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コラム

ソフトウェアの資産計上と償却について詳しく解説します

導入

IT化・デジタル化が進む現代において、ソフトウェアは業種を問わず欠かせない無形資産となっています。しかし、このソフトウェアへの投資やシステム開発、バージョンアップにかかる費用の税務・会計処理は、その利用目的や取得形態によって判断が分かれ、非常に複雑です。

「ソフトウェアの取得費用を資産計上すべきか、それとも費用として一括処理できるのか?」「減価償却の耐用年数は何年が正しいのか?」「研究開発費と資本的支出・修繕費の区分はどうすれば良いのか?」といった疑問をお持ちの経営者や経理担当者の方も多いのではないでしょうか。さらに、税務上の取り扱いと会計上の取り扱いが異なる税会不一致の論点の存在も、処理を難しくする要因となっています。

本記事では、ソフトウェアに関する税務上および会計基準上の定義から、資産計上の要否、取得価額の構成、減価償却の方法や耐用年数、そして研究開発費や資本的支出・修繕費の区分といった重要な論点について、基礎からわかりやすく解説します。

この記事の結論

ソフトウェアの税務・会計処理における主要な論点は、その費用を資産計上するか費用処理するかの判断です。特に自社利用ソフトウェアについては、将来の収益獲得または費用削減の確実性に基づき処理が分かれます。

将来の収益獲得または費用削減が確実な場合は税務・会計ともに資産計上(税会一致)ですが、確実であるか不明な場合は、会計上は費用処理するものの、税務上は資産計上する必要があるため税会不一致が生じ、税務調整が必要となります

また、ソフトウェアの法定耐用年数は原則5年(複写販売用などは3年)の定額法のみが採用されており、機能向上を目的としたバージョンアップ費用などは、修繕費ではなく資本的支出として取り扱う必要があることに注意が必要です。

ソフトウェアとは:定義と資産計上の要否

税法上および会計基準上の定義

法人税法において、ソフトウェアは固定資産および減価償却資産の一つとされています(法人税法2条22号及び23号、法人税法施行令12条2号及び13条8号リ)。法人税法においてはソフトウェアに関する定義はありませんが、租税特別措置法においては、「電子計算機に対する指令であって一の結果を得ることができるように組み合わされたもの」と定義されています(租税特別措置法施行令5条の5第2項)。

また、ASBJ(企業会計基準委員会)が発出している会計基準(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針)においては、ソフトウェアは次のとおり定義されています(6項。以下、この記事では単に「実務指針」といいます。)。

本報告におけるソフトウェアとは、コンピュータ・ソフトウェアをいい、その範囲は次のとおりとする。
① コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム
② システム仕様書、フローチャート等の関連文書

出典:企業会計基準委員会移管指針第8号 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針
https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=136

以上から、ソフトウェアの定義は、税法と会計基準との間に大きな差はないといえます。なお、税法上の用語は「ソフトウエア」ですが、この記事では一般的かつ会計基準で使用されている「ソフトウェア」を使用します。

資産計上されるソフトウェアと費用処理できるソフトウェア

ソフトウェアは減価償却資産に該当するため、原則としては資産計上した上で各事業年度における減価償却費を損金の額に算入しますが、使用可能期間が1年未満または取得価額が10万円未満のソフトウェアの取得価額相当額を事業供用年度において損金経理した場合は、資産計上せず費用処理することができます(法人税法施行令133条)。

ソフトウェアの取得価額の構成要素

ソフトウェアの取得価額は次の費用で構成されます(法人税法施行令54条1項1号、2号)。

購入したソフトウェア:次の合計額
  • ソフトウェアの購入費用
  • ソフトウェアの購入手数料や、ソフトウェアの取得に直接要した費用の額
  • ソフトウェアを事業供用するために直接要した費用の額

自社で製作したソフトウェア:次の合計額
  • ソフトウェアを製作するために要した労務費及び経費の額
  • ソフトウェアを事業供用するために直接要した費用の額

一方、次のいずれかに該当する費用はソフトウェアの取得価額に算入せず、費用処理することができます(法人税基本通達7-3-15の3)。

  • 自社で製作するソフトウェアの製作計画の変更等により、仕損じ(完成に至らなかった状態)があったため不要となったことが明らかなものに係る費用の額
  • 研究開発費の額(自社利用のソフトウェアに係る研究開発費の額については、その自社利用のソフトウェアの利用により将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らかな場合に限る)
  • 製作等のために要した間接費、付随費用等で、その費用の額の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの

1点目は、固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示の通達(法人税基本通達7-3-3の2)における「建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額」と類似の規定であり、ソフトウェアが完成しないことが明らかになった場合はそれまでの費用について費用処理(損金算入)を認めるという趣旨の規定です。

2点目は後のセクションで解説します。

また、3点目は、本来であればソフトウェアの製作等のために要した間接費や付随費用等はすべてソフトウェアの取得価額に含めるべきところ、少額のものについては重要性の原則の観点等から取得価額算入する必要がないことを規定したものです。

参考:国税庁タックスアンサー No.5461 ソフトウェアの取得価額と耐用年数
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5461.htm

ソフトウェアの減価償却

償却方法

ソフトウェアの償却方法は定額法のみが採用されています(法人税法施行令48条1項4号、法人税法施行令48条の2第1項4号)。器具及び備品や機械及び装置など、複数の償却方法を選択できる種類の資産もありますが、ソフトウェアは残存簿価0の定額法のみが採用されています。

