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株式交換と株式移転の違いとは?メリット・デメリットと最適な選び方を解説

導入

企業が成長を続け、次世代へバトンを繋いでいく過程では、組織の形を時代や事業環境に合わせて作り変え、最適化することを目的とした組織再編を行う場面があります。組織再編にはいくつかの手法があり、株式交換、株式移転と呼ばれる手法もその一つです。

株式交換と株式移転は、どちらも「100%の親子関係を作る」という目的は共通していますが、既存の会社を親会社にするのか、あるいは新しく親会社を作るのかといった点に大きな違いがあります。選択を誤ると、想定外の設立コストが発生したり、税務上のメリットを享受できなかったりするリスクも否定できません。

本記事では、株式交換と株式移転の仕組みや違い、それぞれのメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。自社にとって最適な手法はどちらなのか、判断のヒントとしてぜひお役立てください。

この記事の結論

株式交換と株式移転は、「完全親子関係」を築く手法ですが、その出口戦略には違いがあります。一般的には、既存の会社を親会社とし、リソースを即座に活用してスピーディーに再編を進めるなら株式交換、新たに持株会社を設立して管理体制をフラット化し、将来的な相続税対策や自社株の評価抑制を狙うなら株式移転が適しています。

特に実務上留意すべきは税制適格要件の判定です。税制適格要件は組織再編前の資本関係によって異なり、資本関係が薄いほど満たすべき適格要件は増加します。税制非適格となれば子会社側で資産の時価評価損益の計上が必要となるケースもあり、評価益が生じる場合は予期せぬ税負担が生じかねません。組織再編の目的を明確にしたうえで、設立コストや税務リスクを精査し、法律・税務の専門家のアドバイスを受けながら最適なスキームを選択することが重要です。

株式交換と株式移転の違い

株式交換とは?

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させる手続きをいいます(会社法2条31号)。この際、自社の株式をすべて取得させる会社を(株式交換)完全子会社、その株式を取得して親会社となる会社を(株式交換)完全親会社と呼びます。

株式交換の大きな特徴は、親会社として既存の会社を活用できる点にあります。完全子会社となる会社の株主に対しては対価として完全親会社の株式などが交付されることにより、従来完全子会社の株主だった者は、完全親会社の株主となります。

税務上は、一定の要件を満たすことで適格株式交換として取り扱われます(法人税法2条12号の17)。非適格株式交換の場合、完全子会社は自社が有する時価評価資産について評価を行い、評価損益の額を益金の額または損金の額に算入する必要がありますが(法人税法62条の9第1項)、適格株式交換の場合はこれを行う必要はありません。

株式移転とは?

株式移転とは、一または二以上の株式会社がその発行済株式の全部を、新たに設立する株式会社に取得させる手続きをいいます(会社法2条32号)。株式交換が既存の会社を親会社とするのに対し、株式移転は新しく親会社を作る点が違いです。

株式移転は、複数の企業が経営統合を行って持株会社(ホールディングカンパニー)を設立する際によく用いられる手法です。株式移転によって新設された会社は(株式移転)完全親会社となり、もともとの会社は(株式移転)完全子会社としてその支配下に入ることになります。

税務上は、一定の適格要件を満たすことで適格株式移転として取り扱われます(法人税法2条12号の18)。非適格株式移転となった場合の影響(評価損益の益金または損金算入)は株式交換と同じです。

共通点と相違点

株式交換と株式移転は、いずれも100%の親子関係を構築するための組織再編手法であるという点で共通しています。どちらの手法を用いても、最終的には完全親会社が完全子会社の全株式を保有する形態となり、グループの経営権を集約することが可能です。また、税務上の税制適格要件を満たすことで、資産の移転に係る譲渡損益を税務上認識することなく、再編を行える点も共通のメリットといえます。

他方、株式交換と株式移転の相違点は「親会社が既存の会社か、新設される会社か」という点にあります。株式交換は既に存在する法人を親会社とするスキームであり、特定の会社が既存の別会社を傘下に収める場合や、M&Aにおいて買い手企業が対象企業を完全子会社化する際によく利用されます。一方、株式移転は親会社となる法人を新たに設立するスキームであり、複数の会社が持株会社体制へ移行する場合など、ゼロから親会社を作る必要がある際に選択されます。

このように、株式交換は「既存の組織への組み込み」、株式移転は「新しい統括組織の創設」という、出口の形態において違いがあります。

株式交換と株式移転のメリット・デメリット

株式交換のメリット・デメリット

株式交換の最大のメリットは、既存法人のリソースをそのまま活用できる点にあります。親会社となる法人がすでに事業実態を有している場合、新しく箱(法人)を作る手間やコストをかけずに、速やかに子会社をグループ内に組み込むことが可能です。また、完全子会社となる株主に対して親会社の株式を対価として交付することで、多額の現金を用意することなく買収を行えるため、M&Aの手法として非常に親和性が高いといえます。

