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コラム

受取配当等の益金不算入制度って何?どういう配当が対象なの?

導入

法人が受け取る配当には、税務上の特別な取り扱いがあり、その一つが「受取配当等の益金不算入制度」です。この制度は、法人が配当を受け取る際に一定の条件を満たす場合に限り、その配当等の額の一部または全部を課税所得から除外できる仕組みであり、同じ利益に対して二重に課税されることを防ぐために設けられています。

適用対象となる配当の種類や持株割合によって、益金不算入の割合が異なるため、制度の詳細を理解することが重要です。本記事では、受取配当等の益金不算入制度の概要、具体的な計算方法、注意点について解説し、適切な税務処理を行うためのポイントを紹介します。

この記事の結論

受取配当等の益金不算入制度(法人税法23条)は、法人が内国法人から受け取る配当の一部または全部を課税所得から除外する制度です。制度の対象は株式等に係る剰余金の配当等で、保有割合、保有期間によって株式を4つの種類、すなわち完全子法人株式等、関連法人株式等、その他の株式等、非支配目的株式等に分類し、それぞれに益金不算入(最大100%、最低20%)が設定されています。

また、外国子会社配当益金不算入制度(法人税法23条の2)は、法人が外国子会社から受け取る配当の95%を益金不算入とする制度です。制度の対象は外国子会社から受け取る剰余金の配当等で、外国子会社配当益金不算入の規定の適用を受けるためには、外国法人の発行済株式または議決権付の発行済株式のうち原則として25%以上を、当該配当金の支払義務が確定する日以前6か月以上保有している必要があります。

その他、これらに付随する論点として、配当等に係る源泉徴収義務、所得税額控除、外国法人からの配当に係る外国源泉税等の取り扱いがあります。

受取配当等の益金不算入制度とは

制度の概要

受取配当等の益金不算入制度とは、法人が受け取った配当等の額の全部または一部が益金不算入となる(益金の額に算入されない)制度のことです。受取配当金は、会計では営業外収益に計上されて純利益を構成しますが、税務上は営業外収益に計上された金額の一部または全部を課税所得計算から除外します。

制度の趣旨

受取配当等の益金不算入制度が設けられている趣旨は、二重課税を排除するためです。財務省の資料では、「法人の受取配当等については、支払法人の段階で既に法人税が課税されているため、配当に対する支払段階の法人税と受取段階の法人税との税負担を受取法人の段階で調整する仕組みとして、配当を受け取る法人の段階において、その全部又は一部を益金不算入としている」と説明されています。

出典:財務省 法人税の益金・損金の計算に関する資料
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c02.htm

益金不算入額の計算

益金不算入制度の対象となる配当等の種類

受取配当等に関する法人税法の規定は次の3つで構成されています(以下、法人税法を「法」、法人税法施行令を「法令」と略します。)。

  • 法23条(受取配当等の益金不算入)
  • 法23条の2(外国子会社配当の益金不算入)
  • 法24条(配当等とみなす金額)

これらの規定から、次の配当等が益金不算入制度の対象とされています。

  • 株式等に係る剰余金の配当(一定のものを除く)
  • 利益の配当(一定のものを除く)
  • 剰余金の分配(出資に係るものに限る)
  • 投資信託等の金銭の分配(一定のものを除く)
  • 資産の流動化に関する法律115条1項に規定する金銭の分配
  • 外国子会社から受ける配当
  • 一定の組織再編等があった法人の株主が交付を受ける金銭その他の資産のうち、株式等に対応する部分の金額を超える部分の金額として一定のもの

なお、益金不算入制度の対象となる配当等であっても、次のいずれにも該当する場合は、益金不算入制度の適用を受けることはできません(法23条2項)。

  • 元本である株式等をその配当等の額に係る基準日等以前1か月以内に取得したこと
  • 当該株式等または当該株式等と銘柄を同じくする株式等を当該基準日等後2か月以内に譲渡したこと
  • 法24条1項の配当等ではないこと

