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事業承継税制の適用期限は?特例措置の適用を受ける場合は要注意!

事業承継税制の適用期限は?特例措置の適用を受ける場合は要注意!

写真:電卓と書類

この記事では、「今後事業承継税制の適用を受けようと思うけれどまだ何の準備もしていない。いつまでに対応しないと適用を受けられなくなるか教えてほしい」という方や、「事業承継税制の適用を受けるために必要なステップごとの期限を知りたい」という方向けに、事業承継税制の適用期限について詳しく解説します。

この記事の結論

写真:パソコン

事業承継税制の適用を受けることによって贈与税や相続税の納税猶予を受けるまでの間には、4つの期限が設定されています。

1つ目は特例承継計画(個人事業承継計画)の提出期限、2つ目は贈与や相続を行う期限、3つ目は都道府県への認定申請を行う期限、そして4つ目は贈与税や相続税の申告書を税務署へ提出する期限です。これらの期限に間に合わないと事業承継税制の適用を受けられなくなることもあるため、適用期限はきっちりと守る必要があります。それぞれの期限は次のとおりです。

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項目
具体的な期限
1
特例承継計画(個人事業承継計画)の提出期限
法人版:2024年3月31日まで
個人版:2024年3月31日まで
2贈与や相続を行う期限
法人版:2027年12月31日まで
個人版:2028年12月31日まで
3認定申請書を都道府県へ提出する期限
贈与:贈与を受けた年の翌年1⽉15⽇まで
相続:被相続人死亡の日の翌日から8ヶ月以内
4贈与税や相続税の申告書を税務署へ提出する期限
贈与:贈与を受けた年の翌年3⽉15⽇まで
相続:被相続人死亡の日の翌日から10ヶ月以内

なお、事業承継税制には、非上場株式の贈与と相続に関する「法人版事業承継税制」と、個人事業用資産の贈与と相続に関する「個人版事業承継税制」の2つがあります。更に、法人版事業承継税制には恒久的な措置である「一般措置」と時限的な措置である「特例措置」の2つの措置が用意されています。

この記事では、法人版事業承継税制のうち特例措置と個人版事業承継税制を対象に解説します(以下、法人版事業承継税制のうち特例措置を単に「法人版事業承継税制」といいます)。

事業承継税制の4つの期限

事業承継税制の4つの期限

事業承継税制の適用を受けるための手続きは、特例承継計画や個人事業承継計画の作成に始まり、贈与税や相続税の申告書を税務署へ提出することで完了します(納税猶予を受けたあとも継続届出書の提出などの手続きが必要ですが、この記事では取り扱いません)。

手続きの具体的なステップは次のとおりです。

ステップ法人版事業承継税制個人版事業承継税制
ステップ1会社が作成して認定経営革新等支援機関が所見を記載した特例承継計画を、会社が都道府県庁へ提出する個人事業の後継者が作成して認定経営革新等支援機関が所見を記載した個人事業承継計画を、後継者が都道府県庁へ提出する
ステップ2先代経営者等から事業承継対象会社の非上場株式の贈与を受ける、または事業承継対象会社の非上場株式を先代経営者等の相続により取得する先代事業者から特定事業用資産の贈与を受ける、または特定事業用資産を先代事業者の相続により取得する
ステップ3都道府県庁へ法令に基づいた認定申請書を提出する同左
ステップ4税務署へ贈与税または相続税の申告書を提出する同左

以下、それぞれのステップにおける期限について解説します。

1つ目の期限

1つ目の期限は、特例承継計画と個人事業承継計画の提出期限です。このうち「特例承継計画」は法人版事業承継税制の適用を受けるために必要な計画で、「個人事業承継計画」は個人版事業承継税制の適用を受けるために必要な計画です。


現行法の下では、特例承継計画は2023年(令和5年)3月31日まで、個人事業承継計画は2024年(令和6年)3月31日までに、法人または先代事業者の主たる事務所の所在地がある都道府県庁へ提出する必要があります。これらの期限までに特例承継計画または個人事業承継計画の提出を行わなかった場合は、法人版事業承継税制と個人版事業承継税制の適用を受けることができなくなりますのでご注意ください。なお、令和4年度税制改正大綱によって、特例承継計画の提出期限を1年延長することが示されました。税制改正大綱を受けて所要の法改正がなされたあとの提出期限は2024年(令和6年)3月31日までです。


