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コラム

投資額の70%を損金として算入可能!M&Aの実施により活用できる減税措置

中小企業の事業承継の手段として、別の企業に経営権を譲渡するM&Aが注目を集めています。2021年度の税制改正では、中小企業のM&Aを促進して経営資源の集約化を目指す、『経営資源集約化税制』が創設されました。この税制のポイントを解説します。

優遇措置を受けるために必要な経営力向上計画の申請要件

経営資源集約化税制は『経営力向上計画』の認定を受けた中小企業が、計画に基づいてM&Aを実施した場合に、『設備投資減税』と『準備金の積立』という2つの優遇措置を活用できる税制です。

経営力向上計画とは、経営力向上のための人材育成や財務管理、設備投資などの取り組みを記載した計画書のことで、認定には事業所の所管省庁の大臣に申請を行う必要があります。申請できるのは、『特定事業者等』と『中小企業者等』の2つに該当する事業者に限られます。

【特定事業者等】

●常用する従業員数が2,000人以下の法人または個人

●協同組合等

【中小企業者等】

●資本金または出資金の額が1億円以下の法人

●資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人または個人

●協同組合等

設備投資減税は、特定事業者等と中小企業者等に該当する事業者が、2023年3月31日までの期間に認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得した場合に投資額の10%の税額控除か全額即時償却を受けられる措置です。

『生産性向上設備』はA類型、『経営資源集約化に資する設備』はD類型など、設備の詳細によってA~Dの類型に分けられており、申請には工業会や経済産業局の証明・確認を受け、証明書や確認書を交付してもらう必要があります。

準備金を積み立て損金算入できる『準備金の積立』も要チェック

また、特定事業者等と中小企業者等の2つに該当し、2024年3月31日までに『事業承継等事前調査』に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けた事業者には、株式取得によってM&Aを行う場合に受けられる措置『準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)』もあります。

事業承継等事前調査とは、M&Aによる買手側が売手側に対して行う調査のことで、『デュー・デリジェンス(DD)』と呼ばれます。

調査は、法務や財務、税務などの観点から行われ、引き継ぐ経営資源について損害が出る可能性を割り出します。このDDの記載された計画の認定を受けた事業者がM&Aを実施した際に、株式等の取得価額(投資額)の70%までを準備金として積み立てると、その金額を損金として算入することができます。さらに、積み立てた準備金は5年の措置期間を経てから、5年かけて均等額で取り崩し、同時に益金算入を行います。

つまり、措置期間を経た6年目からは納税額が増え、結果として損金算入と益金算入の差し引きゼロの状態になるというわけです。

この措置は、あくまで株式取得によってM&Aを行う場合に限られ、事業譲渡や合併などによるM&Aは対象外です。また、事業の承継のための取り組みであることが条件で、たとえば親族内での株式移転や、グループ間での事業の移転などは対象外となります。

申請の手順としては、M&Aが決まったら計画を策定し、事業承継等事前調査チェックシートを添付して提出。経営力向上計画の認定を受けた後は、計画に従ってM&Aを実施し、主務大臣に対して事業承継等を実施したこと及び事業承継等事前調査の内容について報告し、確認書の交付を受けます。制度を活用し、税務申告の際に準備金の損金算入を行いましょう。