つまり、みなし配当以外の配当等の場合、元本株式を基準日(一般的には配当等の権利確定日)以前1か月以内に購入し、かつ当該株式を基準日から2か月以内に売却した場合は、当該配当は益金不算入制度が適用されなくなることから、全額を益金算入する必要があります。「権利確定日の直前に株を買って、権利落ちになったらすぐ売る」という行為を法人で行う場合は注意が必要です。

持株の種類と益金不算入額

持株の種類、株式等保有割合、益金不算入額は次のとおりです。

種類株式等保有割合益金不算入割合
完全子法人株式等100%100%
関連法人株式等3分の1超100% - 4%(例外あり)
その他の株式等5%超、3分の1以下50%
非支配目的株式等5%以下20%
外国子会社株式25%以上(租税条約による上書きあり)95%

関連法人株式等に該当するためには、3分の1を超える株式等を配当等の額の計算期間の初日からその計算期間の末日まで引き続き有している必要があります。直近で買い増しをして株式等保有割合が3分の1を超えることになった場合は計算期間の要件に注意が必要です。

関連法人株式等に係る配当等の益金不算入の計算について、配当等の額から控除負債利子を引いた金額が益金不算入になるところ、この控除負債利子の金額は原則として配当等の額の4%相当額とされています(法令19条1項)。例外として、納税者の選択により、その事業年度の支払利子等の額の10%相当額とすることができます(同2項)。控除負債利子の額は少なければ少ないほど法人にとって有利である(益金不算入額が増える)ため、支払利子の額が少ない場合は例外の適用を検討するとよいでしょう。

また、外国子会社配当益金不算入の規定の適用を受けるためには、外国法人の発行済株式または議決権付の発行済株式のうち原則として25%以上を、当該配当金の支払義務が確定する日以前6か月以上保有している必要があります(法令22条の4第1項)。こちらも関連法人株式等と同じく、直近で持株割合を増やした場合は計算期間の要件を満たすか確認するようにしましょう。

配当等に付随する論点 

以上、受取配当等の益金不算入制度の概要と益金不算入額について解説しました。次に、配当等に付随する論点として、次の3点を解説します。

  • 配当等に係る源泉徴収義務
  • 所得税額控除
  • 外国法人からの配当に係る源泉所得税等の取り扱い

配当等に係る源泉徴収義務

内国法人に対して国内において配当の支払いを行う者は、原則としてその支払の際に所得税(復興特別所得税を含みます。以下同じ)を源泉徴収して翌月10日までにこれを納付する義務を負います(所得税法212条3項)。そのため、配当を受ける法人は、源泉所得税控除後の金額を受け取ります。

一方、令和5年(2023年)10月以降に支払を受ける完全子法人株式等及び関連法人株式等からの配当等については所得税が課せられなくなったため、配当を支払う法人側から見ると源泉徴収が不要になり、配当を受け取る法人側から見ると配当等の額の全額を受け取ることができます。

参考:国税庁 源泉所得税の改正のあらまし 令和4年4月
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0022004-066.pdf

所得税額控除

配当等に課された源泉所得税は、所得に対する法人税の額から控除を受けることができます(所得税額控除、法68条1項)。所得税額控除の金額は、原則として源泉徴収された所得税の全額ですが、配当等については元本の所有期間に応じた金額に限られます。

配当等に係る所得税額控除の計算方法には原則法と簡便法があり、いずれの方法を選択するかは事業年度ごとに選択することができます。原則法は元本の個別銘柄と所有期間ごとにそれぞれ計算する方法、簡便法は配当等の計算期間が1年を超えるものと1年以下のものごとにそれぞれ計算する方法で、具体的な計算方法は次のとおりです(集団投資信託の受益権は考慮しないものとします)。

<簡便法>

控除額 = 所得税の額 × 元本所有月数 ÷ 配当等の計算の基礎となった期間の月数

<原則法>

A:配当等の計算の基礎となった期間の開始時における持株数
B:配当等の計算の基礎となった期間の終了時における持株数

  1. 配当等の計算期間が1年以下のもの
    控除額 = 所得税の額 × (A + 1/2(B - A))÷ B
  2. 配当等の計算期間が1年を超えるもの
    控除額 = 所得税の額 × (A + 1/12(B - A))÷ B

