個人事業主や法人が確定申告を行う際には、所得税や法人税の計算上いくつかの控除を受けることができます。
例えば、所得税は課税所得金額に税率を掛けて算出しますが、このとき、算出した所得税額から直接控除するものを『税額控除』、課税所得金額の計算上、総所得金額から控除するものを『所得控除』といいます。
同じ額を控除するのであれば、税率を掛ける前の課税所得金額から控除するよりも税率を掛けた後に控除したほうが、節税の効果も高くなります。
個人と法人における主な税額控除等を紹介します。
個人で利用できる所得控除は、本人が支払った、本人または生計一親族が負担すべき健康保険料等を支払った場合に控除できる『社会保険料控除』や、一定の保険契約に基づき本人が支払った生命保険料等を控除できる『生命保険料控除』など全部で15種類あります。
たとえば、個人に年500万円の所得がある場合、日本は超過累進課税なので所得税額は57万2,500円になります。
10万円の所得控除を受ける場合は、この課税所得金額の計算上500万円から10万円を差し引くことができます。
つまり、課税所得金額は490万円になるわけです。
一方、税額控除は、算出所得税額の57万2,500円から控除されます。
したがって、同じ10万円を差し引くのでも、税額控除のほうがより節税効果が高くなることになります。
個人が受けられる税額控除の主なものとして、配当控除、外国税額控除、寄附金特別控除、住宅借入金等特別控除等があります。
これは法人でも同じです。法人の場合は課税所得に応じた法人税を納付しますが、税額控除を受けると、算出した法人税額から控除分を差し引くことができます。
現在の法人税率は、2018年4月1日以降の開始事業年度の普通法人において、資本金1億円以下の場合、課税所得金額が年800万円以下の部分については15%、年800万円を超える部分については23.2%と決められています。
たとえば、課税所得金額が年500万円だったとすると、500万円×15%で、法人税額は75万円になります。しかし、10万円の税額控除を受ければ、法人税額は65万円になります。
税額控除にはさまざまな種類がありますが、法人が受けることが出来る代表的なものに、『所得税額控除』があります。
これは法人が支払いを受ける利息や配当などにおいて、所得税法の規定によって源泉徴収された所得税額は、法人税を前払いしたとみなされ、法人税額から控除することを認めるものです。
この所得税額の控除は、法人税との二重課税を避ける目的で設けられています。
同じく『外国税額控除』という二重課税を避けるための控除もあります。
日本の法人税法では、所得の生じた場所が国内でも海外でも、日本企業であれば全て法人税が課されることになっています。
しかし、外国で所得が発生した場合、その国にも税金を納める必要があります。
日本と外国の両方で税金が課されると、二重課税になってしまいます。
そこで、外国で生じた所得税額をその年の所得税額から差し引くことができる外国税額控除が設けられているわけです。
控除できる所得税額には限度額がありますが、国外に支店がある場合などは、外国税額控除を受けられる可能性があるので、確認しておきましょう。
二重課税を避ける目的以外に、政策を後押しするために設けられている税額控除もあります。
たとえば、2022年4月に施行された『賃上げ促進税制』は、一定の条件を満たした企業を対象に、要件の対象となる従業員の給与を前年度よりも一定以上増額した場合、その増額分の一部を法人税から控除できるというものです。
企業側のコスト負担を減らし、賃上げを促進するという目的のために設けられた税制で、2024年の3月31日までに開始する事業年度に適用されます。こちらは企業(会社)だけでなく、個人事業主(青色申告者)も受けることができます。
また、産業競争力の強化に関する施策としては、『DX投資促進税制』が2021年度の税制改正で創設されました。
この税制は、DX(デジタルトランスフォーメーション)などに関する事業適応計画に基づいてDX推進を実施することで、投資額について特別償却または税額控除の選択適用ができるというものです。
この税制も期限が設けられており、2023年3月31日までとなっています。
税額控除には、改正などで廃止されない限りは継続的に適用が受けられるものと、租税特別措置法に基づき、期限が決められている臨時的な制度が存在します。
特に、臨時的な制度はさまざまな控除があるため、自社に適用できる制度があるのか確認しておきましょう。