一方で、株式交換には親会社側の株主構成が変動するというデメリットも存在します。新株を発行して子会社の株主に割り当てる場合、既存の親会社株主の持分比率が低下(希薄化)するため、支配権への影響を考慮する必要があります。会社の意思決定権が不安定になったり、他者に握られたりすることを防ぐためにも、事前に弁護士などの法務専門家と協議することをおすすめします。

株式移転のメリット・デメリット

株式移転の最大のメリットは、グループ全体の管理体制をフラット化できる点にあります。親会社となる持株会社を新設し、その傘下に複数の事業を運営する子会社をぶら下げる形をとることで、各事業部門の責任と権限が明確になります。これにより、グループ全体の意思決定の迅速化や、経営資源の最適な配分が可能となります。また、事業承継対策としても非常に有効です。後継者が持株会社の株式を承継することで、個別の事業会社の株式を一つひとつ引き継ぐ手間が省けるほか、自社株の評価額を抑制する効果が期待できるケースもあります。

一方、株式移転のメリットは、新会社の設立・維持コストが必要となる点です。株式移転では新たに親会社を設立するため、設立時の登録免許税が必要となります。さらに、設立後も親会社としての法人住民税(均等割)や決算申告費用、上場企業であれば維持にかかる諸費用など、運営コストが継続的に発生します。こうしたコストを、持株会社を設立することによる効果でペイできるのかについて、事前にシミュレーションしておくとよいでしょう。

税制適格要件

株式交換や株式移転を行う際、税制適格要件を満たすか否かは重要なファクターです。税制適格要件は、再編前の資本関係に応じて大きく3つの区分に分けられます。

再編前の資本関係税制適格要件
完全支配関係(100%)がある場合金銭等不交付要件(対価が親会社株式等のみであること)
支配関係(50%超)がある場合金銭等不交付要件に加え、従業者引継要件や事業継続要件を満たす必要があります
共同事業を行う場合支配関係がある場合の要件に加え、さらに事業関連性要件や、事業規模要件(または特定役員引継要件)といった要件を満たす必要があります

税制適格要件を満たすか否かの判定は個別具体的に行う必要があることから、実際の判定作業は税理士に依頼することを推奨します。

株式交換と株式移転、どちらの手法を選ぶべきか?

ここまでお読みいただいた方の中には、「株式交換と株式移転のメリット・デメリットは把握したが、具体的にどういった場面で株式交換や株式移転を選択すべきなのかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。以下、株式交換と株式移転を選択すべきケースをそれぞれご紹介します。

ケース1:事業承継を目的とする場合

事業承継を目的とする再編では、一般的に株式移転による持株会社の設立が選ばれるケースが多く見られます。その最大の理由は、既存の事業会社の上に親会社を新設することで、スムーズな経営権の委譲と自社株対策を両立できる点にあります。

株式移転によって持株会社体制へ移行すると、後継者は持株会社の株式のみを管理・承継すればよいため、複数の事業子会社を抱えている場合でも承継手続きをシンプルに一本化できます。さらに、相続税対策としての側面も重要です。持株会社が子会社株式を保有する構造を作ることで、将来的に子会社の企業価値が上昇しても、持株会社の株価上昇を一定程度抑制できる効果が期待できる場合があります。加えて、特定の親族に事業を継がせる際、他の親族への遺産配分として持株会社の株式を活用するなど、柔軟な資産設計が可能になる点も、事業承継において株式移転が選ばれる大きな理由といえるでしょう。

ケース2:既存グループの再編・集約をする場合

既存の企業グループ内において、特定の事業子会社を整理・統合したり、支配力を強化したりする場合には、株式交換が選択されるケースが一般的です。これは、すでにグループの中核を担う親会社が存在している場合、新しく法人を設立する手間をかけずに、既存の親会社を活用して迅速に組織を組み替えることができるためです。

既存の企業グループ内の再編で株式交換が選ばれる大きな理由は、既存の経営インフラをそのまま利用できる効率性にあります。親会社がすでに上場していたり、確固たる管理体制を有していたりする場合、その親会社を完全親会社として対象会社をぶら下げることで、グループ全体のガバナンスを即座に効かせることが可能になります。

まとめ

株式交換と株式移転は、グループ経営の効率化やスムーズな事業承継を実現するための手法である点は共通していますが、いくつか違いも存在します。一般的には、既存の組織力を活かしてスピーディーに再編を進めたい場合は株式交換が、持株会社体制への移行により経営権の集約や自社株対策を図りたい場合は株式移転が適しているといえるでしょう。

ただし、いずれの手法においても税制適格要件を満たすかどうかが、実務面では重要なポイントとなります。要件の判定には高度な専門知識が必要であり、スキームの組み方一つで税負担が大きく変わることも珍しくありません。

「持株会社化を検討しているが、何から手をつければいいか分からない」「自社の場合、どちらの手法が有利か知りたい」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、お近くの税理士へご相談ください。