なお、ソフトウェアが残存簿価0円まで償却する根拠は、平成19年3月31日以前に取得をしたソフトウェアの場合は減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下、「耐令」といいます。)6条及び別表11、平成19年4月1日以降に取得をしたソフトウェアの場合は法人税法施行令61条1項2号ロです。

法定耐用年数

ソフトウェアの法定耐用年数は次のとおりです(耐令別表3、別表6)。

  • 複写して販売するための原本:3年
  • 開発研究用のもの:3年
  • その他のもの:5年

日本基準における償却年数

日本の会計基準における償却年数の考え方について、実務指針においては次のとおり規定されています。

市場販売目的のソフトウェア:原則として3年以内の販売可能な有効期間で、3年を超える年数とするときには合理的な根拠に基づくことが必要(実務指針18項)
自社利用のソフトウェア:原則として5年以内の利用可能期間で、5年を超える年数とするときには合理的な根拠に基づくことが必要(実務指針21項)

開発研究用のソフトウェアがない法人の場合、販売するためのソフトウェアの償却年数を3年、自社利用のソフトウェアの償却年数を5年とすれば、会計と税務の償却年数は一致しますが、会計上の判断で法定耐用年数よりも短い期間で償却する場合は法人税法における調整(申告調整)が必要となります。

ソフトウェアに関するその他の論点

自社利用のソフトウェアに係る研究開発費の額の取り扱い

自社利用ソフトウェアについて、会計上の取り扱いは次のとおりです(実務指針11項)。

自社利用のソフトウェアの資産計上の検討に際しては、そのソフトウェアの利用により将来の収益獲得または費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する必要がある。その結果、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合または確実であるかどうか不明な場合には、費用処理する

一方、法人税法上の取り扱いは次のとおりです(法人税基本通達7-3-15の3(2))

研究開発費の額(自社利用のソフトウェアに係る研究開発費の額については、その自社利用のソフトウェアの利用により将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らかな場合における当該研究開発費の額に限る。)は、ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる。

以上から、会計と税務の取り扱いをまとめると次のとおりとなります。

場合取り扱い
将来の収益獲得または費用削減が確実税務も会計も資産計上する(税会一致)
将来の収益獲得または費用削減が確実とも、収益獲得または費用削減できないこと明らかともいえない税務は資産計上、会計は費用処理する(税会不一致)
将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らか税務も会計も費用処理する(税会一致)

「将来の収益獲得または費用削減が確実とも、収益獲得または費用削減できないこと明らかともいえない」場合については、会計上は研究開発費として費用処理した上で、税務調整によりこれを税務上のみ資産計上して、償却に応じて認容をかけていくことになります。

なお、各事業年度において損金算入できる減価償却費は「償却費として損金経理した金額」に限られるところ(法人税法31条1項)、研究開発費として費用計上した場合に損金算入できるのかという疑問が生じます。この点、法人税基本通達7-5-1(7)において「法人税法施行令54条1項の規定によりソフトウェアの取得価額に算入すべき金額を研究開発費として損金経理をした場合のその損金経理をした金額」は損金経理をした金額に含まれるものとするという規定があることから、問題なく損金算入することが可能です。

ソフトウェアに係る資本的支出と修繕費

法人がその有するソフトウェアについてプログラムの修正や改良を行った際にかかる費用が、税務上、資本的支出となるか修繕費となるかは、費用の性質によって慎重に判断する必要があります。

法人税基本通達7-8-6の2によると、修繕費に該当するケースと資本的支出に該当するケースはそれぞれ次のとおりです。

修繕費に該当するケース
  • プログラムの機能上の障害の除去
  • 現状の効用の維持
資本的支出に該当するケース
  • 新たな機能の追加
  • 機能の向上
  • 既に有しているソフトウェアまたは購入したパッケージソフトウェア等の仕様を大幅に変更するための費用のうち、ソフトウェアの取得価額に算入されないもの

簡単に言えば、故障を直したり、現状の使い勝手を維持するための支出は修繕費(費用として一括損金算入可能)となり、新しい機能を追加したり、性能をアップグレードするための支出は資本的支出(資産として計上し、減価償却の対象)となります。

特に、バージョンアップや仕様変更など、機能が新しくなったり向上したりする場合には、安易に修繕費として処理せず、資本的支出として取り扱う必要があることに留意が必要です。

まとめ

以上、ソフトウェアについて、税務上・会計上の定義から、資産計上の要否、取得価額の構成、減価償却の論点、そして研究開発費や資本的支出・修繕費の区分まで、重要なポイントを幅広く解説しました。

ソフトウェアの税務・会計処理は、その取得形態や利用方法により個別の判断が必要です。場合によっては、税務上の取り扱いと会計上の取り扱いが一致しない(税会不一致が生じる)こともあるため、適切に判断しないと将来的なリスクにつながる可能性もあります。

ソフトウェアの取得や償却について、適切な会計処理と税務調整を行うためには、税法や会計基準に基づいた専門的な判断が必要です。ソフトウェア投資が多い企業や、新たにソフトウェアの取得を行う企業の経理担当の方は、お近くの税理士にご相談なさることをおすすめします。