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コラム

年次決算は『一人経理』でも大丈夫?少人数の経理体制で乗り切るコツ

会社内の金の流れを数値化したうえで把握し、適正に管理するのが経理の仕事です。経理担当者の少ない会社にとって、年次決算は普段の経理業務以上に手間のかかる作業となります。今回は、少ない人数で、経理業務を円滑に進めるためのポイントを解説します。

さまざまなリスクがある『一人経理』 ミスを防ぐための体制が最も重要

 大企業では、給与担当や経費担当など、経理業務ごとに担当者が分かれています。しかし、小規模な企業では人的コストの関係から何人も経理担当者を雇用することが難しく、少人数体制になりがちです。なかには経理担当が一人だったり、社長が兼任していたりするケースも少なくありません。こうした、いわゆる『一人経理』の企業では、膨大な経理業務をすべて一人でこなすことになります。

 また、経理が総務や労務などの業務を兼任することも多く、担当者には高い事務処理能力や幅広い知識などが求められます。このような企業は、未経験者を一から育成できる人員に余裕のある企業とは異なり、経理業務の経験者であり、さらに簿記や給与計算実務能力検定などの資格を有している人材を優先的に採用することになるでしょう。

 では、一人経理のリスクとはどのようなものがあるでしょうか。一人経理のメリットとしては、ある程度自分の裁量でスケジュールを組んで仕事を進められるといった点があります。一方でそれ以上にさまざまなリスクがあります。経理担当が複数人いれば部署内でダブルチェックが行えるため、数字などのミスを見つけやすくなります。しかし、一人経理の場合はミスを見逃してしまう可能性が高くなります。特に伝票記入などの入力作業でミスが起きやすいので、ミスの発生しやすいポイントを押さえておき、チェックリストを作成したり、経理以外の人間にチェックしてもらったりするなど、ミスを防ぐための体制を構築しておくことが大切です。また、経理に関する不明点を相談できないのも大きな問題点です。国税庁や税務署、日本税務研究センターでは、無料の相談窓口を設けているので、困ったときには相談してもよいでしょう。

税理士や代行業者などを頼って 効率よく業務を進める工夫を

 経理の業務内容は、会社の規模によって異なりますが、主に日常的に行う業務、月ごとに行う業務、年ごとに行う業務に大別できます。経費を記録するための領収書や在庫、掛取引の管理、現金の出納状況の確認などを日常的に行いながら、毎月、請求書・領収書や売掛金、給与や役員報酬の管理を行います。年に1回行わなければならないのが、決算や年末調整といった処理です。年単位の業務は、作業量も膨大になるため、数カ月前から準備を始める必要があるでしょう。近年は会計ソフトなどが普及したことから、ある程度は作業が自動化され、経理担当の負担も昔より少なくなりました。それでも、一人ですべての経理業務をこなすのには限界があり、確定申告などは、税理士に依頼しているという会社も少なくありません。

 税理士に依頼していたとしても、税理士に渡すための決算データは依頼する側が用意する必要があります。多くの企業は決算日を3月、9月、12月に設定しています。法人税の申告期限は事業年度終了の翌日から2カ月以内のため、たとえば3月31日が決算日の場合、申告や納税の期限は5月31日となります。

 決算日を迎えたら、まず、預金と借入金残高の確定と棚卸しを行います。棚卸しは企業の資産を把握するもので、原材料や商品に限らず、文房具などの消耗品や梱包用の資材、切手や販促品なども含みます。多くの在庫を抱える会社であれば、代行業者に依頼するのも方法の一つです。ほかにも税理士や記帳代行業者など、外部の協力を仰ぎながら、決算をはじめとした経理業務を効率よく進めていきましょう。