たとえば、次の設例の控除額を考えてみます。

  • 甲社は乙社の株式を所有しており、それ以外に所得税が源泉徴収されるべき収入はない
  • 乙社の配当等の計算の基礎となった月数は、2024年4月1日から2025年3月31日までである
  • 甲社の持株数は、2024年4月1日時点で1,000株、2025年1月に1,000株を追加取得し、2025年3月31日時点では2,000株であった
  • 甲社は乙社から、20,420千円を源泉徴収されたあとの配当金額を受け取った

原則法による場合の控除額は次のとおり計算します。

控除額:開始時所有分(①)期中追加取得分(②)の合計額
  1. 10,420千円 × 12 ÷ 12 = 10,420千円
  2. 10,420千円 × 3 ÷ 12 = 2,605千円
  3. 13,025千円

一方、簡便法による場合の控除額は次のとおりです。

20,420千円 × (1,000 + 500)÷ 2,000 = 15,315千円

この設例だと、原則法の控除額が13,025千円、簡便法の控除額が15,315千円となったため、A社は簡便法を選択するほうが有利です。簡便法は当該事業年度において取得したすべての株式を配当の計算期間の真ん中で取得したものと考える計算方法であることから、配当の計算期間の終期に近い時期に取得した株式数が多い場合は、この設例のように簡便法を選択したほうが有利な結果になります。もっとも、銘柄ごとに原則法と簡便法を選ぶことはできないので、株式等を複数銘柄保有している場合、どちらを選択すべきかについては全体を見て判断する必要があります。

なお、当該事業年度における法人税額がゼロなどの理由から、控除をされるべき金額で法人税の額の計算上控除しきれなかったものがある場合には、その控除しきれなかった金額を確定申告書(法74条1項3号)に記載することにより、当該金額の還付を受けることができます(法78条1項)。

参考:国税庁 タックスアンサー No.5760 所得税額控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5760.htm

また、内国法人が法68条1項(所得税額の控除)または法78条1項(所得税額の還付)の規定の適用を受ける場合は、これらの規定による控除金額に相当する金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されないため(法40条)、別表4での調整が必要です。

外国法人からの配当に係る源泉所得税等の取り扱い

外国子会社益金不算入制度の適用を受ける配当以外の配当については、配当の額を益金算入する必要がある反面、当該配当等に対して課された外国源泉税は外国税額控除(法69条1項)の対象とすることができます(外国税額控除の適用を受けない場合は損金算入することもできます)。

一方、外国子会社益金不算入制度の適用を受ける配当等については、配当等の額の95%が益金不算入となる代わりに、当該配当等に対して課された外国源泉税を外国税額控除の対象にすることはできず(法令142条の2)、損金算入をすることもできません(法39条の2)。

外国子会社益金不算入制度の適用を受ける配当等は益金不算入にだけ着目されがちですが、当該配当に係る外国源泉税の損金不算入調整を漏らさないようご注意ください。

まとめ

以上、受取配当等の益金不算入制度について解説しました。

受取配当等の益金不算入制度は、法人が受け取った配当の一部または全部を課税所得から除外する制度で、二重課税を防ぐ目的で設けられています。制度の対象となる配当は株式の剰余金の配当や利益の配当などであり、株式の種類や保有割合によって益金不算入の割合が異なります。株式の種類の判定においては、株式保有期間を考慮することを忘れないようにしましょう。

また、受取配当等の益金不算入制度に付随する論点として、配当等に係る源泉徴収義務、所得税額控除、外国法人からの配当に係る源泉所得税等の取り扱いについても解説しました。

所得税額控除の金額は原則法または簡便法により計算します。簡便法の方が計算は簡単ですが、株式の取得時期等によっては原則法の方が有利となる可能性もあります。また、外国法人の株式については、外国子会社益金不算入制度の対象となるか否かによって、外国源泉税の取り扱いも変わる点に注意が必要です。具体的な計算などについては税理士にご相談ください。