特例承継計画と個人事業承継計画には、会社や個人事業の後継者が記入する欄だけでなく、認定を受けた税理士や会計士といった認定経営革新等支援機関(以下、「支援機関」といいます)が行った指導や助言の内容を記入する欄もあります。期限ギリギリになって計画の作成作業を始めると、会社や後継者が自分たちの記入欄を埋められたとしても、支援機関による所見の記入が間に合わない可能性もあるので、計画は早め早めに作成することをおすすめします。

2つ目の期限

2つ目の期限は、贈与や相続を受ける期限です。


法人版事業承継税制は2027年(令和9年)12月31日まで、個人版事業承継税制は2028年(令和10年)12月31日までに、それぞれ贈与または相続を受ける必要があります。特例承継計画や個人事業承継計画を提出して都道府県庁の確認を受けていたとしても、これらの期限までに贈与や相続を受けなかった場合は、法人版事業承継税制と個人版事業承継税制の適用を受けることができなくなりますのでご注意ください。


なお、令和4年度税制改正大綱において、法人版事業承継税制のうち特例措置の適用期限を延長しないことが示されました。今後は、適用期限の延長がされないことを念頭に、贈与や相続を受けるまでのスケジュールを立てる必要がある点にご留意ください。


贈与の日を選択することはできても相続の日を選択することはできないので、相続によって法人版事業承継税制または個人版事業承継税制の適用を受けようとしている場合であっても、先代経営者や先代事業者の年齢や健康状態によっては、最初から相続ではなく贈与で事業承継税制の適用を受けるのも選択肢の1つです。その際は贈与契約の締結が必要となるので、先代経営者や先代事業者が認知症や意思疎通ができない状態となる前に贈与契約を締結することをおすすめします。


事業承継税制の適用を受けようとする方の中には、相続で受けるつもりで準備を進め、相続が発生しないまま適用期限が近づいてきたら贈与に切り替えようという方もいると思われます。そうした場合は、先代経営者や先代事業者が認知症などになり贈与契約を締結できず、かといって適用期限末時点で存命であるため相続もできない、という状態で適用期限を徒過してしまう恐れがある点にはくれぐれもご注意ください。


なお、期限を確認する際は、法人版事業承継税制と個人版事業承継税制とでは適用期限が異なる(個人版の方が1年遅い)点にも注意が必要です。

3つ目の期限

3つ目の期限は、都道府県庁に対する認定申請の期限です。事業承継税制による納税猶予を受けるためには、一定の期限までに中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、「経営承継円滑化法」といいます)に基づく認定申請書類を都道府県庁へ提出し、都道府県知事による認定を受ける必要があります。


認定申請書類を都道府県庁へ提出すべき期限は次のとおりです。

贈与の場合贈与を受けた年の10月15日からその年の翌年1月15日まで
相続の場合相続の開始の日の翌日から8ヶ月以内(認定申請書を提出できるのは、相続の開始の日の翌日から5ヶ月を経過する日以降)

4つ目の期限

4つ目の期限は、贈与税または相続税の申告書を提出する期限です。事業承継税制による納税猶予を受けるためには都道府県庁の認定を受けるだけでは足りず、贈与税または相続税の申告書と添付書類を提出してようやく納税猶予を受けることができます。


申告書及び添付書類を税務署へ提出すべき期限は次のとおりです。

贈与の場合贈与を受けた年の翌年3月15日まで
相続の場合相続の開始の日の翌日から10ヶ月以内

なお、贈与税または相続税の申告書には、都道府県から交付された経営承継円滑化法による認定書のコピーを添付する必要があります。都道府県による認定審査には通常2ヶ月程度必要であるところ、認定申請書類を都道府県庁に提出すべき期限と申告書の提出期限の間隔も同じ2ヶ月なので、認定申請書類を期限ギリギリに提出すると、贈与税または相続税の申告書の提出期限に間に合わなくなる可能性が生じます。


こうしたトラブルを避けるために、認定申請書類の提出は期限よりも早めに行うことをおすすめします。

まとめ

以上、事業承継税制の適用期限について解説しました。


事業承継税制の適用を受ける可能性が少しでもあれば、まずは2024年3月31日までに特例承継計画もしくは個人事業承継計画を提出するための準備を早め早めに開始することをおすすめします。


特例承継計画や個人事業承継計画をどう作成したらよいか分からない方は、顧問税理士などにご相談されるとよいでしょう。