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コラム

法人税増税も中小企業は負担軽減を検討 現在使える主な優遇措置をおさらい!

すべての企業は毎年の事業年度末に、決算書を作成する必要があります。
決算書は確定申告の際に必要になるのはもちろん、企業の経営実態の把握にも役立ちます。
しかし、前年度以前と今年度の財務状況を比較するためには、毎年、一定のルールに基づいて決算書が作成されていなければいけません。
そのための会計ルールとして、『中小会計要領』と『中小会計指針』があり、多くの中小企業はこのどちらかを参考にして会計処理を行っています。
2つの会計ルールの違いや、特徴について確認していきましょう。

欠損金の繰越控除を活用して10年間に発生した黒字と相殺

防衛費の財源確保のため、国会では法人税の増税が検討されています。ただし、中小企業に対しては負担を軽減する措置も検討されており、今後の行方を注視しておく必要があります。中小企業は、大企業に比べて人材が集まりづらく、資材の調達コストも高くなることから、これまでにも中小企業に対するさまざまな優遇措置が導入されてきました。

その一つが、欠損金の繰越控除です。欠損金とは益金を損金が上回った際の金額のことで、欠損金があるということは課税所得がマイナス(赤字)の状態を意味します。欠損金の繰越控除は、欠損金が出た事業年度に青色申告書で確定申告をしていれば、翌年度以降の10年間にわたって欠損金を繰り越すことができ、その繰り越した欠損金を特定の事業年度の課税所得(黒字)から差し引くことができるというものです。

たとえば、繰り越した欠損金が300万円あり、ある事業年度の益金が100万円あった場合、欠損金300万円のうちの100万円を欠損金として損金の額に算入することができます。つまり、この事業年度は所得があったにも関わらず、繰り越した欠損金で所得を相殺したため、課税所得を0円にすることができるのです。課税所得が0円なので、法人税は発生せず、地方税均等割のみの納税となります。

資本金が1億円を超える大企業には繰り越せる額に上限が設けられていますが、中小企業に上限はなく、全額欠損金を繰り越すことができます。また、欠損金の繰越控除を受けるには青色申告をしている必要がありますが、当期が白色申告であっても青色申告した欠損金については繰越控除認められています。ただし、確定申告書を提出していなかったり、帳簿書類等を保存していなかったりすると、繰越控除は受けられないので注意が必要です。

繰越控除と繰戻還付どっちが得? 自社の状況を見極めて判断しよう

欠損金の繰越控除と同じく中小企業の減税対策に大きな助けとなるのが、欠損金の繰戻還付です。欠損金の繰戻還付とは、その事業年度に発生した欠損金を前年度に繰り戻し、前年度に納めた法人税のなかから欠損金に相当する額を還付してもらうものです。還付を受けるには、欠損金が発生した事業年度と、還付を受ける事業年度で連続して青色申告を行っており、確定申告の際に還付請求書を提出する必要があります。

また、欠損金の繰越控除と欠損金の繰戻還付は同時に利用することができず、どちらか一方を選ばなければなりません。どちらが有利かは企業の状況によりますが、たとえば、すぐに資金を確保したい場合や、将来的に黒字化が見込めず所得と相殺できそうにない場合などは、繰戻還付を選んだほうが得だといえます。

中小企業の法人税率は、所得金額が年800万円以下で、適用除外事業者以外であれば15%と定められています。ただし、年800万円を超えると、超えた部分に関しては法人税率が23.2%で計算されます。将来的に法人税率が高くなることが予想されるなら、欠損金を繰り越して、課税所得から差し引き、法人税を抑えたほうが得だといえます。ただし、繰戻還付の適用を受けると、原則として税務署による税務調査が行われます。少ない欠損金のまま繰戻還付を行って税務調査を受けるよりも、欠損金の繰越控除を選択して将来に備える企業も少なくありません。

ほかにも、一定の要件を満たした企業が従業員の給与を増額した場合、その増額分の一部を法人税額から控除できる所得拡大促進税制や、研究開発にかかった試験研究費の額に一定割合を乗じた金額を法人税額から控除できる研究開発税制などがあります。専門家に相談するなどして、自社が活用できる優遇措置を把握しておきましょう。