用…医師の診断書
⑥白内障等の治療に必要な眼鏡の購入費用…処方箋
⑦市町村又は認定民間事業者による在宅療養の介護費用…在宅介護費用証明書
医療費控除の明細書は、医療費通知に記載された事項を記入する欄と、それ以外の内容を記入する欄に大別されます。
医療費通知とは、医療保険者等が発行する医療費の額等を通知する書類であり、被保険者等の氏名、療養を受けた年月、療養を受けた者、療養を受けた病院や診療所、薬局の名称、被保険者等が支払った医療費の額、保険者等の名称が記載されています。
この医療費通知を添付することで、医療費通知に記載された事項を記入する欄のみの使用が可能となり、通知書に記載された支払った医療費の総額等を一括で記入することが出来ます。
医療費通知を添付しない場合や、通知書の記載に無い医療費を支払った場合には、それ以外の内容を記入する欄を使用する必要があります。
この欄は、医療を受けた方の氏名、病院薬局等の支払先の名称、医療費の区分、支払った医療費の額に分かれており、それぞれ人毎、病院毎に分けて記載をする必要があります。
国税庁には医療費集計フォームというExcelが公開されているため、医療費通知を使用しない場合には、このフォームを利用すると計算間違いが少なく医療費の集計をすることが出来ます。
医療費通知を取得している場合には、医療費通知に記載された事項の欄のみを使用して申告を行う方が簡便です。
確定申告を行う場合には、所得税の発生原因となる所得及びこれに対して適用する所得控除に該当をする医療費が生じた年の翌年3月15日に申告を行う必要があります。
医療費控除の適用のためだけに確定申告を行い、本来は確定申告の義務が無く、所得税の還付を受ける人については、翌年1月1日から5年間、その還付申告を行うことが出来ます。
医療費控除の適用について、病院等に支払った金額が、医療費控除の対象となる医療費であるかの判断が、とても重要です。
よくある間違いとして、疾病の予防のためのインフルエンザや風疹のワクチン代や、審美目的の歯科や皮膚科の治療費を、医療費控除の対象ではないことにも関わらず、医療費控除の対象として申告を行ってしまうケースがあります。
このような間違った申告を行わないよう、注意をしましょう。判断に迷われた際には、是非お気軽にご相談ください。